AIによるDX推進とは?メリットから事例まで詳しくご紹介

IT業界におけるDXを加速化するためには、AI技術の導入を検討するのがよいと言われているけれど、具体的に何から始めればよいのかわからず戸惑っている人はいませんか?

この記事ではAIによるDX推進のメリットから事例まで詳しくご紹介します。

AIとDXの定義

タブレット端末でAIを操作し、仕事を効率化するイメージ

AIによるDX推進について知る前に、AIとDXとは何かを理解しておく必要があるでしょう。

それぞれご紹介します。

AIとは?

AIとはArtificial Intelligenceの頭文字を取った言葉で、「人工知能」と訳されます。

「知能」という言葉の定義が難しいこと、研究分野が多岐に渡っていることなどから確立した定義はないのが現状です。

しかし2019年に総務省が発表した「令和元年版 情報通信白書」では、AIは「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術」と位置付けられています。

AIには次の5つのレベルがあります。

レベル概要
レベル1・単純な制御のアルゴリズムを持った制御プログラム・温度と湿度を自動調整するエアコン ・食材に合わせて自動で温度調整をする冷蔵庫
レベル2・必要な知識を事前にプログラミングすることでルールに即した動きができる・お掃除ロボット
・チャットボット
レベル3・機械学習をしてルールやパターンを学習し、対応できる動作を増やす・検索エンジン
・ビッグデータ解析
レベル4・深層学習をしてルールやパターンを学習し、対応できる動作を増やす・自動運転
・囲碁や将棋
レベル5・人間と同じように振る舞える

レベル5のAIはまだ開発されていないので例はありませんが、もっと活用の場が増えるAIとして今後の開発や技術の進化が期待されています。

参考:総務省「令和元年版 情報通信白書」

DXとは?

DXとは「Digital Transformation」の略語です。

2022年9月に改訂された経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義づけられています。

DXを積極的に推進した上場企業は「DX銘柄」、中小企業は「DXセレクション」として経済産業省から選定・表彰されます。

また「情報処理の促進に関する法律」に基づいて、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応すると国から「DX認定」を受けられるため、国は業界や企業の規模に関係なくDXを推進しているのがわかります。

参考:経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」

参考:e-GOV法令検索「情報処理の促進に関する法律」

AIをIT業界におけるDX推進に活用するメリット

AIの導入で働き方改革が推進されるイメージ

AIをIT業界におけるDX推進に活用するメリットは次の3つです。

  • オペレーション業務にかかる時間を削減できる
  • 付加価値業務に集中できる
  • 働き方改革につながる

IT企業の業務は新しい顧客体験やビジネスモデル、サービスを生み出す付加価値業務と、管理やサポートを実行するオペレーション業務に分かれますが、AIを活用したDX推進をすることでオペレーション業務を自動化し、従業員が付加価値業務に集中できる環境を整えられます。

また2019年4月から開始された働き方改革では時間外労働の上限規制として月45時間、年間360時間が定められています。

AIを活用したDX推進を進めオペレーション業務を自動化すると時間外労働を減らせるため、IT業界における働き方改革をさらに推進することにもつながるでしょう。

参考:内山悟志「DX戦略見るだけノート」

参考:厚生労働省「働き方改革特設サイト」

AIをIT業界におけるDX推進に活用する上での課題

AIを用いたDXをするためには法律改正という壁があるイメージ

AIをIT業界におけるDX推進に活用するには、どのような課題があるのでしょうか。

3つご紹介します。

法律

AIを用いてDX推進を行い人員削減が可能になったとしても、日本では労働契約法の16条で合理的な理由もなく従業員を解雇してはいけないと定められているため、DXが進まない場合があります。

これを解消するには、社会の現状に合った形へと法律の改正を行う必要がありますが、法律は国会で制定されるため、技術の進化の速さに追いつけないのが現状です。

しかし電子契約が世の中に広まるとともに、電子署名法、電子帳簿保存法、デジタル改革関連法など法整備が少しずつ進んできている事例もあるため、今後に期待しましょう。

参考:e-GOV法令検索「労働契約法」

AI技術の獲得・活用の方針が定められていない

独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」で、AI技術の獲得・活用の方針をどのように決めているかをたずねた所、次のような結果でした。

方針全社方針を策定事業部門・事務部門が独自に方針を策定方針を策定せずに案件・プロジェクトごとに決定わからない
割合34.3%12.2%20.1%33.4%

IT企業がAIを使ってDX推進を行おうとしても、自社においてAI技術をどのように活用するのかが決められていなければ、同じ方向を向いてDXを推進できなかったり、DXが停滞したりする可能性が出てきます。

