ドキュメンテーションとは?スキルを高めるメリットからドキュメント作成のコツまで詳しく解説
IT業界では正確に情報を共有し、コミュニケーションを円滑にするためにも文章力が必要なので、自社の従業員にも早めにドキュメンテーションのスキルを高めてほしいけれど、何から始めればよいかわからず悩んでいる人はいませんか?
この記事では、ドキュメンテーションのスキルを高めるメリットからドキュメント作成のコツまで詳しく解説します。
ドキュメンテーションとは?
ドキュメンテーションとはある事柄に対するデータや情報、記録を収集して他の人がわかりやすい形式で文書化することを指します。
特にIT業界では利用者向けに利用方法のマニュアル、取扱説明書などの作成、他の開発者向けに情報伝達のための仕様書や設計書などの作成を行う必要があるため、高いドキュメンテーション力が求められるのです。
ドキュメンテーションのスキルを高めるメリット
IT企業の従業員がドキュメンテーションのスキルを高めると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
コミュニケーションがスムーズになる
業務の効率化を図る方法論の1つとして「ドキュメント・コミュニケーション」があります。
ドキュメント・コミュニケーションとは企業で大量に使われている提案書・報告書・会議資料などを効果的・効率的に作成して作成者と読者両方の生産性を高めることで、2008年に元マッキンゼーの中川邦夫氏によって提唱されました。
ドキュメント・コミュニケーションは次の3つの原則で成り立っています。
項目 | 概要 |
解・動・早 | ・解=読者にわかっていただく ・動=読者に動いていただく ・早=読者にできるだけ早いアクションを取っていただく |
問題解決コミュニケーション | ・作成者が読者に対し問題解決として伝える ・例えば背景→課題→対策といった構成にする |
スタンド・アローン | ・口頭での説明がなくても読者が十分に理解できる ・作成者が不在でもドキュメントが独り歩きする |
この3つの原則を満たすドキュメントは人を動かすことができ独り歩きできるため、ドキュメント・コミュニケーションは「人を動かす独り歩きする資料でのコミュニケーション」だと言えるのです。
IT企業の従業員がドキュメント・コミュニケーションのスキルを身に着けることで、作成者と読者が1対1の場合だけではなく、1対多人数、多人数対多人数の場合でもコミュニケーションをスムーズに行うことができ、コミュニケーションにかかる時間を効率化できます。
ナレッジマネジメントができる
ナレッジマネジメントとは従業員が持つノウハウや経験、また企業が持つ情報や知識を組織全体で蓄積・共有して全体の生産性を高める手法です。
ナレッジマネジメントの実践には次のような手法が用いられます。
項目 | 概要 |
データマイニング | ・企業に蓄積されたデータからAIや統計学を活用して知識を抜き出す手法 |
データウェアハウス | ・データベースから収集したデータを多角的にまとめることで通常では気づきにくい傾向を察知する手法 |
知識の共有 | ・企業内で知識を共有できる仕組みを作ること |
可視化 | ・理解しにくい情報を図や表、グラフなど視覚に訴える形で表現すること |
エンタープライズサーチ | ・企業内の書類、人事情報、経営情報などを統合し、社内で検索できるようにしたシステム |
ナレッジマネジメントのどの手法においても知識や情報、データを最終的にはまとめる必要があるので、従業員一人一人にわかりやすく伝えるためにはドキュメンテーションのスキルが不可欠なのがわかります。
業務の効率化につながる
IT企業においてはプロジェクトごとに異なる人同士がチームとなり、仕事を進めていくのが日常的です。
そのため1つ1つのプロジェクトについて詳細な記録というのはあまり残すことがないかもしれません。
しかし、もし似たようなプロジェクトを以前自社で行っていて、その時のノウハウや記録が少しでも残っていれば、新しいプロジェクトを成功させやすくなるのではないでしょうか。
プロジェクトの記録をドキュメントとして残すことには、次のようなメリットがあります。
- 情報検索に必要な手間と時間を削減できる
- 品質管理や進行管理がしやすくなる
- 重複する作業を削減できる
- チームメンバーで知識を共有しやすくなる
- 新しい人が途中からチームメンバーとして加わっても研修がしやすくなる
上記のメリットは、どれも業務の効率化を図ることにつながっています。
このことから、IT企業の従業員が日頃からドキュメンテーションへの意識やスキルを高めておくことが、業務の大きな効率化につながっていくとわかります。
IT技術者が知っておきたいドキュメンテーションのコツ
IT技術者が知っておきたいドキュメンテーションのコツを、テキスト部分とそれ以外の部分にわけてご紹介します。
テキスト部分をわかりやすく文書化するためのフレームワーク
テキスト部分をわかりやすく文書化するためのフレームワーク(文章を書く時の型)を3つご紹介します。
PREP法
