変化に強い組織をつくる!人材育成の視点で読み解く「両利きの経営」

こんにちは。ゆうせいです。
今回は、組織の持続的成長とイノベーションを両立させるための重要なキーワード、「両利きの経営(Ambidextrous Organization)」について、人材育成担当者向けにわかりやすく解説していきます。


なぜ今、「両利きの経営」が注目されているのか?

近年、以下のような環境変化が加速しています:

  • 技術革新のスピードが速い
  • 顧客ニーズが多様化
  • 働き方が大きく変化(リモート・副業など)

このような時代に必要なのは、「今の強みを活かしながら、新しいことにも挑戦できる組織」です。
まさにそれを実現する考え方が、「両利きの経営」
です。


「両利きの経営」とは?

2つの経営活動を“両立”させる考え方

両利きの経営とは、「深化(Exploitation)」と「探索(Exploration)」という2つの活動をバランスよく実行する経営スタイルのことです。

活動の種類説明
深化(Exploitation)今ある資源・知識を効率的に活かして成果を出す定番商品の改善、業務効率化、コスト削減
探索(Exploration)未知の分野を開拓して、将来の可能性を探る新事業開発、新しい働き方の導入、AI活用

例え話で理解しよう!

学校で例えると――
「深化」はテストで良い点を取るために同じ問題を繰り返し練習すること。
「探索」は未知の分野(例えば哲学や宇宙)に好奇心で挑戦するようなものです。
どちらか一方ではなく、両方を伸ばすことが、将来の可能性を広げるカギになります。


図で見る「両利きの経営」の構造

            両利きの経営
     ┌─────────────┐
     │  深化(Exploitation) │ ← 現在の事業を磨く
     └─────────────┘
              +
     ┌─────────────┐
     │  探索(Exploration) │ ← 未来の事業を創る
     └─────────────┘

この両輪がバランスよく機能することで、組織は安定と革新を同時に実現できます。


人材育成担当者が知っておくべき3つのポイント

1. 育成の目的を「深化型」と「探索型」に分ける

人材育成には、安定運営を担う人材と、変革を起こす人材の両方が必要です。

タイプ目標研修・育成施策の例
深化型人材今の業務をより正確・効率的に行う業務マニュアル研修、品質管理、PDCA研修など
探索型人材新しい価値を創造するデザイン思考、アジャイル開発、越境学習など

2. 両タイプを“混ぜる”と衝突する可能性がある

「新しいアイデアで攻めたい」人と、「ルールを守って安定を求める」人は、しばしば対立します。
この構造をあらかじめ理解しておけば、組織設計や人材配置の工夫が可能です。

3. 探索型人材には「心理的安全性」が不可欠

探索は「失敗を前提とした挑戦」です。
だからこそ、失敗しても責められない雰囲気=心理的安全性(Psychological Safety)が重要です。


導入のステップとチェックポイント

Step 1. 現状のバランスを可視化する

以下のようなグラフを使って、組織内の活動比率を自己診断してみましょう。

グラフ例:深化と探索の活動割合(仮想企業A)

深化:■■■■■■■■■■■■■■(80%)  
探索:■■■■(20%)

このように見える化することで、「探索が足りないのでは?」という気づきが得られます。

Step 2. 両方の人材をバランスよく育成

片方に偏らない人材ポートフォリオの設計が重要です。
部署ごとに役割を明確にし、育成テーマも分けて設計しましょう。


よくある誤解と注意点

  • 誤解1:「探索=若手、深化=ベテラン」?
     →実際には、ベテランの知見を活かした探索も重要です。
  • 誤解2:「全員が両利き」になるべき?
     →人には向き・不向きがあります。チーム全体での両利きを目指すことが現実的です。

今後の学習の指針

「両利きの経営」は、一度にすべてを変えるものではなく、組織の成長フェーズや戦略に応じて調整していくべき概念です。
今後さらに理解を深めるためには:

  1. 組織内で「深化」と「探索」を担う部門・人材をマッピングしてみる
  2. 探索型の育成施策(例:デザイン思考、越境学習)を導入してみる
  3. リーダー層に「両利き思考」の重要性を研修で伝える

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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