ビジネスを立ち上げる時にはビジョン策定が必須であるように、DX推進のためのAI技術の獲得・活用の方針はあらかじめ決めておくのが望ましいでしょう。

人材不足

「DX白書2023」で、AI活用に関わる人材のデータサイエンティストや先端技術エンジニアを自社で確保できているかどうかをたずねた所、次のような結果でした。

 やや過剰である過不足はないやや不足している大幅に不足しているわからない自社には必要ない
データサイエンティスト0.3%5.6%24.8%47.5%12.3%9.6%
先端技術エンジニア0.5%5.9%19.2%41.3%10.4%22.7%

データサイエンティスト、先端技術エンジニアで「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業を合計すると50%を超えるため、AIを使ったDX推進を行いたくても人材不足でできない現状があるのがうかがえます。

国ではリスキリングを推進し、文部科学省では産学連携によるAI人材の育成などにも力を注いでいるため、少しずつ人材不足が解消されていく可能性が高いでしょう。

参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」

参考:文部科学省「産学連携によるAI人材等の育成に関する文部科学省の取組」

AIをIT企業がDX推進に活用した事例

スマートホームの提供でDX推進

IT企業がAIをDX推進に活用した事例には、どのようなものがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

SREホールディングス株式会社

AIクラウド&コンサルティング事業、ライフ&プロパティソリューション事業と2つのサービスを行っているSREホールディングス株式会社では、「SRE不動産」でAIを活用しています。

SRE不動産ではReal Estate&TechnologyをテーマにAI技術を活用し、より公平性・透明性・先進性の高い不動産業界を作ることを目指しています。

具体的には「マンションAIレポート」で、ソニーグループが開発したAIが1都3県のマンションの推定価格、都道府県や築年数ごとの価格推定マトリクスなどを算出し、顧客が相場を簡単に知ることができます。

またAI技術を活用したスマートホームの提供を行っているのも特徴的です。

SREホールディングス株式会社はこれらの取り組みにより、デジタルトランスフォーメーション銘柄2021でグランプリを受賞しています。

参考:SREホールディングス株式会社公式ホームページ

参考:経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021選定企業発表会の動画を公開しました!」

株式会社RevComm

AI×Voice×Cloudのソフトウェア、データベースの開発を行っている株式会社RevCommでは、AIを活用したビジネス向けのスマート電話「Miitel」、オンライン会議解析ツール「Miitel Meetings」などのサービスを展開しています。

Miitelは電話内容の録音、文字起こしなどができるだけではなく、話す速度、ラリー回数、被せ率などをAIが解析し、定量評価してくれるため電話応対の教育をデータに基づいてスムーズに行うことができます。

一方Miitel Meetingsはオンライン会議における会話内容の定量評価だけではなく、「AIトーク分析」の感情認識機能で取引先とユーザーの感情推移を可視化することもできるのです。

電話やオンライン会議の内容をトラブル防止のために録音するだけではなく、AI技術を用いて分析し従業員の教育にまで役立てられるため、導入するとDXが進むツールだと言えるでしょう。

2023年8月よりMiitelにはChatGPTを用いた議事録作成機能も追加されたため、AI技術の進化に合わせた新たなサービスのリリースに今後も期待できるでしょう。

参考:株式会社RevComm公式ホームページ

LINE Credit株式会社

LINE Credit株式会社では、同意したLINEユーザーに対してAIを活用した独自のスコアリングモデルを作成し、スコアに応じた特典やキャンペーンが利用できるという「LINE Score」を提供しています。

具体的にはユーザーのLINE関連サービス内においての行動傾向や、サービス利用前に行う質問の回答データを用いて100点~1000点でスコアが算出され、その値に応じた特典やキャンペーンが利用できるのです。

またこのスコアは個人向け無担保ローンサービス「LINE Pocket Money」でも活用され、スコアに応じた利率と利用可能額が設定されるので、アプリ上での操作のみでお金を借りることができます。

参考:LINE Credit株式会社公式ホームページ

参考:内山悟志「DX戦略見るだけノート」

セイ・コンサルティング・グループではAIをDX推進に活かせる人材の育成をサポートしています

セイ・コンサルティング・グループではAIをDX推進に活かせる人材の育成をサポートしています。

弊社が行っている研修コース「AI/IoTの概要とビジネス創造」では、AI、IoTの概要やトレンドを理解し今後の業務に役立てられるだけではなく、自分で生み出したビジネスアイデアを持ち帰ることもできるのです。

従業員にAIやIoTを理解してDX推進に役立てるだけではなく、新たなビジネスアイデアを創造する経験もしてほしいという人は、次のページもごらんください。

7.5 AI/IoTの概要とビジネス創造 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

AIによるDXの推進はオペレーション業務を自動化し、従業員を付加価値業務に集中させられるのが大きなメリットですが、法律やAI人材の不足などまだ乗り越えなくてはいけない課題が多いのも事実です。

この記事でご紹介した成功事例も参考に、ぜひ自社に合った形でのAIによるDX推進を行ってみてください。