【初心者エンジニア向け】完全畳み込みネットワーク(FCN)とは?セグメンテーションの基礎をやさしく解説!

こんにちは。ゆうせいです。

今回は、画像の中の物体をピクセル単位で分類する「セマンティック・セグメンテーション」の基礎となる技術、完全畳み込みネットワーク(Fully Convolutional Network、FCN)について、新人エンジニア向けにやさしく解説していきます!

「なんで“全結合層”を使わないの?」「どんな応用があるの?」といった疑問も、例えや図を交えて丁寧に説明していきますね。


完全畳み込みネットワーク(FCN)とは?

「分類」から「画像全体を分類」するへ進化したニューラルネット

従来の画像分類モデル(たとえばVGGやResNet)は、最終的に1枚の画像に対して1つのクラス(犬、猫、車など)を出力していました。

一方、完全畳み込みネットワーク(FCN)は:

  • 画像の各ピクセルごとにクラスを分類します
  • 出力は「猫:このピクセル」「空:このピクセル」…と同じサイズの“色分けマップ”

つまり、画像全体を「塗り絵のように意味づけ」するネットワークなんです!


どうして“完全畳み込み”なの?

全結合層(Fully Connected Layer)を使わない=FCN!

普通の分類ネットワークでは、最後に全結合層を使って出力(分類ラベル)を出しますよね。

ところがFCNでは、最後まで“畳み込み層だけ”で構成されています。

その理由は?

  • 全結合層を使うと、出力のサイズが固定されてしまう(入力サイズを変えられない)
  • でも、畳み込み層だけならどんなサイズの画像でも処理できる
  • 各位置ごとに分類できるから、ピクセル単位の分類が可能

つまり、FCNは「全結合層を排除し、出力まで畳み込みで処理するネットワーク」です。


FCNの処理の流れ(図で理解)

ざっくりした流れは以下の通りです:

[入力画像]
   ↓
[特徴抽出(畳み込み)]
   ↓
[空間情報が縮小された特徴マップ]
   ↓
[アップサンプリング(転置畳み込み)]
   ↓
[元の画像サイズに復元された出力(ピクセル分類)]

ここでのアップサンプリング(upsampling)とは、「小さくなった画像を拡大する操作」です。

FCNでは、転置畳み込み(Transposed Convolution)を使ってサイズを戻し、最終的に「入力画像と同じ大きさの出力」を作ります。



FCNにはバリエーションがある!

FCNの研究では、以下のような改良バージョンも提案されています:

モデル特徴
FCN-32s最後の特徴マップだけを32倍にアップサンプリング(粗い)
FCN-16s中間層の情報も使って16倍にアップサンプリング(やや細かい)
FCN-8s複数の層を組み合わせて8倍アップサンプリング(滑らか)

下に行くほど滑らかで高精度な予測が可能になりますが、計算量も増えます。


FCNはどんなところで使われるの?

ピクセル単位で意味を分けられるFCNは、さまざまな分野で活用されています。

分野活用例
自動運転車線、歩行者、標識などを領域ごとに認識
医療画像CTやMRIで臓器・腫瘍などを自動で色分け
リモートセンシング衛星画像から建物、道路、植生などを分類
AR/VR背景と人物の分離(リアルタイム処理に活用)

メリット・デメリットを比較してみよう

メリットデメリット
入力画像と同じサイズで出力できる(柔軟性)境界がぼやけやすい
全体を効率よく処理できる小さな物体の検出はやや苦手
軽量で設計がシンプル空間的な位置情報が失われやすい

FCNの後継モデルもたくさん!

FCNはセマンティック・セグメンテーションの基礎であり、以下のような改良モデルが次々と登場しています。

モデル名主な特徴
U-Net医療画像で活躍、上下対称構造で高精度
DeepLab(v1〜v3+)Atrous Convolution(空洞畳み込み)を導入
PSPNetピラミッド型プーリングで大域情報を強化

これらの多くは、FCNの構造をベースにして改良されたものです。


今後の学習の指針

FCNの基本を理解したら、次は以下のステップを目指しましょう!

  1. FCNを実装して、自分の画像でセグメンテーションを試してみる
  2. U-NetやDeepLabなど、FCNの発展形にも触れてみる
  3. 軽量化や高速化を考えた設計(MobileNet+FCNなど)を調べる
  4. アノテーションツールでデータを作成し、学習パイプラインを構築する

FCNは、画像を“意味のある領域”に分けるためのはじめの一歩。これが理解できれば、セグメンテーション分野の扉が大きく開かれます!

次は、実際にFCNを動かして、「画像をどうやって塗り分けているのか」を体感してみてくださいね。質問があればいつでもどうぞ!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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