認知的評価理論とは?新人エンジニア向けに「出来事の受け止め方で感情が変わる仕組み」を解説

こんにちは。ゆうせいです。

今回は、心理学の「認知的評価理論」について、新人エンジニア向けに解説します。

認知的評価理論とは、簡単に言うと「人は出来事そのものではなく、その出来事をどう評価したかによって感情やストレスが変わる」という考え方です。

たとえば、コードレビューでコメントが10件ついたとします。

同じ出来事でも、受け止め方によって感情は変わります。

コメントが10件ついた
        ↓
自分はダメだと評価する
        ↓
落ち込む

コメントが10件ついた
        ↓
改善ポイントを10個教えてもらえたと評価する
        ↓
前向きに対応しやすい

出来事は同じです。

しかし、頭の中での評価が違うため、感情や行動が変わります。

新人エンジニアにとって、認知的評価理論はかなり実用的です。

レビュー、障害対応、納期、発表、学習、質問、チームコミュニケーションなど、仕事のあらゆる場面で使えます。

認知的評価理論とは何か

認知的評価理論とは、人が出来事に出会ったとき、その出来事をどう意味づけるかによって感情が生まれる、という理論です。

ここでいう「認知」とは、ものごとの受け取り方、考え方、判断の仕方です。

「評価」とは、その出来事が自分にとって良いのか悪いのか、危険なのか安全なのか、対応できそうなのか難しそうなのかを判断することです。

たとえるなら、認知的評価は「脳の中の判定ロジック」です。

エンジニア向けに言えば、外部イベントを受け取ったあとに、内部で条件分岐しているようなイメージです。

出来事が発生する
        ↓
自分に関係があるか評価する
        ↓
危険か、チャンスか、問題ないか評価する
        ↓
自分に対応できるか評価する
        ↓
感情や行動が決まる

つまり、感情は単に外から押し込まれるものではありません。

出来事をどう解釈したかによって、感情の形が変わります。

新人エンジニア向けのたとえ

Webアプリケーションで考えてみましょう。

ユーザーからリクエストが届きます。

システムは、そのリクエストをそのまま処理するのではなく、条件を確認します。

ログイン済みか?
権限はあるか?
入力値は正しいか?
DBに対象データはあるか?
例外は発生していないか?

この判定によって、処理結果が変わります。

人間の心も少し似ています。

出来事が起きたとき、脳は次のように評価します。

自分に関係があるか?
危険なのか?
損をするのか?
成長の機会なのか?
自分で対応できるのか?
誰かに助けを求められるのか?

この評価によって、不安、怒り、安心、期待、やる気、落ち込みなどの感情が生まれやすくなります。

一次評価と二次評価

認知的評価理論では、出来事への評価を大きく2段階で考えると分かりやすいです。

種類意味新人エンジニア向けの例
一次評価その出来事が自分にとって何を意味するかを判断するレビューコメントは脅威か、学習機会か
二次評価その出来事に自分が対応できるかを判断する自分で直せるか、先輩に相談すれば対応できるか

一次評価は、「この出来事は自分にとってどういう意味があるのか?」という判断です。

二次評価は、「自分には対応する力や手段があるのか?」という判断です。

たとえば、レビューコメントが10件ついた場面で考えてみましょう。

評価考え方生まれやすい感情
一次評価自分の能力を否定された落ち込み、不安
一次評価コードを良くする機会だ前向きな緊張
二次評価自分では対応できない強い不安
二次評価分類して1件ずつ対応すれば進められる落ち着き、集中

出来事が同じでも、一次評価と二次評価によって感情が変わります。

ストレスが生まれる流れ

認知的評価理論は、ストレスを理解するうえでも役立ちます。

ストレスは、単に忙しいから生まれるわけではありません。

「自分には対応できないかもしれない」と評価したときに強くなりやすいです。

出来事が起きる
        ↓
自分にとって重要だと評価する
        ↓
悪い影響がありそうだと評価する
        ↓
自分では対応できないと評価する
        ↓
ストレスが強くなる

たとえば、納期が近いとします。

作業量が多くても、次のように考えられるなら、まだ落ち着いて動きやすいです。

残り作業は5件
優先順位は決まっている
2件は先輩に相談できる
今日中に3件進めれば間に合う

一方で、次のように評価すると、ストレスは強くなります。

何が残っているか分からない
全部自分でやらないといけない
間に合わなかったら怒られる
誰に相談してよいか分からない

つまり、ストレスを下げるには、出来事そのものを変えるだけでなく、「対応できる感覚」を作ることが重要です。

新人エンジニアがよく経験する認知的評価

新人エンジニアの日常には、認知的評価がたくさんあります。

場面不安になりやすい評価切り替えやすい評価
エラーが出た自分には無理だエラー文を読めば手がかりがある
レビュー指摘を受けた怒られている品質を上げるためのフィードバックだ
質問したいこんなことを聞いたら迷惑かも整理して質問すればチームの進捗にも役立つ
発表がある失敗したら恥ずかしい学んだことを整理する機会だ
納期が近いもう間に合わない残作業を分ければ優先順位を決められる

