「∞」「lim」「→」の記号はどこから来た?解析学・極限記号の歴史をたどる

こんにちは。ゆうせいです。
今回は、極限や無限に関する記号を取り上げます。

極限や収束、無限大といった概念は、主に解析学(calculus and analysis)の分野で登場しますが、私たちが使っている「lim」や「→」、「∞(無限大)」といった記号にも、それぞれ誕生の経緯があります。

いったいこれらの記号は、いつ・誰が・なぜ使い始めたのか?
今回は、信頼できる記録をもとに、歴史的事実に基づいて解説していきます。


「∞」無限大の記号はどこから?

意味と定義

  • 記号「∞」は、「果てしなく大きな数(無限大)」を表す。
  • 読み方は「むげんだい」「infinity」。
  • 数学的には、極限や級数、集合論などで使用されるが、「数」そのものではなく概念を表す。

記号の起源

項目内容
初出1655年
使用者ジョン・ウォリス(John Wallis)
著書『De sectionibus conicis(円錐曲線について)』
  • 「∞」という形は、「数字の8を横に倒したもの」に似ており、実際にローマ数字の 1000 を省略した記号「CIƆ」や、ギリシア語の文字 ω(オメガ)との関係も指摘されているが、ウォリス自身は明確な理由を述べていない。
  • ウォリスはこの記号を「終わりのない量」として紹介した。

「lim」極限を表す記号の起源

意味と定義

  • 「lim」は、「limit(限界、極限)」の略であり、「x が a に近づくときの f(x) の極限値」を表す。

記号の導入

  • 導入時期:18世紀後半から19世紀初頭にかけて
  • 表記を整備した人物カール・ワイエルシュトラス(Karl Weierstrass)
  • 言語的由来:英語およびラテン語の “limit” に基づく略記。

実際に「lim」という略語としての使用が定着したのは、19世紀の微積分教育の中で、解析の厳密化(rigorization)が進んだ結果とされる。
ワイエルシュトラスは、ε-δ論法と共にこの記法を広めた。


「→」収束の記号はどこから?

意味と定義

  • 「aₙ → L」 は、「数列 aₙ が L に収束する」という意味。
  • 極限、収束、関数の振る舞いなど、解析全般で用いられる。

記号の導入

記号意味導入者初出
極限・収束デイヴィッド・ヒルベルト(David Hilbert)1922年
  • ヒルベルトは論理記号として「→」を導入し、その後解析の中でも広く使われるようになった。
  • 現在では「→」のほかに、「⇒」「⇨」などが状況によって使い分けられている。

ε-δ 論法と記号の活用

極限の定義として最もよく知られている形式が「ε-δ(イプシロン・デルタ)論法」です。

この中で以下の記号が使われます:

記号意味
任意の(for all)
存在する(there exists)
含意(ならば)
極限・収束
lim極限値(limit)
ε, δ任意の正の実数

これにより、極限の性質が厳密な論理式として定義できるようになったのです。


その他の極限関連記号

記号意味備考
lim sup⁡\limsup上極限(limit superior)上に発散しうる極限の上限を取る
lim inf⁡\liminf下極限(limit inferior)下に発散しうる極限の下限を取る
→∞\to\infty無限大への収束「x → ∞」は「x が無限に増加する」意味
→0\to 00への収束(微小)特に導関数や積分の極限で頻出

参考文献

セイ・コンサルティング・グループの新人エンジニア研修のメニューへのリンク

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。