【AIの脳内】誤差をゼロに近づけろ!「学習の数式」が教える改善のサイクル

こんにちは。ゆうせいです。

皆さんは、自分の書いたコードが動かなくてエラーが出たとき、どう思いますか?

「うわ、最悪だ」「自分はダメだ」と凹んでしまうかもしれません。

でも、今のAI(人工知能)にとって、エラー(間違い)は宝の山です。

AIは「正解」と「自分の答え」のズレを正確に測り、それを埋めるように自分自身を微調整することで賢くなっていきます。

今日は、世界中のAIが毎秒何億回と繰り返している「学習の数式」について解説します。これを理解すれば、あなたの「反省」の質が劇的に変わりますよ。

1. ネットのアルゴリズムを改善する「学習の数式」

今回解読するのは、数学(微分)を使った少しアカデミックなこの数式です。

- \frac{d(y - y_\theta)^2}{d\theta}

記号が入り組んでいて難しそうに見えますが、やっていることは 「山下り」 です。

高いところ(間違いが多い状態)から、低いところ(間違いが少ない状態)へ降りていくためのコンパスのような式です。

2. 数式を解読しよう

この数式は、 「勾配降下法(こうばいこうかほう)」 と呼ばれる学習アルゴリズムの核心部分です。

  • y正解データ です。「本当はこうあるべき」という理想の値です。
  • y_\thetaAIの予測値 です。現在のAIが出した答えです。
  • \theta (シータ): パラメータ です。AIの脳内の「調整つまみ」のようなものです。これを回すと予測値が変わります。
  • d (ディー): 微分 です。「変化の傾き」を調べます。

式が教えてくれること

式の中心にある (y - y_\theta)^2 を見てください。

これは「正解」と「予測」の引き算、つまり 「誤差(間違いの大きさ)」 です。これを2乗しているのは、マイナスを消すと同時に、「大きな間違いほど重く受け止める(罰を大きくする)」ためです。

そして、全体についている d/d\theta (微分)と - (マイナス)。

これは、こういう意味です。

「誤差(山)が小さくなる方向(下り坂)はどっちだ? そっちにパラメータ( \theta )を回せ!」

つまりAIは、適当に学習しているわけではありません。

「今の設定だと誤差が出るな。じゃあ、このつまみを右に少し回せば誤差が減るはずだ」という計算を、この数式を使ってひたすら繰り返しているのです。

3. エンジニアが知っておくべき専門用語

この数式は、ニューラルネットワーク(ディープラーニング)の学習そのものです。

損失関数(Loss Function)

数式の中の (y - y_\theta)^2 の部分です。

今のAIが「どれくらいポンコツか」を表すスコアです。学習の目的は、この損失関数の値を限りなく0に近づけることです。

エンジニアの仕事で言えば、「バグの数」や「レスポンスの遅延時間」などがこれにあたります。

勾配降下法(Gradient Descent)

「誤差の山」を、谷底に向かって少しずつ降りていく手法のことです。

目隠しをして山の中にいると想像してください。周りは見えませんが、足元の「傾斜」だけはわかります。「足元が下がっている方向」へ一歩ずつ進めば、いつかは一番低い場所(正解)にたどり着けますよね。これがAIの学習方法です。

バックプロパゲーション(Backpropagation)

日本語では「誤差逆伝播法」と言います。

「出力の結果が間違っていた! ということは、原因は入力に近いあの計算だ!」というように、結果(誤差)から逆算して原因(パラメータ)を修正していく技術です。この数式を使って、間違いの責任の所在を突き止めているのです。

4. この考え方を使うメリットとデメリット

メリット

「自動的に最適解が見つかる」 ことです。

人間が「ここはこう直しなさい」と手取り足取り教えなくても、AIは「誤差さえ定義できれば」、勝手に自分を修正して賢くなっていきます。

私たちも、「何が理想( y )で、現状( y_\theta )とどれくらいズレているか」さえ明確にできれば、あとはその差を埋める作業をするだけで成長できるはずです。

デメリット

「『局所解』にハマることがある」 という点です。

山下りをしていると、実はそこが一番低い場所ではないのに、ちょっとした窪み(くぼみ)にハマって動けなくなることがあります。これを「局所解(ローカルミニマ)」と言います。

「今のやり方でそこそこ上手くいっているから、これでいいや」と満足してしまい、その隣にある「もっとすごい正解」に気づけない状態です。これを防ぐには、たまに勢いよく飛び跳ねてみる(学習率を変える)などの工夫が必要です。

5. 今後の学習の指針

これからのエンジニアに必要なのは、漠然と悩むことではなく、 「誤差(ロス)を定義する力」 です。

「なんとなく調子が悪い」では修正しようがありません。

「理想のコード行数は100行( y )。今の自分は150行( y_\theta )。この50行の誤差を減らすには、どのロジック( \theta )をどう修正すべきか?」

このように問題を数式のように捉えれば、あなたの成長速度(学習効率)はAI並みに加速するでしょう。

さて、いよいよ次回が最終回です。

最後にお届けするのは、プログラミングの基本中の基本であり、論理的思考の到達点でもある「⑩普遍の数式」です。

なぜ「If文」が絶対的な正しさを生み出すのか? その真理に迫ります。お楽しみに!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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