変わるパスワードの常識
「パスワードには、大文字・小文字、数字、そして記号を含めて設定してください」「前回のパスワード変更から6カ月が経過したため、新しいパスワードに更新してください」――こうした指示は、多くのウェブサービスで見かけるものです。一見すると、セキュリティの強化に繋がるように思えますよね。
しかし実際には、これらの要求がかえってセキュリティを弱めてしまう可能性があるのです。パスワードに関する考え方や常識は、ここ数年で大きく変化しています。
なぜ従来のパスワードルールが危険なのか?
従来のパスワードルール、例えば「大文字・小文字・数字・記号を使う」「定期的に変更する」といったものは、長らくセキュリティを高めるための基本とされてきました。しかし、これらのルールがかえってリスクを増加させる理由は主に2つあります。
まず一つ目は、「覚えやすいパターン」を人間が無意識に選んでしまうという点です。たとえば、"Password1!"のように、規則的に大文字、小文字、数字、記号を並べると、見た目は複雑に見えますが、実際には攻撃者にとっては簡単に予測できるパターンです。攻撃者が利用する「辞書攻撃」や「ブルートフォース攻撃」(全ての可能性を試す攻撃手法)では、このようなパターンが早期に発見されてしまうのです。
もう一つは、頻繁なパスワード変更要求がユーザーに負担をかけ、結果として使い回しや安易なパスワード選択を助長してしまう点です。多くのユーザーが新しいパスワードを覚えるのが難しいと感じ、結局「Password2!」のように、前回のパスワードを少しだけ変えたパターンを使い続ける傾向があります。これでは、セキュリティを強化するどころか、むしろ弱体化させてしまいます。
進化するパスワードの考え方
現在のセキュリティのトレンドでは、パスワードに対する新しいアプローチが推奨されています。その一つが「パスフレーズ」です。パスフレーズとは、長いフレーズを用いたパスワードで、例えば「MyCatLovesSunsets2024」のようなものです。覚えやすい一方で、文字数が多くなるため、辞書攻撃やブルートフォース攻撃に対して非常に強力です。
さらに、定期的なパスワード変更も、今では必ずしも推奨されなくなっています。むしろ、パスワードが漏洩した場合やセキュリティ侵害が検出された時にのみ変更を行う方が良いとされています。こうすることで、ユーザーの負担を軽減しつつも、重要な時にのみパスワードの変更を促すことができます。
多要素認証(MFA)を活用しよう
パスワードに加えて、セキュリティを一層強化するためには「多要素認証(MFA)」が有効です。多要素認証とは、ログイン時にパスワード以外の追加要素、例えばスマートフォンに送られる確認コードや指紋認証などを組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に減少させる方法です。
例えて言えば、家の鍵だけでなく、指紋認証付きのドアや警報システムを追加するようなものです。一つの要素(パスワード)に頼るよりも、複数の要素を使うことで、より堅固なセキュリティが実現します。
パスワード管理ツールの利用
また、長くて複雑なパスワードを覚えるのは大変なので、「パスワード管理ツール」の利用もおすすめです。パスワード管理ツールは、全てのアカウントのパスワードを安全に保管し、ユーザーがその都度覚える必要がなくなるため、強力なパスワードを簡単に使いこなせます。例えば、鍵を一つ一つ覚えておくのではなく、全ての鍵を一括管理する大きなキーチェーンを使うようなものです。
まとめ
これまでの「パスワードに関する常識」は、時代と共に進化し、新しいアプローチが求められています。パスフレーズや多要素認証、そしてパスワード管理ツールなど、最新の技術を活用することで、より効果的なセキュリティを実現できるのです。今後は、自分に合ったセキュリティ対策を見つけ、上手に活用することが大切です。
次は、これらの技術を具体的にどう導入するかを学び、実際に日常で取り入れていくことがステップアップのポイントとなります。
投稿者プロフィール
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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