PREP法とは「結論(Point)→理由(Reason)→具体例(Example)→結論」の順番で話を展開するフレームワークのことを指します。
実際にドキュメントを作成する際には「結論→理由→具体例→2回目の結論」と意識すると書きやすくなります。
結論を先に言うので説得力があり、初心者でも文章を書きやすくなるのがメリットですが、結論以外を読み飛ばされてしまう可能性もあるのがデメリットです。
SDS法
SDS法とはSummary(要点)→Detail(詳細)→Summary(要点)の順番で話を展開するフレームワークです。
1回目の要点は記事で伝えたい概要やポイントを指し、2回目の要点は全体のまとめという違いがあります。
内容を読者に伝えやすいのがメリットですが、情報を伝えるだけになってしまうのがデメリットです。
根拠→説明→意見の順番で書く
根拠→説明→意見という順番で書くという方法もあります。
根拠には数値やデータなどの客観的な事実を用い、その説明をしてから意見を伝えるという形ですが、この「IT人材育成コラム」はおおむねこの形で書いています。
根拠がしっかりしていればオリジナルの意見を盛り込むことができるので、ネゴシエーションなどにも向くドキュメントを作ることができるのがメリットですが、自分の伝えたい意見を裏付けるための根拠を探すのに時間がかかるのがデメリットです。
テキストだけでは伝わらない部分を補足する
ドキュメントのテキスト以外の部分は、テキストだけでは伝わらない部分を補足するのを意識して作るとよいでしょう。
これはテキストだけで全てが伝わると思い込むと、ドキュメントに対する認識の食い違いが起こりやすくなるためです。
テキスト以外の部分を作る時のコツを3つご紹介します。
色を使う
企業にはイメージカラーが存在するので、ドキュメント内にそれを利用する機会は多くなるのではないでしょうか。
イメージカラーをメインカラーとして考えた場合、色相環(代表的な色相を環状に並べたもの)の反対側にある補色をアクセントカラーとして用いると、互いの色を引き立て合うので相乗効果が生まれます。
例えばイメージカラーが紫色なら、補色は黄色となります。
もしイメージカラーやアクセントカラーを決めずにドキュメントを制作した場合、ページごとに色使いが異なり一貫性がなくなってしまうことから、読者は読み疲れを起こしてしまうので気をつけましょう。
フォントを工夫する
フォントとは書体のことで、本来同じサイズで書体デザインが同じ活字のひとそろいを意味しますが、現在ではコンピュータ上で利用できるようにした書体データを指します。
一般的にビジネスシーンではメイリオフォントを用いますが、読者に与えたい印象によって変更するのもよいでしょう。
もしフォントの変更をドキュメントの完成後に行った場合、全体の印象が大きく変わってしまう可能性があるため、フォントのデザインは最初に決めておくのがおすすめです。
図や表を使う
図や表、グラフなどを使った方が伝わりやすい場合は積極的に取り入れましょう。
グラフは特にさまざまな種類があるので、伝えたい内容に応じて次のように使い分けましょう。
グラフの種類 | 適する内容 |
棒グラフ | ・データの大小を比較したい時 |
折れ線グラフ | ・時間の経過とともにどのようにデータが変化したかを知りたい時 |
円グラフ | ・項目別の構成比の比較をしたい時 |
帯グラフ | ・項目別の構成比を時系列で比較したい時 |
複合グラフ | ・2種類のデータを同時に表したい時 |
数値は特にテキストだけで表現するとわかりにくくなってしまうので、積極的に図や表、グラフを使い分けるのがおすすめです。
セイ・コンサルティング・グループではドキュメンテーション研修で新人IT技術者のドキュメンテーション力アップをサポートします
セイ・コンサルティング・グループでは、新人技術者向けに演習中心でドキュメンテーション力アップを目指す「誤解なく伝えるためのドキュメンテーション研修」を行っています。
わかりやすいドキュメントを作成できるようになってもらうためにも、わかりにくいドキュメントとはどのようなものかを研修1日目の前半でお伝えするのが特徴的と言えるでしょう。
また演習中心で研修を進め、2日目の最後にはドキュメントを自分の力で作成してもらうため、インプットした知識をすぐにアウトプットすることとなり、知識として定着しやすい構成となっているのです。
新入社員に質の高いドキュメンテーションを学んでほしい方は、ぜひ次のページもごらんください。
1.6 IT技術者のためのドキュメンテーション研修 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
まとめ
ドキュメンテーションとはある事柄に対するデータや情報、記録を収集して他の人がわかりやすい形式で文書化することを指しますが、特にIT業界では利用者向けにも他の開発者向けにもさまざまな文書作成をする必要があるため、高いドキュメンテーション力が求められるのです。
この記事も参考にして、ぜひ自社の従業員のドキュメンテーションスキルを上げるための取り組みを始めてみてください。