研修講師のためのAI秘書入門:ChatGPTの「dots」で日程調整・請求・教材準備の雑務を減らす3つのコツと活用場面5選

こんにちは。ゆうせいです。

研修講師の仕事は、登壇している時間だけではありません。研修会社や受講企業との日程調整、事前アンケートの回収、教材の修正、請求書の発行、交通費の精算など、登壇の前後には細かな事務作業が数多くあります。

「本当は教材の改善に時間を使いたいのに、メールの返信と調整だけで1日が終わってしまう」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

2026年9月、OpenAIはChatGPTの新機能として、常に動き続けるAIエージェント「dots(ドッツ)」を発表しました。こちらから指示を出す前に、用事を見つけて先回りしてくれる、いわば「AI秘書」です。

この記事では、研修講師の立場から、AI秘書とは何か、使いこなすための3つのコツ、講師業務で役立つ活用場面5つ、そして利用時の注意点を解説します。

結論:AI秘書は「指示を待つAI」から「先回りするAI」への変化

最初に結論をお伝えします。

  • AI秘書は、こちらが話しかけていない間も、つないだアプリの情報を確認して「手伝えること」を探すAIです
  • 使いこなすコツは「使っているサービスをつなぐ」「用事をすべて伝える」「不満はその場で伝える」の3つです
  • 研修講師の場合、日程調整、請求・経費、教材準備、受講者対応の連絡など、登壇以外の事務作業との相性がよい道具です
  • 一方で、受講企業の機密情報や受講者の個人情報を扱うため、接続範囲と学習設定の確認は欠かせません

AI秘書とは何か

これまでのAIとの違い

これまでのChatGPTは、私たちが質問や依頼を入力して、はじめて動く道具でした。たとえるなら、呼び鈴を鳴らすと来てくれる受付係です。

AI秘書は、呼び鈴を鳴らさなくても、机の上の書類や届いたメールを見て「この件、返信が必要ですよ」「この2つの予定が重なっています」と声をかけてくれる秘書に近い存在です。

OpenAIは、dotsが依頼されていない間も、接続済みのアプリを読み取り専用で確認して手伝えることを探す仕組みを「proactive research(先回りの調査)」と呼んでいます。

dotsの主な特徴

2026年10月時点で公表・報道されている主な特徴は次のとおりです。

項目内容
発表2026年9月29日、OpenAIの開発者向けイベント「DevDay 2026」
動作環境dots専用のクラウド上のコンピューターで動作し、こちらのパソコンを閉じていても作業を続けられる
連携4,000以上のアプリと接続可能(メール、カレンダー、クラウドストレージ、チャットツールなど)
話しかける場所ChatGPTのWeb・デスクトップ・スマートフォンアプリ、Slack、Microsoft Teamsなど
育つ仕組み伝えた好みや手順を覚え、使うほど利用者に合わせた動きになる
対象プランChatGPT Pro(日本では月額16,800円の100ドルプランから)とBusiness Premium。Enterpriseは管理者が有効にした場合に試用可能
利用量dotsとの会話自体はChatGPTの利用上限に数えられない。ただし、dotsがCodexなどに依頼した作業は通常どおり数えられる

料金や対象プラン、提供地域は変更される可能性があります。契約前には、必ずChatGPTの契約画面と公式情報で最新の条件を確認してください。

他社のAI秘書

AI秘書の分野には、OpenAI以外の企業も参入しています。Metaの「Muse」、Googleの「Gemini Spark」、xAIの「Grok Bots」などがあり、各社が「常に動き続ける個人向けエージェント」を競っている状況です。本記事で紹介するコツや考え方は、dots以外のAI秘書にも応用できます。

確認の問い

  • これまでのChatGPTとAI秘書の違いを、「誰がきっかけを作るか」という観点で一言で説明してみてください
  • あなたの講師業務の中で、「誰かに先回りして教えてほしかった」と感じた場面を1つ思い出してください

