シャノンのエントロピーとコルモゴロフ複雑性を新人エンジニア向けにやさしく比較解説
こんにちは。ゆうせいです。
今回は、情報理論と計算理論の代表的な概念である「シャノンのエントロピー」と「コルモゴロフ複雑性」について、新人エンジニアの皆さんに向けてわかりやすく解説していきます。
この2つは一見似ているように感じるかもしれません。どちらも「情報の量」や「複雑さ」を測る考え方ですが、実は出発点も使い方も全く違うんです。
それでは、「似ているけど違う」この2つをしっかり区別しながら学んでいきましょう!
そもそも「情報量」って何だろう?
まず質問です。
「Aさんがサイコロを1回振った結果を知ったとき、どれくらい驚きますか?」
これ、情報理論では「驚きの大きさ=情報量」として定義されます。予測しにくい結果ほど、情報量は大きくなるというわけです。
シャノンのエントロピーとは?
定義
シャノンのエントロピーは、確率分布に基づいて、その情報源の平均的な情報量を測る指標です。
数式で表すと:
H(X) = −Σ P(x) * log₂ P(x)
(Hはエントロピー、P(x)はxという結果の出現確率)
日本語で書くと:
H(X) = 各データxについて、「その確率×その情報量(logで表す)」を全部足し合わせたもの
例で理解しよう!
例1:公平なコイン
- 表と裏が同じ確率(50%)
- H = −(0.5×log₂0.5 + 0.5×log₂0.5) = 1ビット
例2:表が90%、裏が10%
- H = −(0.9×log₂0.9 + 0.1×log₂0.1) ≒ 0.47ビット
→ 偏りがあるほど予測しやすくなり、情報量は小さくなる
コルモゴロフ複雑性とは?
定義
あるデータ列を最も短いプログラムで出力するとき、そのプログラムの長さを、そのデータのコルモゴロフ複雑性とします。
数式で書くと:
K(x) = 最も短いプログラムpの長さ(|p|)、ただしpはxを出力する
日本語で書くと:
K(x) = 「xを生成できる最短の説明(プログラム)の長さ」
例で理解しよう!
例1:規則的な列「0101010101」
- 「01を5回繰り返す」と書ける → プログラムが短い
- K(x)は小さい
例2:ランダムっぽい列「0110100111…」
- 規則が見つからない → そのまま書くしかない
- K(x)は大きい
図で比べてみよう!
特徴 | シャノンのエントロピー | コルモゴロフ複雑性 |
---|---|---|
基準 | 確率分布 | 最短プログラムの長さ |
扱う対象 | 情報源(ランダム変数) | 個別のデータ列 |
目的 | 平均的な情報量を測る | データ自体の構造を測る |
実用性 | 実際に計算できる | 理論上のみ(非計算可能) |
用途 | 通信、圧縮、暗号など | 理論的な複雑性、機械学習理論 |
たとえるなら?
- シャノンのエントロピーは、「ガチャの当たりやすさ」のようなもの。確率で平均の驚きを測っています。
- コルモゴロフ複雑性は、「そのガチャの中身を一から再現する設計図」のようなもの。再現の手間が情報量です。
一緒に使うともっと強い!
実はこの2つは、情報圧縮や機械学習で補完的な役割を果たします。
例:情報圧縮
- シャノンのエントロピー:理論上の限界(どれだけ圧縮できるか)
- コルモゴロフ複雑性:実際にどこまで圧縮可能かの目安
実務エンジニアにとってのポイント
- データの性質(ランダムか、規則的か)を理解する視点を与えてくれます。
- 圧縮率の評価、異常検知、モデル選択など、あらゆる場面でこの“情報の見方”が活きます。
今後の学習の指針
まずは次のようなテーマに進むと理解がさらに深まります:
- 情報理論の基本(シャノン符号化、通信路容量など)
- 計算理論(チューリングマシン、アルゴリズムの計算量)
- MDL(最小記述長)原理:実務に近いコルモゴロフ的アプローチ
- ベイズ推論と事前分布:情報と予測の関係を見る視点
情報を「どれだけ圧縮できるか」「どれだけ驚くか」という視点を持つと、AIやデータサイエンスの基礎が一段と面白くなってきます。
ぜひ、自分の使うアルゴリズムに対して「これは情報的にどういう意味を持つのか?」と問いかけてみてくださいね!
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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