管理職の役割とは?求められる能力から仕事の内容まで詳しく解説
自社でも新しく管理職に昇進する人が増えるので、管理職の役割について研修をしたいけれどどのような内容を盛り込めばよいのかはっきりイメージできず悩んでいる人はいませんか?
この記事では管理職の役割とは何かから求められる能力、仕事の内容まで詳しく解説します。
管理職の役割とは?
管理職の役割とは、次の3つだとされています。
項目 | 概要 |
業務の管理 | ・企業や自分の所属するチームが目標を達成できるよう計画立案、スケジュールや進捗の管理、能力に応じた人員配置、予算の管理などを行う |
部下のマネジメントと育成 | ・チームの生産性を上げるため、部下の強みを活かしてモチベーションを維持しながら目標達成へと導く ・部下の希望するキャリアプランを理解した上で育成に取り組む |
従業員と経営層の橋渡し | ・自社のビジョンやミッションを従業員にわかりやすく説明し、現場の状況や成果を経営層に報告する |
企業が行う業務についての判断の全てを経営層が担うのは難しいので、決裁権を持つ管理職がその役割を果たすことで、目標を達成できる仕組みとなっているのです。
管理職の役割がIT業界で注目される背景
管理職の役割がIT業界で注目される背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
3つの観点からご紹介します。
管理職の不足感が強い
2023年に独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」において、デジタル事業に対応する人材の量の確保についてたずねた所、プロダクトマネージャーについては次のような結果でした。
やや過剰である | 過不足はない | やや不足している | 大幅に不足している | わからない | 自社には必要ない | |
プロダクトマネージャー | 1.6% | 10.4% | 30.7% | 37.6% | 10.4% | 9.3% |
「やや不足している」と「大幅に不足している」を合計すると68.3%を占めますが、プロダクトマネージャーが不足すると管理職の役割を果たす人がいないということになり、プロジェクトが進行できなくなってしまうという結果に直結します。
一方2023年に株式会社リクルートがIT通信業界における管理職求人の状況について調査を行った所、2022年には2016年の4.71倍に増加しており、これは全ての業界の中で1位という結果だったのです。
このことからIT業界においては管理職の不足が顕在化し求人をかけているものの解消できず、管理職の役割が注目されているとわかります。
参考:株式会社リクルート「管理職求人・転職が増加 管理職採用で事業変革・専門スキルの獲得を狙う企業の動き IT・インターネット業界だけでなく、製造業でも同様の傾向」
管理職の不足感は強いにもかかわらず女性管理職が少ない
IT業界に限ったことではありませんが、管理職の不足感が強くても女性管理職や女性役員の割合は男性と比較すると少ない傾向にあります。
「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」では、2030年までに女性役員の比率を30%以上にするのを目標として掲げました。
しかし、2023年7月末時点の上場企業における女性役員の割合は情報・通信業において10.6%となっており、全業種平均値の10.4%は超えているものの目標には19.4%も足りない状況なのです。
一方2023年9月に帝国データバンク名古屋支店が発表した女性登用に対する愛知県企業の意識調査において、女性管理職が30%以上を占める企業は8.8%という結果で、調査開始以来最高となりました。
このことから愛知県の企業は、女性の管理職を増やすべく少しずつ取り組みを進めているのがわかります。
男女共同参画局の「女性役員情報サイト」では情報・通信業において女性を役員や管理職に積極的に登用した好事例が紹介されており、管理職の役割を果たせる人を広い視野で選ぶことの大切さについて理解できるようになっています。
参考:帝国データバンク名古屋支店「女性登用に対する愛知県企業の意識調査」
働き方改革でIT業界では必ずしも昇進=管理職ではなくなってきた
2019年4月から開始された働き方改革によって働く人の意識も変わり、IT業界においては必ずしも昇進=管理職というキャリアパスを通りたい人ばかりではなくなってきました。
またこのキャリアパスを踏まえた人事評価制度では、プロジェクトマネジメントは苦手でも技術力の高い従業員は評価されにくくなってしまいます。
これらのことから管理職として働きたい人とそうではない人のキャリアパスをわけ、それぞれが平等に評価される人事制度に切り替えるIT企業も出てきています。
管理職の役割も1つのスキルだという新しい考え方が、IT業界にも少しずつ取り入れられていくのかもしれません。
参考:厚生労働省 IT業界の働き方・休み方の推進「多様な人材の活躍に向けた柔軟な働き方」
管理職にIT業界で求められる能力とは?