大切なのは、無理にポジティブになることではありません。

現実を見ながら、行動しやすい評価に整えることです。

「大丈夫、大丈夫」と根拠なく言い聞かせるだけでは不十分です。

何が起きていて、何ができて、何を相談すべきかを整理しましょう。

シャクター=シンガーの二要因理論との違い

前回扱ったシャクター=シンガーの二要因理論と、認知的評価理論は似ている部分があります。

どちらも、感情における「解釈」や「意味づけ」を重視します。

ただし、焦点が少し違います。

理論中心の考え方新人エンジニア向けの例
シャクター=シンガーの二要因理論身体反応と、その反応への意味づけで感情が生まれる発表前のドキドキを不安と読むか、集中と読むか
認知的評価理論出来事を自分にとってどう評価するかで感情が変わるレビュー指摘を脅威と見るか、成長機会と見るか

シャクター=シンガーの二要因理論は、身体反応の解釈に注目します。

認知的評価理論は、出来事そのものへの評価に注目します。

どちらも、エンジニアのメンタル管理やUI/UX設計に役立ちます。

ビジネス応用1:コードレビューを成長機会として評価する

コードレビューは、新人エンジニアにとって緊張する場面です。

コメントが多いと、落ち込むこともあります。

しかし、認知的評価を変えると、レビューへの向き合い方が変わります。

出来事評価感情行動
コメントが多い自分はできていない落ち込み返信を避ける
コメントが多い実務の考え方を学べる前向きな緊張1件ずつ対応する

もちろん、レビューの言い方が厳しすぎる場合は、チームとして改善が必要です。

ただ、自分の中では、レビューを「人格評価」ではなく「コード改善のための情報」と評価すると行動しやすくなります。

レビューコメントは、あなた自身への判定ではありません。

コードをよりよくするための材料です。

ビジネス応用2:エラー対応で「脅威」から「手がかり」へ変える

エラーが出ると、初心者は焦ります。

赤い文字、長いスタックトレース、英語のメッセージ。

見るだけで不安になりますよね。

このとき、エラーを「失敗の証拠」と評価すると苦しくなります。

一方で、「原因を教えてくれる手がかり」と評価すると、行動しやすくなります。

評価行動への影響
エラーは怖いもの画面を閉じたくなる
エラーは原因のヒントメッセージ、行番号、直前の変更を見る

エラー対応では、次の順番で見ましょう。

1. エラーメッセージを読む
2. ファイル名と行番号を見る
3. 最初に出ている原因を見る
4. 直前に変更した箇所を確認する
5. 入力値や設定値を確認する
6. 試したことをメモする
7. 分からなければ質問する

エラーを怖がるな。エラーはログだ!

ログは、システムからのメッセージです。

ビジネス応用3:質問を「迷惑」ではなく「前進」と評価する

新人エンジニアは、質問をためらいやすいです。

こんなことを聞いてよいのかな
先輩の時間を奪うかもしれない
自分で調べろと思われそう
分かっていないと思われるのが怖い

このように評価すると、質問できなくなります。

しかし、質問はチーム開発に必要です。

もちろん、何も調べずに丸投げする質問はよくありません。

しかし、整理された質問は、チーム全体の前進になります。

悪い評価良い評価
質問は迷惑整理された質問は進捗を早める
質問すると評価が下がる適切な質問は理解を深める
全部自分で解くべき詰まりすぎる前に相談するのも仕事

質問するときは、次の型を使いましょう。

やりたいこと:
ログイン画面で未入力時にエラーメッセージを出したいです。

起きていること:
送信すると400エラーになります。

試したこと:
inputのname属性とControllerの引数名を確認しました。

見てほしいこと:
HTMLとControllerの値の受け渡しが合っているか確認したいです。

この型を使うと、質問への不安も下がります。

ビジネス応用4:納期を「恐怖」ではなく「優先順位決定の材料」と評価する

納期が近づくと焦ります。

新人エンジニアは、残作業が多いと「全部終わらせなければ」と考えがちです。

しかし、納期は単なる恐怖の対象ではありません。

優先順位を決めるための重要な情報です。

納期への評価起きやすい行動
間に合わなかったら終わり焦って全部に手を出す
優先順位を決めるための条件重要なものから整理して進める

納期が近いときは、次のように整理します。

残作業は何か
必須作業は何か
後回しにできる作業は何か
誰に相談すべきか
いつ報告すべきか

納期を見て焦るだけでは、進みません。

納期を見て、判断しろ!

