「あの先生の話、ドラマみたいだったな」と言わせる技術。研修講師と俳優の共通点から学ぶ「演じる」力
こんにちは。ゆうせいです。
みなさんは、好きなドラマや映画の俳優さんはいますか?
スクリーンの中で泣いたり笑ったりする彼らを見ていると、まるでそれが本当のことのように思えて、つい感情移入してしまいますよね。
では、研修講師はどうでしょう?
「講師は事実を伝える仕事だから、演技なんて関係ない」と思っていませんか。
実は、トップクラスの研修講師ほど、教壇というステージに立つ「俳優」であることを意識しています。
今日は、研修講師と俳優という二つの職業を比べながら、人前で堂々と振る舞い、相手を惹きつけるための「演じる技術」についてお話ししましょう。
研修講師と俳優の共通点:ペルソナを被る
研修講師と俳優の最も大きな共通点は、「素の自分」とは違う「役」になりきるという点です。
これを専門用語で「ペルソナ」と言います。
ペルソナとは?
ペルソナ(Persona)とは、もともと古典劇で役者がつけていた「仮面」のことです。
心理学やビジネスの世界では、周囲に見せる「外向きの顔」や「役割」のことを指します。
俳優がカメラの前で「役」という仮面を被るように、研修講師も人前に立つときは「プロの講師」という仮面を被ります。
例えば、普段は人見知りで声が小さい人でも、講師というスイッチが入った瞬間に、背筋を伸ばし、ハキハキとした大きな声で話すようになります。
これは嘘をついているのではありません。
受講生を安心させ、導くために、理想的なリーダーとしての役割を「演じて」いるのです。
スクリプト(脚本)の存在
俳優には台本(スクリプト)がありますよね。
セリフ、動き、立ち位置などが細かく書かれています。
実は講師にも台本があります。
「タイムテーブル」や「指導案」と呼ばれるものがそれです。
「ここでこの質問をする」「ここでこのスライドを見せる」といった進行はあらかじめ決まっています。
この決められた脚本を、いかに初めて話すかのように新鮮に伝えるか。
その表現力が問われる点は、まさに俳優と同じなのです。
研修講師と俳優の相違点:第四の壁
では、講師は俳優とまったく同じように振る舞えば良いのでしょうか?
ここで、演劇の世界にある重要な概念を使って、決定的な違いをご説明します。
それは「第四の壁」の有無です。
俳優には「第四の壁」がある
演劇の舞台を想像してください。
舞台の奥、右、左には壁がありますが、客席側には壁がありませんよね。
しかし、俳優はそこに「見えない壁(第四の壁)」があるものとして演技をします。
観客は壁の向こうから覗き見ている存在であり、俳優が観客に話しかけることは基本的にはありません(演目にもよりますが)。
講師は「第四の壁」を壊す
一方で、研修講師はこの「第四の壁」を作ってはいけません。
むしろ、積極的に壁を壊し、受講生と対話をする必要があります。
これを「インタラクティブ(双方向)」なコミュニケーションと呼びます。
もし講師が、受講生の反応を無視して、台本通りに完璧なセリフを言うだけだったらどうでしょう?
受講生は「置いてけぼり」にされた気分になりますよね。
「〇〇さんはどう思いますか?」「あ、いま首を傾げましたね、分かりにくかったですか?」
このように、目の前の相手とリアルタイムで会話をし、台本(スクリプト)をその場で書き換えていく柔軟性が、講師には求められるのです。
魅力的な講義を作る方程式
ここで、研修の魅力を高めるための要素を数式で表してみましょう。
この関係性を理解すると、どこに力を入れれば良いかが見えてきます。
研修のインパクト 講師の演技力
ライブ感
またしても掛け算です。
「演技力」とは、声の大きさ、表情、立ち居振る舞いなど、プロとして見せる技術のこと。
「ライブ感」とは、その場の空気を感じ取り、受講生と対話する力のことです。
俳優のように高い「演技力」で惹きつけつつ、その場限りの「ライブ感」を大切にする。
台本はあるけれど、結末は受講生と一緒に作っていく。
これが、最高に面白い研修の正体なのです。
「演じる」ことのメリットとデメリット
講師が「自分は俳優だ」という意識(マインドセット)を持つことには、良い面もあれば注意点もあります。
メリット
- 堂々と話せるようになる「自分」として話すと緊張しますが、「先生役」を演じていると思えば、失敗への恐怖心が薄れ、堂々と振る舞えるようになります。
- プロ意識が伝わる服装や姿勢を整え、役になりきることで、受講生からの信頼感(オーラのようなもの)が生まれます。
デメリット
- 嘘っぽくなる演技が過剰になると、「なんか芝居がかった話し方だな」「心から思っていないな」と見透かされ、受講生が冷めてしまうことがあります。
- 素の自分に戻れなくなる常に「完璧な講師」を演じ続けていると、休憩時間や懇親会でも気が抜けず、講師自身が疲弊してしまうことがあります。オンとオフの切り替えが大切です。
まとめと今後の学習指針
いかがでしたか?
研修講師は、脚本のあるドラマを演じる俳優でありながら、観客を巻き込んで即興劇を作るインプロバイザー(即興演劇者)でもあるのです。
「演じる」ということは、決して悪いことではありません。
それは、受講生に最高の学びを届けるための、プロとしての優しさであり、技術なのです。
今後の学習へのステップ
もしあなたが「人前でもっと魅力的に話したい」と思うなら、次のことにチャレンジしてみてください。
好きな俳優の「目」と「間」を真似する
ドラマや映画を見るとき、セリフだけでなく、その俳優が「黙っているとき」に何をしているか観察してください。
相手の目をどう見ているか、瞬きはどうしているか、話し出す前にどれくらい息を吸っているか。
そして、鏡の前でその俳優になりきって、自己紹介をしてみてください。
「私は〇〇です」という一言だけでも、演じるつもりで言うと、声の響きが変わることに気づくはずです。
人生という舞台の主役はあなたです。
自信を持って、あなたらしい名演技を見せてください!
それでは、またお会いしましょう!
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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