IT業界において管理職に必要な能力は次の通りです。
項目 | 概要 |
IT業界における専門知識 | ・プログラミング、システム、ネットワークなど自分の専門分野に関する知識 |
ITを絡めた経営の知識 | ・IT技術をどのように経営に活かすかの知識と考え方 |
課題解決能力 | ・プロジェクト全体で起こりうるさまざまなトラブルや課題を解決する能力 |
継続的な学習能力 | ・ITに関する最新の知識へのアップデートを続ける能力 |
決断力 | ・論理的な思考に基づいて複数の選択肢から物事を選び決断する力 |
コミュニケーション | ・プロジェクトのメンバーや他部署の人、顧客との適切なコミュニケーションができる能力 |
リーダーシップ | ・プロジェクトを目標達成まで導く能力 |
マネジメント | ・スケジュール管理やコスト管理、品質管理などを行いプロジェクトがスムーズに進むようにする |
これらの能力が多く備わっている人ほどIT業界の管理職としてふさわしい人だと言えるでしょう。
管理職にIT業界で求められる7つの仕事とは?
管理職にIT業界で求められる仕事は企業によっても異なりますが、組織としての成果を挙げるためには
次の7つの仕事が求められると言ってよいでしょう。
ビジョン・ミッション・バリューを浸透させる
ビジョン・ミッション・バリューというと抽象的で違いもよくわからないと感じる人も多いかもしれませんが、それぞれ次のような意味を持ちます。
用語 | 言葉の意味 | ビジネスにおける定義 | 企業で使われる場所 |
ビジョン | 展望 | ・企業としての展望や理想、企業がミッションを完了してどうなりたいかを表す | ・経営理念 ・企業理念 |
ミッション | 使命 | ・企業として果たす使命、企業が事業をする目的や社会の中で実現したいことを表す | ・経営理念 ・企業理念 |
バリュー | 価値 | ・企業内で共有する価値観や方針 ・従業員はバリューを基準にして行動する | ・行動指針 ・行動規範 |
管理職の役割として、従業員に対しビジョン・ミッション・バリューが自分たちの日々の業務とどのように結びついているのかを説明し、働く動機付けをするのは重要な仕事だと言えます。
従業員が働きやすい環境を整える
従業員が働きやすい環境は、次のような観点から考えるとわかりやすいでしょう。
- セクハラ・パワハラ・マタハラなどのハラスメントが起こらない
- コンプライアンスが守られる
- 心理的安全性が確保されていて意見が言いやすい
- 責任の所在がはっきりしている
- 備品や設備が整っている
上記のような内容を意識することで、従業員だけではなく管理職の人自身も働きやすい職場を作ることができます。
目標を設定する
プロジェクトで達成する目標を設定したり、個人の目標を設定させたりしてその達成に向けた進捗管理やフィードバックを行います。
目標は具体的でわかりやすいものとし、プロジェクトに所属するメンバーのレベルに合ったものを設定するよう心がけることが大切です。
人材の育成
管理職の役割として重要なのが人材の育成です。
人事部が行う研修に任せるだけではなく、仕事を通じて従業員が学びや経験を深めよりスキルアップできるようにするのが望ましいでしょう。
その場しのぎで従業員にできないことを教えるのではなく、中長期的な計画を立てて人材育成をすることが組織力の向上や長い目で見た時の生産性のアップにつながります。
人材の配置・役割分担
企業によっても異なりますが、部署内の人材の配置や役割分担をするのは管理職の役割です。
従業員一人一人の強みを活かせる仕事内容やポジションを与えると、それぞれがモチベーションを維持しながら働くことができるでしょう。
「適材適所」を意識し、それぞれが協力しながら成果を挙げられるように人材配置や役割分担をする姿勢が大切です。
関係各所との調整
目標を達成するためには他の部署との連携が必要な場合もありますが、利害が一致せず意見の対立が生まれる場合も出てくるでしょう。
そのような時に各部署の意見を調整し、落とし所を見つけるのも管理職の役割です。
普段から他の部署の従業員とも良好な関係を築き、信頼関係を構築していればいざという時にも調整がしやすくなります。
お互いが気持ちよく業務を進められる関係を意識して作るのが大切です。
従業員のモチベーションを維持する
従業員のモチベーションが下がるとプロジェクト全体の士気が下がってしまい、目標達成に大きな影響を及ぼすことがあります。
このような状況に陥らないためにも、日ごろから従業員のモチベーションがなるべく上がるよう意識してマネジメントをするのが大切です。
セイ・コンサルティング・グループでは「管理職研修」でIT業界における管理職のあり方を提案しています
セイ・コンサルティング・グループでは管理職や管理職候補の方を対象に「管理職研修」を行い、IT業界における新しい管理職のあり方を提案しています。
具体的には心理的安全性の高い職場づくり、自律型人材の育成などIT業界で「今」求められる管理職スキルが学べる研修を行っているのです。
自社における管理職研修だけでは足りない「何か」を探している方は、ぜひ次のページもごらんください。
まとめ
管理職の役割とは業務の管理、部下のマネジメントと育成、従業員と経営層の橋渡しの3つですが、急速に変化するIT業界においては少しずつその中身も変わってきていると言えるでしょう。
この記事も参考にして、あらためて自社における管理職の役割を考え、研修にも活かしてみてください。