当事者意識を生み出す仕組み:心理的所有感の基礎と研修への応用

こんにちは。ゆうせいです。

研修や業務を進行する際、参加者が与えられた課題に対して受け身の姿勢から抜け出せない状況を見受けることがあります。人間は、対象物を物理的に所有していなくても、対象に対して自分のものという感覚を持つことで、対象との関わり方を変化させる傾向を備えています。本日は、行動経済学や組織心理学における心理的所有感について解説します。

心理的所有感とは何か

心理的所有感とは、法的な所有権の有無にかかわらず、個人が特定の対象に対して自分のものだと感じる認知状態を指します。対象となるものは、物品だけでなく、アイデア、プロジェクト、担当する業務、所属する空間など、形のないものにも及びます。

高校生の文化祭の準備を例に説明します。ある生徒が、担任の教師から指定されたデザイン案の通りに模擬店の看板を作成するよう指示された場合、生徒は指示された作業をこなすことに終始します。一方、同じ生徒が模擬店の看板のデザインから作成までをすべて任された場合、状況は変化します。

生徒は、自分でデザインを考え、材料を選び、時間をかけて看板を作成する過程で、看板に対して自分の作品であるという感覚を抱きます。完成した看板が少しでも傷つけられそうになれば、生徒は看板を守ろうとします。看板の所有権は学校やクラスにありますが、生徒自身が看板に対して自分のものという感覚を持っている状態が、心理的所有感に該当します。

心理的所有感がもたらす影響

参加者が課題や組織に対して心理的所有感を抱くことで生じるメリットとデメリットを列挙します。

メリット

  • 対象に対する責任感や愛着が生まれ、自発的な行動や改善案の提案が増加する
  • 課題に取り組む過程で困難に直面しても、途中であきらめずに解決を図る粘り強さが向上する
  • 対象を守り、発展させようとする動機付けが高まり、結果として高い成果につながる

デメリット

  • 自分のアイデアや担当業務に対する愛着が強すぎるあまり、他者からの助言や批判を受け入れにくくなる
  • 既存のやり方や自分の領域に固執し、組織全体の新しい方針や変化に対して抵抗を示す
  • 自分の領域を侵されることに対して過剰に防衛的になり、部門間の協力関係が阻害される

対象への関与を深める要因

個人が特定の対象に対して心理的所有感を抱くプロセスには、主に3つの要因が関係しています。

  • 対象をコントロールできること対象に対して、自分の意思で変更を加えたり、方向性を決定したりする権限がある状態です。
  • 対象を深く知ること対象について時間をかけて調査し、対象の詳細な情報や背景を理解している状態です。
  • 対象に自分自身を投資すること対象に対して、自分の時間、労力、知識、アイデアなどを注ぎ込んでいる状態です。

前述した3つの要因を研修や業務の設計に組み込むことで、参加者の当事者意識を意図的に高めることが可能になります。

当事者意識を引き出す学習のステップ

参加者が研修内容や業務に対して自分のものという感覚を持ち、主体的に取り組む環境を整えるためには、以下の手順でプログラムを進行する手法が有効です。

  1. 裁量を与える研修の課題を設定する際、詳細な手順をすべて指定するのではなく、参加者自身が目標達成への道筋を選択し、決定できる余白を設けます。
  2. 情報を探索させる提示された情報をただ受け取らせるのではなく、参加者自身が関連する情報を調べ、対象への理解を深める時間を確保します。
  3. アイデアを反映させるグループワークにおいて、参加者が出したアイデアや意見を実際の研修の進行や成果物に組み込み、参加者の労力が形になる体験を提供します。
  4. 成果を共有する完成した成果物や学習の記録を参加者自身の名前とともに発表する機会を設け、参加者の努力が反映された結果として認識させます。

参加者の主体性を引き出すためには、対象への関与を深める仕組みが必要です。まずは、次回の研修課題において、参加者自身が解決のプロセスを一つ選択できる機会を設ける手順から進めてください。関与の度合いを調整することで、参加者が学習内容を自分事として捉える環境の構築が可能になります。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。