新人研修用!ビッグファイブ(Big 5)5段階評価の行動目安
こんにちは。ゆうせいです。
新人エンジニア研修講師の皆様、受講者の特性を多角的に把握できていますか?
受講者特性をビッグファイブで評価するというのはどうでしょうか?
ビッグファイブ仮説は、人間の性格を「外向性」「協調性」「誠実性(勤勉性)」「神経症傾向」「開放性」という5つの基本的な次元で説明できるとする心理学理論です。これらの特性は文化や言語を超えて比較的普遍的であり、個人の行動傾向や対人関係、職務適性の理解などに広く応用されています。
ビッグファイブは優劣をつけるものではありませんが、研修中の行動を観察する「観点」として利用することで、その人の得意な環境や、つまずきやすいポイントを理解する助けになります。
研修という「実務に近い環境」で観察できる、5つの特性それぞれの行動目安(5段階評価)を作成しました。
評価「5」が高い(その特性が強く表れている)状態、「1」が低い(その特性が弱く表れている)状態を示します。
1. 外向性 (Extraversion)
(他者への関心、積極性、エネルギーの方向性)
5(高い):
研修中、自ら積極的に他者と関わろうとする。グループワークやディスカッションでは、活発に発言し、議論を主導する傾向がある。チームの雰囲気作りにも貢献する。
4:
議論には積極的に参加し、自分の意見を述べることができる。他者からの働きかけにも快く応じ、コミュニケーションを楽しんでいる様子が見られる。
3(中間):
必要な場面(質問、発表、指名された際)では適切に発言・応答する。1対1や少人数でのコミュニケーションは円滑だが、大人数の中では聞き役に回ることも多い。
2:
控えめであり、自ら発言することは少ない。グループワークでは、主に聞き役や書記役など、受け身の役割を好む傾向がある。
1(低い):
研修中はほぼ聞き役に徹し、自発的な発言はほとんど見られない。単独での作業や学習を明確に好み、必要以上のコミュニケーションを避ける様子がある。
2. 協調性 (Agreeableness)
(他者への配慮、協力的な姿勢、共感性)
5(高い):
非常に協力的で、常に他者の意見や感情を尊重する。チームの調和を最優先し、困っているメンバーがいれば積極的にサポート役に回る。
4:
チームメンバーの意見をよく聞き、基本的には合意形成に向けて協力する姿勢を見せる。他者の意見を受け入れる柔軟性がある。
3(中間):
チームの方針には従うが、自分の意見と明確に異なる場合は、論理的に自分の考えを(穏便に)伝えようと試みる。協力と自己主張のバランスを取ろうとする。
2:
協調性よりも、自分のタスクの進捗や意見の正しさを優先する傾向がある。議論において、他者の意見と対立することを恐れない。
1(低い):
競争的であり、他者の意見に対して懐疑的・批判的な態度を取ることが多い。グループワークでは自説を曲げず、論理的な正しさを強く追求する。
3. 堅実性 (Conscientiousness)
(自己規律、計画性、責任感、細部へのこだわり)
5(高い):
非常に計画的で、与えられたタスクや納期、研修のルールを厳格に守る。成果物(コード、ドキュメント等)は細部まで丁寧に仕上げられており、自己管理能力が極めて高い。
4:
ほぼ全ての納期を守り、指示されたタスクを責任感を持って完了させる。成果物にも大きな抜け漏れはない。
3(中間):
主要な納期やタスクは完了させるが、時折、細部(ドキュメントの更新忘れ、テストケースの甘さ等)に抜け漏れや、詰めの甘さが見られることがある。
2:
タスク管理や時間管理に苦労する様子が見られ、納期や提出物を忘れたり、遅れたりすることがある。
1(低い):
計画性が低く、場当たり的な進め方が目立つ。納期や指示されたタスクの完了度が著しく低く、成果物の質にもムラが大きい。
4. 情動安定性 (Emotional Stability)
(ストレス耐性、感情のコントロール、落ち着き)
(注意:これは一般的に「神経症的傾向」の逆の尺度です。5が高い=安定、1が低い=不安定(神経症的傾向が強い)としています)
5(高い):
非常に冷静沈着。予期せぬエラー(バグ)や難しい課題、厳しいフィードバック(コードレビュー等)に対しても、感情的にならず冷静に原因を分析し、対処する。
4:
基本的に安定しており、プレッシャーのかかる場面でも冷静さを保とうと努める。失敗しても、比較的早く立ち直ることができる。
3(中間):
難しい課題や納期前はストレスを感じる様子(焦り、沈黙、イライラ)が見えるが、自力または他者の助けによって、時間をかければ持ち直す。
2:
フィードバックや失敗に対して落ち込みやすく、不安や焦りが表情や態度に出やすい。ストレスがかかると、パフォーマンスが低下する傾向がある。
1(低い):
常に不安や緊張を抱えている様子が見られる。小さな失敗やフィードバックにも過敏に反応し、動揺を引きずりやすい。
5. 開放性 (Openness to Experience)
(好奇心、探求心、新しい経験への柔軟性、創造性)
5(高い):
好奇心が非常に強く、研修で扱う技術の周辺領域や新しい概念(別のプログラミング言語、新しいフレームワーク等)にも、自ら進んで触れようとする。
4:
新しい技術や知識の学習に対して意欲的であり、積極的に質問・調査する。未知の課題に対しても、臆せず取り組む姿勢が見られる。
3(中間):
研修カリキュラム内の新しい概念やツールは、指示通りに習得・活用する。求められた範囲での学習は忠実に行う。
2:
新しい技術や従来と異なるアプローチよりも、既に自分が知っている方法や、確立された手順(マニュアル通り)を好む傾向がある。
1(低い):
カリキュラムで示された範囲以上の学習に興味を示さず、新しい技術や抽象的な概念の理解に抵抗を感じる。保守的で、決まったやり方を変えたがらない。
まとめと今後の指針
これらの評価は、あくまで「研修期間中」という特定の環境下で見えた行動の傾向です。
大切なのは、この評価を使って「この人は堅実性が低いからダメだ」とレッテルを貼ることではありません。
「この人は堅実性の面でつまずきやすい(計画や確認が苦手)かもしれないから、タスク管理をこまめにサポートしよう」
「この人は開放性が高いから、決まりきった運用保守より、新しい技術の調査チームが向いているかもしれない」
といった、今後の育成方針や配属先を検討するための「支援材料」として活用することです。
受講者一人ひとりの個性を理解し、その強みを最大限に伸ばすためのインプットとして、ぜひ役立ててください。
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
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