Claude Codeの機能を、どこから教えるか:研修講師のための整理

こんにちは。ゆうせいです。

Claude Codeを新人研修に組み込もうとすると、最初に困るのが機能の多さです。スラッシュを打てば大量のコマンドが並び、環境変数も設定ファイルも複数あります。すべてを教えれば時間が足りず、絞りすぎれば使いこなせません。本記事では、Claude Codeの機能を七つの観点に整理し、研修でどの順に教えるべきかを解説します。前提として、この分野は更新が非常に速いため、具体的な数値やコマンド名は必ず公式ドキュメントで確認してください。本記事の役割は、何を教えるべきかという枠組みを提供することです。

結論:教える順序は三段階

先に全体像を示します。

第一段階では、どの環境で使うかを決めさせ、設定ファイルの仕組みを教えます。ここでつまずくと、以降がすべて空回りします。

第二段階では、精度を上げる仕組みを教えます。計画を立てさせる機能と、モデルの設定です。

第三段階では、快適に使うための機能を教えます。表示の設定や、繰り返し作業の自動化です。

この順序には理由があります。設定ファイルが整っていなければ、どんな機能も効果が半減するためです。

第一段階:土台を作る

観点1:どの環境で使うかを決める

Claude Codeには、複数の利用方法があります。おおむね次の四種類です。

ブラウザから使う方法。

デスクトップアプリから使う方法。

エディタの拡張機能として使う方法。

コマンドラインから使う方法。

研修での判断基準

受講者の属性によって、推奨するものが変わります。

コーディングを行うエンジニアであれば、コマンドライン版を推奨します。理由は二つあります。

一つ目は、機能の網羅性です。新機能が最も早く反映され、制限も少ない傾向があります。

二つ目は、エディタとの併用です。エディタのターミナル上で動かせば、変更されたファイルの差分をその場で確認できます。修正が必要な箇所をすぐ見つけて、自分で直せます。

一方、コーディングを主業務としない受講者には、デスクトップアプリから始めさせるほうが親切です。黒い画面に抵抗を感じる方は、一定数います。

なお、デスクトップアプリには、非エンジニア向けに設計された作業用のタブと、開発者向けのタブが用意されています。前者は使いやすい反面、実行できる機能が絞られています。

環境ごとの違いを教える意味

新人には、次の一点を必ず伝えてください。

環境によって、使える機能が異なる。

ある解説記事に載っていたコマンドが自分の環境で使えない、という事態は必ず起こります。そのときに、環境の違いを疑えるかどうかで、対処の速さが変わります。

観点2:設定ファイルの仕組みを理解する

Claude Codeには、常に読み込ませたい内容を書いておくファイルがあります。CLAUDE.mdという名前のマークダウンファイルです。

ここに書いた内容は、やり取りのたびにモデルへ渡されます。

コーディング規約、ビルドコマンド、ディレクトリ構成といった、毎回説明したくない前提を書いておく場所です。

二つの階層がある

ここが、研修で必ず伝えるべき点です。

このファイルには、少なくとも二つの階層があります。

一つは、プロジェクトに紐づくものです。プロジェクトのディレクトリ直下に置きます。

もう一つは、利用者に紐づくものです。ホームディレクトリ配下の設定用ディレクトリに置きます。

後者に書いた内容は、どのプロジェクトで作業していても読み込まれます。

なぜこれが重要なのか

トラブルの原因になりやすいためです。

自分のプロジェクトには何も書いていないのに、挙動がおかしい。こうした場合、利用者単位のファイルに何かが書かれている可能性があります。

新人が原因を特定できずに時間を浪費する、典型的なパターンです。

逆に、すべてのプロジェクトで共通して守ってほしいルールがあるなら、利用者単位のほうに書けばよい、という使い分けもできます。

何が読み込まれているかを確認する

現在どのファイルが読み込まれているかは、コマンドで確認できます。

/memory

このコマンドで、読み込まれているファイルの一覧が表示されます。

新人には、挙動がおかしいと感じたらまずこれを打つ、と教えてください。

階層は下にも広がる

もう一点、細かいですが有用な仕様があります。

サブディレクトリにも設定ファイルを置けます。

その場合、そのディレクトリで起動すると、そこのファイルと、上位のファイルの両方が読み込まれます。

データ分析のように、実験ごとに条件を変えたい場面では、この仕組みが効きます。実験ごとにディレクトリを分け、それぞれに異なるルールを書いておく、という使い方ができます。

