【会社役員向け】事前確定給与とは?仕組みや注意点をわかりやすく解説
こんにちは。ゆうせいです。
会社の役員として報酬を受け取る際、「事前確定給与」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、法人税の計算において非常に重要な仕組みであり、役員報酬を適正に設定するために理解しておくべき制度です。
「事前確定給与って何?」「どうやって決めるの?」「もし変更したらどうなる?」といった疑問にお答えします。専門用語もかみ砕いて解説するので、安心して読み進めてください。
事前確定給与とは?
1. 事前確定給与の基本概念
事前確定給与とは、会社が役員に支払う報酬を、事前に税務署に届け出ておく制度のことです。法人税法では、会社の役員報酬は一定のルールに従わなければ「損金」(経費のようなもの)として認められません。そのため、役員報酬の額や支給時期を事前に確定し、税務署に届け出る必要があります。
これをしっかり守れば、会社の法人税計算で経費として認められる一方、ルールを逸脱すると経費にできなくなるため、適切な設定が重要になります。
事前確定給与の適用条件
事前確定給与として認められるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 事前に税務署へ届出をすること
- 決まった時期に決まった額を支給すること
- 届出後に支給額を変更しないこと(原則)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 事前に税務署へ届出をすること
会社が事前確定給与を設定する場合、「事前確定届出給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。提出期限は以下のいずれかです。
- 新設法人 → 事業開始から2ヶ月以内
- 既存法人 → 事業年度開始から3ヶ月以内
この届出をしないと、役員報酬が損金算入されないため、法人税の負担が大きくなってしまいます。
2. 決まった時期に決まった額を支給すること
事前確定給与は、「支給の時期」と「金額」を事前に定め、それを厳格に守る必要があります。たとえば、
✅ 「毎月25日に100万円ずつ支給」と届け出た場合 → その通りに支給する必要あり
❌ 「資金繰りが厳しいので1ヶ月だけ減額」 → NG!損金不算入となる可能性大
つまり、一度決めた給与は原則として変更できないのです。
3. 届出後に支給額を変更しないこと(原則)
事前確定給与として認められるためには、途中で金額を変更しないことが大前提です。しかし、やむを得ない事情がある場合(たとえば役員の退任や死亡など)は例外的に認められることがあります。
事前確定給与のメリットとデメリット
メリット
✅ 法人税の負担を軽減できる
事前確定給与として適正に設定すれば、法人税の計算で経費として認められるため、会社の税負担を減らすことができます。
✅ 税務調査で指摘を受けにくい
事前に税務署へ届出をするため、税務調査で「役員報酬の変動が怪しい」と指摘されにくくなります。
✅ 役員の収入を安定させられる
給与額を固定することで、役員自身の所得税・住民税の計算も安定し、資金計画が立てやすくなります。
デメリット
❌ 変更が原則できない
事前に決めた額を守らなければならず、会社の業績が悪化しても減額できないリスクがあります。
❌ 届出を忘れると損金算入できない
事前確定給与の届出をしないと、支給した役員報酬が損金にならず、法人税が増えてしまいます。
事前確定給与と定期同額給与の違い
事前確定給与と似た制度に定期同額給与があります。どちらも役員報酬の税務処理に関わる制度ですが、違いをまとめると以下のようになります。
項目 | 事前確定給与 | 定期同額給与 |
---|---|---|
届出の必要性 | 必要 | 不要 |
変更の可否 | 原則不可 | 変更可(要件あり) |
損金算入の条件 | 税務署の事前届出が必須 | 毎月同額ならOK |
定期同額給与は毎月一定額を支払うだけで済むため、事前確定給与ほどの制約はありません。一方で、事前確定給与は、年2回などの変則的な支給も可能というメリットがあります。
事前確定給与を活用する際のポイント
① 事前確定給与の額は慎重に決める
→ 一度決めたら変更できないため、業績や資金繰りを考慮し、無理のない範囲で設定しましょう。
② 税務署への届出を忘れない
→ 提出期限を守らないと、せっかくの役員報酬が損金不算入になってしまいます。
③ 定期同額給与と組み合わせるのもアリ
→ 定期同額給与を基本にしつつ、賞与のように事前確定給与を設定することで柔軟な報酬設計が可能です。
まとめ
事前確定給与は、会社の法人税を適正に計算するために重要な制度です。事前に税務署に届出を行い、決まった額・時期で支給することが条件となります。税務メリットを享受しつつ、適正な報酬設計を行うことで、会社経営の安定にもつながります。
「うちの会社にとって最適な役員報酬の設定は?」と考えたら、税理士や専門家に相談するのもおすすめです。適切な計画を立てて、スムーズな経営を目指しましょう!
投稿者プロフィール

- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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