AI秘書を使いこなす3つのコツ

コツ1:使っているサービスは全部つなぐ

AI秘書が先回りできるのは、つないであるサービスの中の情報だけです。メールだけをつないでいれば、チャットツールで届いた依頼には気づけません。

研修講師であれば、次のようなサービスが候補になります。

  • メール(Gmail、Outlookなど)
  • カレンダー(Googleカレンダーなど)
  • ファイル置き場(Googleドライブ、OneDriveなど)
  • 研修会社や受講企業とのやり取りに使うチャットツール(Slack、Teamsなど)
  • 会計ソフト、請求書作成ツール

ポイントは「4,000のアプリをすべて」ではなく、「自分が普段使っているものをすべて」つなぐことです。たとえば、研修会社からの登壇依頼がSlackで届き、契約条件はメールで届いている場合、両方をつないでおくことで、AI秘書は2つの情報を突き合わせて「条件の確認がまだです」と知らせることができます。

ただし、後述するように、受講企業との守秘義務契約の内容によっては、つないではいけない情報もあります。「つなげるものは全部」とは「契約上問題のない範囲で、仕事の情報が集まる場所はすべて」という意味だと考えてください。

コツ2:用事は大小を問わずAI秘書に伝えておく

2つ目のコツは、思いついた用事をその場でAI秘書に伝えておくことです。

  • 来月の研修のテキストを、最新のJavaのバージョンに合わせて見直す
  • 研修会社A社に、11月分の請求書を送る
  • 受講企業B社の人事担当者に、事前アンケートの回収状況を確認する
  • プロジェクターの変換アダプタを買い足す

付箋や手帳に書いておくだけでは、書いたこと自体を忘れてしまうことがあります。AI秘書に用事をすべて知らせておけば、期限が近づいたときに知らせてくれたり、ほかの予定と重なりそうなときに先に教えてくれたりします。

「AI秘書に伝えたから大丈夫」と思えることで、「あの件はどうなったか」と気にし続ける負担が減り、目の前の研修準備に集中しやすくなります。

例外もあります。研修テキストや提案書のように、何度も細かく修正を重ねる作業は、AI秘書を間に挟むと伝言の往復に時間がかかります。こうした作業は、文書作成やプログラミング向けのAI(ChatGPT内のCodexなど)に直接依頼したほうが早く進みます。その場合も、AI秘書には「提案書は別のツールで自分が作業中」と一言伝えておくと、用事の全体像を把握したままにしておけます。

コツ3:不満はその場で伝える

3つ目のコツは、AI秘書の動きに不満を感じたら、その場で一度伝えることです。AI秘書は伝えられた好みや手順を覚え、次から反映します。

講師業務での例を挙げます。

  • 「受講企業へのメールは、件名の先頭に研修名を入れてください」
  • 「日程調整の候補は、移動日を考慮して前後1日を空けて出してください」
  • 「毎朝のまとめは、専門用語を使わずに3行以内で、自分に関係がある内容から書いてください」
  • 「私に催促されるのを待たずに、終わっていない用事があればあなたから催促してください」

最初の一言は手間に感じるかもしれません。しかし、同じ不満を毎回抱え続けるよりも、一度伝えて直してもらうほうが、長い目で見て負担は小さくなります。新人研修で「わからないことはその場で質問しましょう」と伝えるのと同じ考え方です。

確認の問い

  • 現在あなたが仕事で使っているサービスを書き出し、そのうちAI秘書につないでもよいもの、つないではいけないものに分けてみてください
  • 今日中にAI秘書へ伝えられそうな「小さな用事」を3つ挙げてみてください

研修講師に役立つAI秘書の活用場面5選

ここからは、3つのコツを前提に、研修講師の業務で役立つ場面を5つ紹介します。

活用場面1:研修日程の重なりに気づき、調整の連絡まで進める

研修講師の予定は、複数の研修会社や受講企業から、メール・チャット・電話など異なる経路で入ってきます。カレンダーに入れ忘れた予定が、別の研修と重なっていたということは珍しくありません。