自動で蓄積される記憶もある

近年、やり取りの中から自動的に情報を記録する仕組みも加わっています。

便利な反面、意図しない内容が記録されている可能性もあります。

挙動がおかしいときの確認先として、この自動記録も候補に入れておいてください。

自動生成の是非

設定ファイルを自動生成するコマンドがあります。

/init

コードベースを解析し、雛形を作ってくれます。

ただし、生成された内容をそのまま使うことについては、慎重な意見もあります。自動生成された内容の質が、必ずしも高くないという指摘です。

研修では、次のように伝えるのが穏当です。

自動生成は、出発点としては有用です。しかし、生成された内容は必ず自分で読み、コードから読み取れない情報を追記してください。なぜこの設計にしたのか、過去にどんな失敗があったのか。こうした背景は、人間しか知りません。

第二段階:精度を上げる

観点3:計画を先に立てさせる

Claude Codeには、実行はせず計画だけを立てるモードがあります。

このモードでは、ファイルの変更やコマンドの実行を行いません。こういう手順で進めます、という計画を提示するだけです。

なぜ精度が上がるのか

いきなり実装させると、方針がずれていた場合、書かれたコードがすべて無駄になります。

計画の段階でずれに気づけば、修正は文章のやり取りだけで済みます。

公式のドキュメントでは、複数の手順にまたがる実装や、コードの探索を伴う作業で有効だと説明されています。

実務では、精度が欲しい場面では常に使う、という運用をしている方もいます。

曖昧なまま進めさせない

計画モードと組み合わせて有用なのが、質問を促す仕組みです。

Claude Codeには、利用者に質問を投げかけるための機能が内蔵されています。

要件が固まっていない段階で、AIに勝手に判断させるのは危険です。質問させることで、要件が整理されます。

設定ファイルに、次のような一文を書いておく方法もあります。

利用者の入力が曖昧な場合は、勝手に判断せず、
質問を投げかけて要件を整理してください。

これにより、迷ったときに確認してくれるようになります。

研修で強調すべき点

新人は、AIに質問されることを面倒に感じがちです。

しかし、質問されずに誤った実装が出てくるほうが、はるかに面倒です。

聞かれることは良いことである、と最初に伝えてください。

観点4:思考の深さを設定する

Claude Codeには、どれだけ深く考えさせるかを調整する設定があります。

複数の段階が用意されており、深く考えさせるほど精度は上がりますが、消費するトークンも増えます。

研修で伝えるべき点

具体的な段階の名称や、既定値がどれかは、更新によって変わります。したがって、名前を暗記させる必要はありません。

伝えるべきは、次の三点です。

第一に、このような設定が存在すること。

第二に、精度が落ちたと感じたら、この設定を疑うこと。

第三に、確認と変更の方法を知っておくこと。

確認と変更の方法

コマンドから設定できます。

/effort

このコマンドで、選択肢が表示されます。

常に高い設定で使いたい場合は、環境変数で指定する方法もあります。シェルの設定ファイルに書いておけば、毎回同じ設定で起動します。

なお、環境変数による指定が、他の設定方法より優先されるとされています。

精度が落ちたと感じたときの確認手順

新人向けに、確認の順序を教えてください。

第一に、使用しているモデルを確認します。

第二に、思考の深さの設定を確認します。

第三に、コンテキストが埋まりすぎていないかを確認します。

第四に、設定ファイルに意図しない記述がないかを確認します。

この順序で見ていけば、多くの場合は原因が特定できます。

観点5:コンテキストを圧縮する

言語モデルには、入力が長くなるほど精度が落ちるという性質があります。

したがって、会話が長くなったら、履歴を整理する必要があります。

そのためのコマンドが用意されています。

/compact

これを実行すると、それまでの会話が要約され、コンテキストが圧縮されます。

情報は保持したまま、量だけを減らせます。

自動化する方法

一定の長さを超えたら自動的に圧縮する、という設定も可能です。

環境変数で閾値を指定できます。

長時間の自律的な作業をさせる場合には、この設定が特に有効です。

なお、どの程度の閾値が適切かについては、確立された基準はありません。使っているモデルの上限に対して、余裕を持った値を設定するのが一般的です。

第三段階:快適に使う

観点6:画面表示を整える

