画像認識の常識!なぜCNNではドロップアウトより「バッチノーマライゼーション」が愛されるのか?
こんにちは。ゆうせいです。
前回の記事では、脳細胞をあえてサボらせる「ドロップアウト」の凄さについてお話ししました。過学習を防ぐ特効薬として有名なドロップアウトですが、実は画像認識(CNN)の現場では、少しずつその出番を「バッチノーマライゼーション(BN)」に譲っているんです。
「BNってデータの基準を整えるためのものじゃなかったの?」と思ったあなた、鋭いですね!実はBNには、副次的な「過学習抑制効果」があるんです。今日は、なぜ画像認識のプロたちがドロップアウトよりもBNを好んで使うのか、その裏事情を解説します。
理由1:BNには「天然のノイズ」が含まれている
バッチノーマライゼーションは、データを「ひとまとめ(バッチ)」にして、その平均や分散を使って数値を整える手法でしたね。
ここでポイントなのが、この「平均」や「分散」は、選ばれたバッチごとに微妙に異なるという点です。
高校生の皆さんに例えるなら、クラス全員の平均点で自分の偏差値を出すのではなく、たまたまその日に出席した「10人グループ」の平均点で計算されるようなものです。メンバーが違えば、自分の偏差値もほんの少しだけ上下しますよね?
この「バッチごとのわずかなズレ」が、AIにとっては程よい「ノイズ」になります。ドロップアウトが「ニューロンを消す」という強引なノイズなら、BNは「基準を少し揺らす」という繊細なノイズ。この控えめな揺らぎが、AIが特定のデータを暗記するのを防いでくれるのです!
理由2:畳み込み層の「チームワーク」を壊さない
画像認識で使われる「畳み込み層」は、画像の縦・横のつながり(近所の人たちとの関係)をとても大切にしています。
ここでドロップアウトを使ってランダムにニューロンを消してしまうと、画像の特徴マップに「虫食い」のような穴が開いてしまいます。
これでは、せっかく畳み込み層が捉えようとしている「エッジ」や「模様」の連続性が断ち切られてしまいます。
一方で、BNはデータの「値」を調整するだけで、データの「場所」や「つながり」は一切壊しません。チームの連携を保ったまま、過学習だけをスマートに防いでくれる。これが、画像認識でBNが好まれる大きな理由です。
理由3:学習スピードが段違いに速くなる
ドロップアウトは、学習中にニューロンを消すため、ネットワークの能力をフルに発揮できません。そのため、納得のいく精度に達するまで何度も練習(エポック)を繰り返す必要があります。
対して、バッチノーマライゼーションは前にお話しした通り「アクセルを全開に踏める」ようになる技術です。
| 手法 | 学習速度 | 過学習抑制の仕組み | 画像への影響 |
| ドロップアウト | 遅くなる | ユニットを消して自立を促す | 特徴の連続性を壊す可能性がある |
| BN | 圧倒的に速い | バッチごとの統計的な揺らぎ | 位置関係を保ったまま値を整える |
!
「学習を速めるついでに、過学習も防いでくれる」なんて、BNは一人二役のスーパーサブのような存在なんです。
使い分けのコツ:全結合層はドロップアウトの出番
「じゃあ、ドロップアウトはもういらないの?」というと、そんなことはありません。
画像の特徴を抽出する「畳み込み層」の部分はBNに任せ、最後の最後で判断を下す「全結合層」の部分には、今でもドロップアウトを添えるのが王道のレシピです。
適材適所。これがAI設計の合言葉です!
これからの学習の指針
BNとドロップアウトの関係が見えてくると、モデルの構成図を見るのがもっと楽しくなります。
- 有名な画像認識モデル「ResNet」の構造を見て、BNがどこに配置されているか確認してみる。
- ドロップアウトの代わりに「Spatial Dropout」という、画像専用のドロップアウト手法があることを調べてみる。
- なぜ「BNを入れると、ドロップアウトを併用しなくても良くなるのか」という論文の主張を深掘りしてみる。
一つの技術に頼り切るのではなく、それぞれの強みを知って組み合わせる。そんな「演出家」のような視点を持って、AIを育ててみてくださいね。
さて、画像認識のテクニックをマスターした次は、AIが「文章」を扱うときに最初に行う魔法、言葉を座標に変える「単語埋め込み(Word Embedding)」の世界へ飛び込んでみましょうか!
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。