ビジネス応用5:UI/UX設計でユーザーの評価を助ける

認知的評価理論は、UI/UX設計にも役立ちます。

ユーザーは、画面を見た瞬間に、その画面を評価します。

分かりやすそう
面倒くさそう
危なそう
信頼できそう
何をすればよいか分からない

この評価によって、ユーザーの感情と行動が変わります。

たとえば、削除ボタンを押したとき、何の確認もなくデータが消えるとします。

ユーザーは「危険なシステムだ」と評価するかもしれません。

一方で、確認画面があれば、安心しやすくなります。

画面の状態ユーザーの評価改善策
エラー文が「不正です」だけ何を直せばよいか分からない修正方法を具体的に書く
保存後に表示が変わらない保存されたか不安保存完了メッセージを出す
ステップ数が分からないいつ終わるか分からない進捗やステップ表示を出す
削除確認がない危険そう確認ダイアログを出す

良いUIは、ユーザーが安心して評価できる情報を与えます。

画面は、ユーザーの認知的評価を助ける道具です。

ビジネス応用6:チーム内の言葉を整える

同じ内容でも、言い方によって相手の評価が変わります。

たとえば、先輩が新人に次のように言ったとします。

なんでまだ終わっていないの?

新人は「責められている」と評価しやすくなります。

別の言い方です。

今どこで詰まっていますか?
一緒に残作業を整理しましょう。

この言い方なら、「助けてもらえる」と評価しやすくなります。

言い方相手の評価感情
なんでできていないの?責められている不安、防御
どこで詰まっていますか?状況確認をしてくれている安心、相談しやすい
前にも言ったよね失敗を責められている萎縮
前回の内容とつなげて確認しましょう学び直せる前向きになりやすい

チーム開発では、言葉もUIです。

相手がどう評価するかを考えて伝えましょう。

認知的評価理論のメリット

認知的評価理論を知ると、次のメリットがあります。

メリット説明
感情を客観視しやすい出来事と評価を分けて考えられる
ストレス対策に使える対応できる感覚を作りやすくなる
レビューや質問に強くなる受け止め方を整えられる
UX設計に役立つユーザーが画面をどう評価するか考えられる
チームコミュニケーションが改善する相手の受け止め方を想像しやすくなる

特に新人エンジニアには、「出来事」と「自分の評価」を分けて見る習慣が大切です。

レビューコメントが多いことと、自分に価値がないことは別です。

エラーが出ることと、自分に才能がないことは別です。

出来事に貼ったラベルを、一度見直してみましょう。

認知的評価理論の注意点

ただし、認知的評価理論を使うときには注意点もあります。

注意点説明
無理に前向きにならなくてよいつらい出来事を強引にポジティブ化する必要はない
環境の問題を個人の受け止め方だけにしない過重労働や厳しすぎるレビューは改善が必要
評価を変えるだけで全ては解決しないスキル、時間、人手、仕組みも必要
相手の感情を決めつけない他人がどう評価しているかは本人に確認する
強いストレスは相談する一人で抱え込まず、上司や専門家に相談する

「受け止め方を変えれば何でも大丈夫」という考え方は危険です。

認知的評価を整えることは大切ですが、環境や仕組みを変えることも同じくらい大切です。

新人エンジニアが明日から使える実践法

認知的評価理論を仕事で使うなら、次の方法がおすすめです。

実践法やり方
出来事と評価を分ける何が起きたのか、自分がどう受け止めたのかを分けて書く
一次評価を確認する脅威、損失、成長機会、問題なしのどれとして見ているか考える
二次評価を確認する自分に対応手段があるか、誰に相談できるか考える
別の評価を考える少し行動しやすくなる見方を探す
次の一手を決める感情を整理したら、小さな行動に落とす

おすすめは、困ったときの4行メモです。

出来事:
レビューコメントが10件ついた。

今の評価:
自分は全然できていないと感じている。

別の評価:
改善ポイントを具体的にもらえた。分類すれば対応できる。

次の一手:
コメントを「すぐ直せる」「確認が必要」「質問する」に分ける。

感情が強いときほど、頭の中だけで考えないでください。

書き出せ!

書くことで、出来事と評価を分けやすくなります。

まとめ

認知的評価理論とは、人が出来事そのものではなく、その出来事をどう評価したかによって感情やストレスが変わるという考え方です。

項目内容
理論名認知的評価理論
中心の考え方出来事への評価によって感情が変わる
一次評価出来事が自分にとって何を意味するかの判断
二次評価自分に対応できるか、使える手段があるかの判断
実務での活用レビュー対応、エラー対応、質問、納期管理、UX設計、チーム会話

一言でまとめるなら、認知的評価理論は「出来事そのものではなく、出来事の受け止め方が感情を左右する」という理論です。

新人エンジニアは、レビュー、エラー、質問、発表、納期などで不安になったとき、すぐに自分を責めないでください。

まず、出来事と評価を分けましょう。

何が起きたのか
        ↓
自分はどう評価したのか
        ↓
別の評価はできるか
        ↓
自分にできる対応は何か
        ↓
次の一手は何か

この順番で整理すると、感情に飲み込まれにくくなります。

今後の学習では、認知的評価理論に加えて、ジェームズ=ランゲ説、キャノン=バード説、シャクター=シンガーの二要因理論、認知負荷、フロー理論、UI/UX心理学、ストレスマネジメントを順番に学ぶとよいです。まずは明日の仕事で、困った出来事を1つ選び、「出来事」「今の評価」「別の評価」「次の一手」の4行で書き出すところから始めてみましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。

学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。