ターミナルで使う場合、表示に関する機能がいくつか用意されています。

全画面での描画

全画面表示に切り替える機能があります。

この状態では、マウス操作が使えるようになります。

具体的には、入力欄の任意の位置をクリックしてカーソルを移動できます。

また、出力された文章を選択してコピーできます。別のツールに貼り付けたいとき、あるいは分からない点を他のAIに質問したいときに便利です。

さらに、長い出力をスクロールした後、最下部に戻るためのボタンが表示されます。地味ですが、日常的なストレスを減らします。

差分表示を抑える

編集の途中経過を表示しないモードもあります。

ファイルを編集させると、変更の差分が次々と表示されます。

並列で複数の処理を走らせている場合など、途中経過を見ても意味がない場面では、これが視覚的なノイズになります。

結果だけを知りたい場合は、このモードで作業に集中できます。

状況を常に表示する

入力欄の下に、現在の状態を表示する機能があります。

使用しているモデル、コンテキストの使用量、利用の上限に対する残り。こうした情報を、常時表示できます。

なぜ研修で扱う価値があるのか

事故を防ぐためです。

何かの拍子にモデルの設定が変わっていて、重要な実装を軽量モデルで行っていた。こうした事態を防げます。

また、利用の上限を監視しながら作業できるため、突然使えなくなる事態を避けられます。

設定の仕方

この表示の設定は、やや手間がかかります。

ただし、専用のコマンドが用意されており、Claude Code自身に設定させることができます。

/statusline

このコマンドを使い、どんな情報を表示したいかを伝えると、必要な設定を自動で行ってくれます。

どんな項目が表示できるかを尋ねることもできます。

自分のツールの設定を、自分自身にやらせる。この体験は、新人にとって印象的なようです。

観点7:作業手順を再利用可能にする

最後に、最も応用範囲が広い機能を扱います。

Claude Codeには、特定の作業手順を定義しておき、繰り返し呼び出せる仕組みがあります。スキルと呼ばれるものです。

何ができるのか

実態としては、指示文とプログラムを組み合わせたものです。

しかし、単なるプログラムとの違いがあります。手順の中に、AIによる判断を組み込める点です。

たとえば、文章の中から言い直しを検出する、といった処理を考えてみてください。

同じ文字列を機械的に探すことは、プログラムでできます。しかし、意味的に同じことを繰り返している箇所を見つけるのは、プログラムだけでは困難です。

こうした判断を含む手順を、定型作業として定義できるのが、この仕組みの価値です。

研修で扱うべきか

第三段階の最後に、紹介程度で扱うことを推奨します。

理由は、すぐに使いこなせるものではないためです。

一度作って終わりではなく、何度も改善しながら育てていく性質のものです。

新人には、こういう仕組みがある、という認識を持たせるだけで十分です。実際に作るのは、業務に慣れてからで構いません。

教えるときの切り口

繰り返し行っている作業はないか、と問いかけてください。

毎回同じ指示を出している。毎回同じ手順を踏んでいる。そうした作業があれば、それが候補です。

判断を伴わない純粋な処理であれば、シェルスクリプトで十分です。

判断を伴う処理であれば、この仕組みが向いています。

この切り分けができるようになると、AIの使い方が一段深まります。

定期実行という観点

もう一つ、環境選びに関わる論点を補足します。

作業を定期的に自動実行したい場合があります。

一定時間ごとにメールを確認して、返信が必要なものを整理する、といった用途です。

この機能は、環境によって扱いが異なります。デスクトップアプリには、スケジュールを登録する機能が用意されています。

コマンドライン版でも、OSの定期実行の仕組みを使えば同様のことができますが、認証の期限切れなどで安定しない場合があります。

定期実行を業務に組み込みたい場合は、環境の選択時にこの点も考慮してください。

七つの観点を、教える順序で整理する

ここまでの内容を一覧にします。

段階観点教える内容所要時間の目安
第一段階環境の選択四つの利用方法と、機能差があること15分
第一段階設定ファイル二つの階層、確認コマンド、自動生成の扱い30分
第二段階計画モード使いどころ、質問させる仕組み20分
第二段階思考の深さ設定の存在と、確認手順10分
第二段階コンテキスト圧縮圧縮コマンド、自動化の設定15分
第三段階画面表示全画面、差分抑制、状態表示15分
第三段階手順の再利用仕組みの紹介と、判断を含む処理の切り分け20分

