【数学解説】3重の合成関数を微分するには?連鎖律は「マトリョーシカ」で攻略せよ!
こんにちは。ゆうせいです。
新人エンジニアの研修を担当されているみなさん、講義の進み具合はいかがでしょうか。機械学習やディープラーニングの基礎理論を教えていると、避けて通れないのが「微分」ですよね。
特に「誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)」の話をする際、こんな鋭い質問を受けたことはありませんか。
「先生、2重の関数なら『外側の微分 × 内側の微分』って習いましたけど、関数が3重に入れ子になっているときはどう表現すればいいんですか?」
確かに、 までは教わっても、
になると急に教科書から姿を消してしまったりしますよね。
今日は、この「3重の連鎖律(チェーンルール)」を、誰でもイメージできる「マトリョーシカ」に例えて、直感的に理解する方法を解説します。数式が苦手な新人さんでも、自信を持って計算できるようになりますよ。
「外 × 内」だけでは足りない?
まず、基本のおさらいです。みなさんがよく知っている「合成関数の微分」は、2つの関数が重なっているときのものでしたね。
そのときの合言葉は、「外側の微分 × 内側の微分」でした。
では、関数が3重になったらどうなるのでしょう。
結論から言います。合言葉はこう変わります。
「一番外側の微分 × 真ん中の微分 × 一番内側の微分」
どうでしょうか。拍子抜けするくらいシンプルですよね。
実は微分の連鎖律というのは、関数が3重になろうが100重になろうが、「外側から順番に皮を剥いていって、全部掛け算でつなぐ」という単純なルールで動いているのです。
マトリョーシカでイメージしよう
このルールを、ロシアの人形「マトリョーシカ」で想像してみましょう。
- 一番外側の大きな人形(関数
)を開けます(微分します)。
- 中にはまだ、中くらいの人形が入ったままです。
- 中くらいの人形(関数
)を取り出して開けます(微分します)。
- 中にはまだ、小さな人形が入ったままです。
- 一番小さな人形(関数
)を取り出して開けます(微分します)。
- これで最後です。
この3つの動作(微分)をすべて掛け算でつなげば、計算は完了です。
数式で見る「3段構え」の連鎖律
では、少しだけエンジニアらしく数式で確認してみましょう。文字ばかりで怖気づかないよう、分解して説明しますね。
3重の入れ子になった関数を、次のように書きます。
これを一気に微分しようとすると混乱します。そこで、中身を別の文字で置き換えて、バラバラにしてみましょう。
- 一番外側:
- 真ん中:
- 一番内側:
こうすると、それぞれの関係がスッキリ見えますね。
連鎖律の公式を使うと、全体の微分 は、それぞれの微分の掛け算になります。
これを元の関数の形に戻して表現すると、こうなります。
数式で見ると少し複雑に見えるかもしれませんが、やっていることは先ほどのマトリョーシカと同じです。
「左(外)から順番に微分して、中身はそのまま残す。それを掛け算でつないでいく」
これだけ覚えておけば大丈夫です!
メリットとデメリットを知っておこう
この「多重連鎖律」を理解することには、エンジニアにとって大きな意味があります。
メリット:AIのブラックボックスが開く
今のAIブームを支えている「ディープラーニング」は、実は巨大な「多重の合成関数」そのものです。層が深くなればなるほど、関数は何十重にも入れ子になります。
「外側から順に微分を掛けていく」という感覚がつかめれば、AIがどのように学習(パラメータの修正)を行っているのか、その仕組みが直感的に理解できるようになります。
デメリット:計算ミスとの戦い
一方で、デメリットは単純に「計算が長くなる」ことです。
項が増えれば増えるほど、書き写し間違いや、微分し忘れなどのケアレスミスが発生しやすくなります。手計算をする際は、面倒でも や
といった文字で置き換えて、一つずつ確実に処理することをおすすめします。
今後の学習の指針
いかがでしたか。
「3重の微分」と聞いて身構えていたかもしれませんが、実は「2重の微分」にもう一つ掛け算が増えただけでしたね。
最後に、これからの学習のステップをお伝えします。
この連鎖律の感覚を掴んだら、次はぜひ「計算グラフ(Computational Graph)」という考え方に触れてみてください。
これは、複雑な数式をノード(丸)とエッジ(線)の図で表して、計算の流れを可視化する手法です。今回学んだ「連鎖律」が、図の上を逆流していく信号として表現されており、ディープラーニングの実装においては必須の知識となります。
「マトリョーシカを開けるように、外から順に掛けていく」
このイメージを武器に、複雑な数式も恐れず解き明かしていってください。
それでは、またお会いしましょう。
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。
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