「失業保険」と呼ぶのはもう古い?新人社員に教えたい「雇用保険」の真の価値
こんにちは。ゆうせいです。
研修講師のみなさん、給与明細の項目を解説するとき、「雇用保険(こようほけん)」をどう説明していますか。
もしかして、「会社を辞めたときにお金がもらえる保険だよ」とだけ伝えていませんか。
もちろん、それは間違いではありません。しかし、これから希望に燃えて入社してくる新人たちに、いきなり「辞めたときの話」をするのは少し気が引けますよね。それに、雇用保険の役割はそれだけではないのです。
今日は、新入社員が「この保険、払う価値があるな」と納得し、むしろ自分のキャリアの味方だと感じてもらえるような、雇用保険の解説テクニックをお伝えします。
雇用保険は「働くための」サポーター
まず、イメージを変えるところから始めましょう。
多くの人が、雇用保険のことを昔の呼び名である「失業保険」と呼んでいます。これが誤解の元です。
これを、私は「キャリアの応援団」と呼ぶようにしています。
なぜなら、この保険は仕事を失ったときだけでなく、仕事を続けたいときや、スキルアップしたいときにも助けてくれるからです。
高校生にもわかるように例えるなら、こうです。
「転んだときに受け止めてくれるマット」の役割と、「高くジャンプするためのバネ」の役割、この2つを兼ね備えているのが雇用保険なのです。
知っておくべき3つのメイン機能
具体的に、どんなときに役立つのか。大きく分けて3つの柱で説明すると、新人さんにも伝わりやすくなります。
1. 仕事を探しているときの生活費(基本手当)
これが一番有名な機能です。いわゆる失業手当ですね。
会社が倒産したり、自分の都合で退職したりしたときに、次の仕事が見つかるまでの生活費をサポートしてくれます。
ただし、ここで強調すべきは「働く意思があるのに、仕事が見つからない人」のための制度だということです。
「しばらく働かずに遊んで暮らそう」と思っている人には支給されません。ハローワークに行って、「仕事を探しています!」とアピールする必要があるのです。
2. 仕事を休んでも収入を支える(育児・介護休業給付)
ここが最近のトレンドであり、非常に重要なポイントです。
赤ちゃんが生まれて育児休業を取るときや、家族の介護で会社を休むとき、お給料が出ないことがほとんどですよね。
そんなとき、雇用保険からお金が支給されます。
「会社を辞めずに、休んでまた戻ってくる」ためのサポートです。これがあるからこそ、安心してライフイベントと仕事を両立できるのです。これを話すと、女性だけでなく男性社員の目の色も変わりますよ。
3. スキルアップの費用補助(教育訓練給付)
これは意外と知られていない「隠しコマンド」のような機能です。
厚生労働大臣が指定した資格講座やスクールに通う場合、その費用の一部(20%から最大70%など)が戻ってくる制度です。
プログラミングや英語、簿記など、自分の市場価値を高めるための勉強を国が応援してくれるのです。これぞまさに「高くジャンプするためのバネ」ですよね。
保険料は誰がどう払うのか
さて、気になるお金の話です。労災保険は会社が全額負担でしたが、雇用保険は「会社と社員の両方」で負担します。
計算式はこのようになります。
毎月の給与総額 雇用保険料率
この保険料率は、その時々の経済状況や雇用情勢によって微妙に変わりますが、健康保険や厚生年金に比べると、負担額はかなり小さめです。
例えば、一般の事業で働く社員の負担率が だと仮定しましょう。
月給が20万円の人なら、計算はこうです。
円
たったこれだけの金額で、万が一の失業時や、育児中の数ヶ月間、数十万円から百万円単位のサポートが受けられる可能性があるのです。
こう考えると、コストパフォーマンスが非常に高い保険だと言えますね。
メリットとデメリットを知っておこう
どんな制度にも良い面と注意点があります。ここを正直に伝えることで、信頼感が増します。
メリット
生活の防波堤になる
急に会社が倒産しても、明日のご飯に困ることはありません。精神的な安定剤になります。
キャリアアップを安くできる
教育訓練給付を使えば、自腹で全額払うよりも安く資格が取れます。これを使わない手はありません。
デメリット(注意点)
もらえるまでに条件がある
入社してすぐ辞めても、手当はもらえません。基本的には、退職日以前の2年間に、12ヶ月以上働いて保険料を納めている必要があります(倒産などの場合はもっと短い期間でもOKなことがあります)。つまり、「まずは1年頑張ろう」という動機付けにもなります。
自己都合退職だと待たされる
自分から「辞めます」と言って退職した場合、ハローワークで手続きをしてから実際に手当が振り込まれるまでに、2ヶ月や3ヶ月といった「給付制限期間」があります。すぐにお金がもらえるわけではないので、貯金も大事だという教訓になりますね。
研修での上手な締めくくり方
雇用保険の話をすると、どうしても「辞めるとき」のイメージがつきまといます。
ですので、最後は必ずポジティブなメッセージで締めくくってください。
「この保険を使う日が来ないのが、一番幸せかもしれません。でも、もし新しい挑戦をしたくなったり、家族との時間を大切にしたくなったりしたとき、この保険はみなさんの強力な味方になります。だから、毎月の給与明細で引かれている数百円、数千円は、未来の自分への投資だと思ってくださいね」
このように伝えれば、単なる「天引きされる税金みたいなもの」という認識から、「自分を守る権利」へと意識が変わるはずです。
今後の学習の指針
いかがでしたか。
雇用保険は、働く私たちの人生に深く関わる制度です。
これからの学習の指針として、まずはハローワーク(公共職業安定所)のウェブサイトで「教育訓練給付制度」の対象講座を検索してみることをおすすめします。「こんな資格も対象なのか!」という発見があり、モチベーションが上がりますよ。
また、給与明細をもらったら、実際に自分の雇用保険料がいくら引かれているか計算して、料率を確認してみてください。
制度を賢く利用して、賢く働くエンジニアやビジネスパーソンを育てていきましょう。