合計で、2時間程度の研修枠に収まります。

演習を挟むのであれば、半日を確保してください。

研修設計の注意点

注意点1:情報の鮮度を扱う

この分野は、更新が非常に速いものです。

コマンド名、設定項目、既定値。いずれも変わる可能性があります。

研修資料に具体的な数値を書き込むと、すぐに古くなります。

したがって、資料には次の二つを書いてください。

考え方と、判断の基準。

そして、公式ドキュメントの参照先。

具体的な設定値は、演習の場で受講者自身に確認させるのが確実です。

注意点2:確認する習慣を育てる

新人が最も困るのは、思ったとおりに動かないときです。

そのとき、闇雲に指示を変えるのではなく、状態を確認する。この習慣を育ててください。

読み込まれている設定ファイルを確認する。

使用中のモデルを確認する。

コンテキストの使用量を確認する。

この三つを確認するだけで、原因の大半は絞り込めます。

注意点3:出力の確認を省略させない

これは、機能の話を超えた根本的な点です。

計画を立てさせても、深く考えさせても、生成された成果物の確認は必要です。

便利な機能を教えるほど、確認を怠りやすくなります。

研修の最後に、必ずこの点を強調してください。

注意点4:他のツールとの併用も視野に入れる

一つのツールにすべてを任せる必要はありません。

計画の立案は一方のツールで行い、その計画のレビューは別のツールにさせる。こうした使い分けをしている方もいます。

ツールごとに得意分野が異なるため、組み合わせることで質が上がる場合があります。

研修では深入りする必要はありませんが、そういう選択肢もあると伝えておくと、視野が広がります。

理解度を確認する問い

研修で使える問いを挙げます。

設定ファイルには二つの階層があります。それぞれ、どのような内容を書くのが適切でしょうか。

自分のプロジェクトには何も書いていないのに、挙動がおかしい。考えられる原因を、二つ挙げてください。

計画を立てさせるモードを使うべき場面と、使わなくてよい場面を、それぞれ挙げてください。

精度が落ちたと感じたとき、どのような順序で原因を確認すればよいでしょうか。

繰り返し行っている作業を自動化する際、シェルスクリプトで足りる場合と、AIの判断が必要な場合を、どう見分ければよいでしょうか。

まとめ

Claude Codeの機能を研修で扱う際は、七つの観点に整理し、三段階に分けて教えることを推奨します。

第一段階では、土台を作ります。どの環境で使うかを決め、設定ファイルの仕組みを理解させます。設定ファイルには利用者単位とプロジェクト単位の階層があり、トラブルの原因になりやすいため、確認方法もあわせて教えてください。

第二段階では、精度を上げる仕組みを教えます。実行前に計画を立てさせるモード、曖昧な要件を質問で整理させる仕組み、思考の深さの設定、そしてコンテキストの圧縮です。特に、精度が落ちたと感じたときの確認手順は、実務で最も役立ちます。

第三段階では、快適に使う機能を教えます。全画面表示やマウス操作、編集の差分を抑えるモード、状態を常時表示する機能です。あわせて、繰り返す作業を手順として定義する仕組みを紹介します。

研修設計にあたっては、四点に注意してください。この分野は更新が速いため、資料には考え方と判断基準を書き、具体的な設定値は演習の場で確認させること。思ったとおりに動かないときに状態を確認する習慣を育てること。便利な機能を教えるほど確認を怠りやすくなるため、成果物のレビューを省略させないこと。そして、他のツールとの併用という選択肢も視野に入れておくことです。

次のステップとして、まずは自分自身の環境で、読み込まれている設定ファイルを確認してみてください。想定していないファイルが読み込まれているかもしれません。そのうえで、七つの観点のうち、自分がまだ使っていないものを一つ選び、実際に試してみてください。講師が使っていない機能は、受講者にも伝わりません。

なお、Claude Codeの仕様、コマンド名、設定項目は更新が続いています。研修の実施前には、必ず公式ドキュメントで最新の情報を確認してください。

セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。