受講者の自発的な行動を促す環境設計:ナッジ理論の仕組みと導入手順

こんにちは。ゆうせいです。

研修や業務の場面において、参加者に望ましい行動をとってもらうため、規則で強制するのではなく、自然と行動を促す仕組みが求められることがあります。今回は、行動経済学の概念であるナッジ理論について解説します。

ナッジ理論とは何か

ナッジとは、英語でひじで軽くつつくという意味を持つ専門用語です。ナッジ理論は、人々の選択の自由を奪うことなく、意思決定の環境を整えることで、特定の行動を選択するように導く手法を指します。行動を制限したり、金銭的な報酬を与えたりするのではなく、環境の設計(選択アーキテクチャ)を工夫することが特徴です。

高校生の学食を例に説明します。生徒に健康的な食事をとってもらうため、揚げ物の販売を禁止する手法は、選択の自由を奪うためナッジ理論には該当しません。ナッジ理論を用いる場合、食堂の陳列棚において、サラダや野菜のおかずを目の高さにある最も取りやすい位置に配置し、揚げ物を奥の取りにくい位置に配置します。生徒は揚げ物を選ぶ自由を持っていますが、無意識のうちに取りやすいサラダを選ぶ確率が高まります。選択の自由を残したまま、環境の配置によって望ましい行動を引き出す仕組みが、ナッジ理論に該当します。

ナッジ理論によるメリットとデメリット

環境の設計を通じて行動を促す手法を採用した場合の利点と不利益を列挙します。

ナッジ理論を採用するデメリット

  • 選択を誘導している意図が対象者に伝わった場合、操作されているという不信感を与える原因となる
  • 罰則を伴う規則と比較して、全員に同じ行動をとらせるような確実な効果を得ることは難しい
  • 運営側の利益のみを優先した設計を行った場合、対象者に不利益をもたらす危険性がある

ナッジ理論を採用するメリット

  • 命令や強制を伴わないため、対象者の反発を招くことなく行動の変化を促すことができる
  • 研修システムにおける初期設定の変更や資料の配置変更など、少ない費用と手間で効果を得られる
  • 対象者自身が自ら選択したと感じるため、行動に対する納得感が高まりやすい

自発的な行動を促す学習ステップ

受講者が適切な選択を行えるよう環境を整えるためには、以下の手順で選択の仕組みを設計する手法が有効です。

1. 促したい行動を明確にする

研修プログラムの中で、受講者にとってほしい具体的な行動を一つ設定します。研修終了後のアンケート提出や、復習用資料のダウンロードといった目標を設定します。

2. 行動を妨げる要因を洗い出す

設定した行動をとる上で、受講者の負担となっている要素を確認します。手続きの回数が多い、入力画面が見つけにくいといった障害を書き出します。

3. 初期状態を再設計する

受講者が特別な操作を行わなくても、望ましい行動が自然と選択されるように環境を変更します。デフォルト(初期設定)の変更が代表的な手法であり、研修終了画面から自動的にアンケート画面へ移行する設定に変更するなどの対策を施します。

4. 実行と効果の測定を行う

新しい環境設定を導入した後、設定した行動を選択した受講者の割合を測定し、変更前の割合と比較して効果の有無を確認します。

受講者の行動を変えるためには、行動そのものを強制するのではなく、行動を選択する環境を見直すことが求められます。まずは、研修内で受講者に実施してほしい手続きについて、操作の回数を1回減らす仕組みを構築する手順から進めてください。環境を適切に設計することで、参加者の自発的な行動を支援する仕組みの構築が可能になります。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。