メールとチャットとカレンダーをつないでおけば、AI秘書は「12月3日の午後に入っているC社の打ち合わせと、Slackで連絡のあったD社の事前確認の時間が重なっています」と知らせてくれます。

そこで「C社に、打ち合わせを午前に変更できないか丁寧に確認して」と返せば、AI秘書が文面を作成して問い合わせ、返事が来たらカレンダーの更新と重なりの解消まで確認します。講師がやることは、知らせを見て一言返すことだけです。

活用場面2:登壇の決定から準備までをカレンダーに逆算して入れる

研修の登壇が決まったとき、本番の日付だけをカレンダーに入れて、準備の予定を入れ忘れることがあります。その結果、前日に教材の修正が終わらず、夜遅くまで作業することになります。

AI秘書に、次のように一度伝えておきます。

「研修や打ち合わせが決まったら、必ずカレンダーに登録してください。必要な準備作業も所要時間を見積もって、仮の予定として入れてください。」

すると、研修会社から登壇確定のメールが届いた時点で、本番の予定に加えて「テキストの最終確認」「演習データの準備」「事前アンケートの集計」といった準備の予定が、ほかの予定の空き時間に仮で入ります。途中で急な予定が入った場合も、重なりに気づいて「準備作業を翌日に移しませんか」と提案してくれます。

活用場面3:使っていないサブスクリプションを洗い出す

研修講師は、教材作成や研修運営のために多くの有料サービスを契約しがちです。画像生成AI、動画編集ソフト、オンライン会議ツール、アンケートツール、素材サイトなど、試しに契約したまま使っていないものが残っていることがあります。

カード会社からの引き落とし通知メールをつないでおけば、AI秘書は支払いの通知から契約中のサービスの一覧を作り、金額と次回更新日を整理できます。その中から不要なものを選んで解約を依頼すれば、サービスごとの解約手順を調べ、更新日が近い順に手続きを進めます。

各サービスへのログインは自分で行う必要があります。また、解約完了の通知メールが届くまでは「完了」としないよう伝えておくと安心です。最後に「3か月ごとに契約中のサービス一覧を出して」と頼んでおけば、使っていないサービスに気づかず払い続けることを防げます。

活用場面4:領収書の写真から経費精算・請求書作成まで進める

地方での研修が続くと、新幹線、ホテル、タクシーなどの領収書が財布にたまっていきます。月末にまとめて整理するのは、多くの講師にとって負担の大きい作業です。

AI秘書を使えば、領収書を受け取った場で写真を撮り、「これを経費として登録して」と送るだけです。AI秘書は店名・日付・金額を読み取り、会計ソフトへの登録を進めます。同じ領収書を二重に登録していないかの確認も任せられます。

研修会社ごとに交通費の請求ルールが異なる場合も、ルールが書かれたメールやチャットをつないでおけば、「この研修会社は交通費を実費で別途請求する契約です」といった確認をしてくれます。研修終了後に「E社向けに、講師料と交通費の請求書を作成して」と頼めば、請求書の下書きまで進められます。

活用場面5:社内勉強会や懇親会の幹事業務を引き受けてもらう

研修講師は、受講者向けのフォローアップ勉強会や、講師仲間の情報交換会を企画することがあります。会場探し、参加者の募集、出欠の集計、会場への問い合わせなど、幹事の仕事は細かな作業の積み重ねです。

打ち合わせの内容を録音して文字起こしし、その文字起こしをAI秘書に渡して「この内容をもとに勉強会の企画を進めて」と頼みます。AI秘書は、候補会場の空き状況や料金を調べ、参加者募集の文面を作成し、締め切り後には参加者へカレンダーの招待を送ります。会場が休館日に当たるなどの問題にも、事前に気づいて代案を出してくれます。

