委譲と集約の違いとは?Javaを使って新人エンジニアにやさしく解説!

こんにちは。ゆうせいです。

今回はオブジェクト指向設計の中でも混同しやすい2つの概念、
「委譲(Delegation)」と「集約(Aggregation)」の違いについて、
Javaの例を交えてやさしく解説していきます!


まずはざっくり結論!

概念意味関係性の種類例え
委譲処理を他のオブジェクトに任せる「〜に任せる」関係「秘書が上司の予定を代わりに調整」
集約複数の部品から構成される全体を表す「部分と全体」の関係「クラスと生徒」

では、それぞれの意味と使いどころをもう少し具体的に見ていきましょう!


委譲(Delegation)とは?

H3: 他のオブジェクトに「処理を任せる」こと

クラスの中で別のオブジェクトを使って、そのオブジェクトに仕事をしてもらうことを委譲といいます。

Javaの例:

class Printer {
    void print(String message) {
        System.out.println(message);
    }
}

class Report {
    private Printer printer = new Printer();

    void output(String text) {
        printer.print(text);  // ← Printer に処理を「任せて」いる!
    }
}

このように、Reportクラスは自分では出力処理を持たず、Printerに「お願いしてるだけ」です。


集約(Aggregation)とは?

H3: 「全体と部分」の関係で構成されるオブジェクト設計

集約は「含まれるが、依存しすぎない」関係です。
全体が消えても部分は生きていられるのがポイントです。

Javaの例:

class Student {
    String name;
    Student(String name) {
        this.name = name;
    }
}

class Classroom {
    private List<Student> students;

    Classroom(List<Student> students) {
        this.students = students;
    }

    void showStudents() {
        for (Student s : students) {
            System.out.println(s.name);
        }
    }
}
  • ClassroomStudent持っている
  • でも StudentClassroom がなくても独立して存在できる

これが集約です!


委譲と集約の違いを図にすると?

委譲(Delegation)
[Report] ───▶︎ [Printer]
  (処理を依頼)

集約(Aggregation)
[Classroom]
    ├─ [Student A]
    └─ [Student B]
  (一部として所有)


よくある勘違いポイント!

  • 委譲は「機能的な役割分担」
     → 実際の仕事(処理)を別のオブジェクトに「やってもらう」
  • 集約は「構成要素として持つ」
     → 全体が部分を「所有」しているけれど、ライフサイクルは別

まとめ:どちらも「関連を持つ」けど、目的が違う!

観点委譲(Delegation)集約(Aggregation)
関係の種類処理の移譲部品として所有
意味機能を別クラスに任せる構造として含む
依存度高い(処理を任せている)やや低い(自立できる)
ライフサイクルほぼ同じ別々で存在できる

「委譲(Delegation)」と「集約(Aggregation)」を明確に区別することに実質的な意味があるか?

「委譲(Delegation)」と「集約(Aggregation)」を明確に区別することに実質的な意味があるか?という問いに対しては、状況によって「ある」とも「ない」とも言えます。結論から言えば、設計の目的と文脈によって意味を持つ場合があるというのが現実的な答えです。

まず、委譲と集約はいずれも「クラス間の関係性」を表しますが、目的が異なります。
委譲は主に
処理の役割分担として使われ、ある仕事を他のオブジェクトに任せる手法です。
一方、集約は
構造的な所有関係を示し、「全体と部分」の関係性を表します。

この違いを区別することは、UML設計やドメインモデルの明確化、責任分担の整理において意味を持ちます。たとえば、大規模開発やチームでの設計レビューでは、「このクラスは委譲なのか、構造的な集約なのか」が設計意図の読み解きに役立ちます。

ただし、Javaなどのオブジェクト指向言語では文法レベルでは明確な違いが現れにくいため、実装者が意識していない場合、「委譲」と「集約」の線引きは曖昧になります。コードだけを見て判別するのは難しいケースも多く、形式的に区別することが実質的な意味を持たない場面も存在します。

つまり、日常的な実装では区別があいまいでも支障ない場合がある一方で、設計を明確にするためには区別が必要な場合がある、という立場を取るのが現実的です。特に設計図やアーキテクチャ設計を他者と共有する場面では、両者を意識することが設計意図の伝達に役立ちます。


次のステップ:練習問題や応用へ!

  1. 自分で「委譲」と「集約」のコードを1つずつ書いてみましょう。
  2. チーム開発でどちらの関係を使うべきかを設計段階で意識してみましょう。
  3. 「集約」とよく似た「合成(Composition)」や「継承(Inheritance)」との違いも学んでみてください!

正しい関係を設計することが、拡張性と保守性の高いコードの第一歩です!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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