思考の2つのモード:行動経済学「システム1とシステム2」の仕組みと研修設計への応用
こんにちは。ゆうせいです。
研修や業務において、参加者が複雑な課題に取り組むうちに疲労し、集中力を失ってしまう場面に直面することがあります。人間は常に同じエネルギーを使って思考しているわけではなく、状況に応じて2つの異なる情報処理の仕組みを使い分けています。今回は、行動経済学および認知心理学の基礎概念であるシステム1とシステム2について解説します。
システム1とシステム2とは何か
システム1とシステム2は、人間の脳が行う2種類の思考プロセスを分類した概念です。
システム1は、直感的、無意識的、かつ高速に行われる情報処理を指します。過去の経験や習慣に基づいて自動的に機能するため、脳のエネルギーをほとんど消費しません。対してシステム2は、意識的、分析的、かつ時間をかけて行われる情報処理を指します。複雑な計算や新しい事学の学習など、注意力を必要とする場面で機能しますが、脳のエネルギーを大きく消費し、疲れやすいという特徴を持っています。
高校生の通学を例に説明します。毎朝同じ道のりを自転車で学校に向かう際、どの交差点で曲がるかを深く検討することはありません。友人と会話をしながらでも、無意識のうちにペダルを漕ぎ、安全に目的地に到達できます。この自動化された処理がシステム1に該当します。
一方、初めて訪れる大学の受験会場に向かう場面を想像してください。スマートフォンの地図アプリを確認し、見知らぬ駅で乗り換え案内の標識を探し、正しい方向へ進んでいるかを常に確認する必要があります。意識を集中させ、疲労を感じながら進む状態がシステム2に該当します。
2つの思考モードを考慮しない場合のデメリット
研修や業務の設計において、システム1とシステム2の性質を考慮しなかった場合に生じる不利益を列挙します。
- 複雑な資料構成や難解な専門用語を多用することで受講者のシステム2を過剰に消耗させ、本当に重要な学習内容に割くエネルギーを奪ってしまう
- 疲労によってシステム2の働きが低下すると、受講者は楽なシステム1による直感的な判断に依存しやすくなり、思い込みによる間違いが増加する
- 新しい業務手順を教える際、熟練者がシステム1で行っている作業を言語化せずに伝えるため、初心者にとって理解困難な指導となってしまう
2つの思考モードを研修に活用するメリット
システム1とシステム2の役割分担を理解し、研修プログラムの構成に組み込む利点を示します。
- 研修資料のレイアウトや基本操作を統一し、システム1で処理できるようにすることで、受講者の脳のエネルギーを新しい知識の習得というシステム2の活動に集中させられる
- 集中力を要するワークを午前中に配置し、午後は負担の少ないグループワークを配置するなど、システム2の消耗度に応じた適切な時間配分が可能になる
- 反復練習を通じて、システム2で行っていた意識的な作業をシステム1の無意識な作業へと移行させるプロセスを意図的に設計できる
学習者の認知負荷を最適化するステップ
システム2の疲労を防ぎ、学習効果を最大化するためには、以下の手順で研修プログラムを設計する手法が有効です。
- 処理モードの仕分けを行う研修内容を構成する要素を書き出し、直感的に理解できる項目(システム1向け)と、深く考える必要がある項目(システム2向け)に分類します。
- 形式的な要素を単純化するスライドのデザイン、テキストのフォント、専門用語の表記ルールを統一します。情報の見せ方を予測可能な形に整えることで、形式に対するシステム2の無駄な消耗を防ぎます。
- 集中を要する課題を分散させるシステム2を稼働させる複雑な課題や新しい概念の解説は、長時間を連続させず、間に短い休憩やシステム1で処理できる単純な作業を挟む構成に変更します。
- 反復による自動化を促す研修の最終目標として、学んだ手順がシステム1で処理できる状態(習慣化)になるまでの反復練習の機会をプログラム内に組み込みます。
人間が持つ思考エネルギーには上限があります。まずは、次回の研修資料において、受講者が余計な思考エネルギーを使わずに文字を読めるよう、スライド内の余白と文字サイズを統一する手順から始めてください。情報処理の仕組みを理解し、環境を整えることで、学習への集中を支援することが可能になります。
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。