一度で完璧なものが出るとは限りません。抜けている情報があれば、その場で直してもらうことで精度が上がっていきます。ここでもコツ3が効いてきます。

確認の問い

  • 5つの活用場面のうち、あなたの業務で最も時間を取られているものはどれですか
  • その場面でAI秘書を使うためには、どのサービスをつなぐ必要があるか考えてみてください

研修講師がAI秘書を使うときの注意点

AI秘書は便利ですが、研修講師は受講企業の情報や受講者の個人情報を扱う立場です。次の点に注意してください。

守秘義務契約の範囲を確認する

研修会社や受講企業と結んでいる業務委託契約や秘密保持契約に、外部サービスへの情報入力に関する定めがないかを確認してください。受講者名簿、評価結果、受講企業の社内資料などは、AI秘書がアクセスできる場所に置かないという判断も必要です。

学習に使われる設定を確認する

OpenAIによると、Business・Enterprise・Eduのワークスペースの内容は、初期設定でモデルの改善に使われません。個人向けプランでは、dotsとの会話や作業をモデル改善に使うかどうかを利用者が選択できます。個人のProプランで使う場合は、ChatGPTの設定にある「データコントロール」で、モデル改善への協力をオフにしておくことをおすすめします。

重要な操作は自分で最終確認する

OpenAI自身も、dotsは間違えることがあるため、重要な作業は必ず確認するよう呼びかけています。研修会社への請求金額、受講企業へ送るメールの宛先、契約の解約など、取り消しが難しい操作は、送信や確定の前に自分の目で確認してください。決済の確定やパスワードの入力も、本人が行う前提で使うのが安全です。

費用対効果を見極める

dotsを使うには、2026年10月時点でChatGPT Proなどの上位プランが必要です。日程調整や事務作業にかかっている時間と、月額料金を比べて判断してください。まずは1か月使ってみて、削減できた作業時間を記録しておくと、継続するかどうかを判断しやすくなります。

確認の問い

  • あなたが現在担当している研修の契約書に、外部サービスの利用に関する定めがあるかを確認してみましょう
  • AI秘書に任せてよい作業と、必ず自分で行う作業の境界線を、具体的な作業名で書き出してみてください

生成AI研修で受講者に伝えるときのポイント

生成AI活用研修を担当している講師にとって、AI秘書は受講者に伝えるべき新しいテーマでもあります。研修で扱う場合は、次の流れが伝わりやすいと考えています。

  1. これまでのAI(指示を受けて動く)とAI秘書(先回りして動く)の違いを、受付係と秘書の例えで説明する
  2. 受講者自身の業務を書き出し、「つなぐサービス」「伝えておく用事」を整理するワークを行う
  3. 情報漏えいのリスクと、会社のルールで許可されている範囲を確認する
  4. 「AIに任せる作業」と「人が判断する作業」を分けるグループワークで振り返る

道具の操作方法だけでなく、「何を任せ、何を自分で判断するか」を考える時間を取ることで、研修後に職場で安全に活用できるようになります。

まとめ

この記事では、研修講師の立場からAI秘書「dots」を解説しました。

  • AI秘書は、指示を待たずに先回りして用事を見つけ、進めてくれるAIです
  • 使いこなすコツは、使っているサービスをつなぐ、用事をすべて伝える、不満はその場で伝える、の3つです
  • 日程調整、準備の逆算、サブスクリプションの整理、経費・請求、勉強会の幹事業務など、講師の事務作業を大きく減らせる可能性があります
  • 守秘義務、学習設定、重要操作の最終確認には、講師自身が責任を持つ必要があります

次のステップとしては、まず自分の1週間の業務を書き出し、登壇以外の事務作業にどれだけ時間を使っているかを把握することをおすすめします。そのうえで、AI秘書に任せられる作業を1つ選び、試してみてください。AI秘書は使うほど利用者に合わせて育つ道具なので、早く使い始めるほど、その効果を長く受けられます。

参考情報

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。

学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。