将来の予定と直前の予定で判断が変わる理由:解釈レベル理論の仕組みと研修への応用
こんにちは。ゆうせいです。
数ヶ月先の研修には快く参加を申し込んだのに、開催日が近づくにつれて準備や移動を負担に感じてしまうことはないでしょうか。人間は、対象となる出来事との距離感によって、物事の捉え方を変化させる傾向を持っています。今回は、心理学における解釈レベル理論について解説します。
解釈レベル理論とは何か
解釈レベル理論とは、時間や空間などの心理的距離が離れている出来事に対しては抽象的で本質的な特徴に注目し、心理的距離が近い出来事に対しては具体的で付随的な特徴に注目する心理的な傾向を指します。対象を抽象的に捉える思考を高次解釈、具体的に捉える思考を低次解釈と呼びます。
高校生の学習合宿を例に挙げます。半年後に開催される合宿について考えるとき、半年後という時間的距離が遠いため、生徒は「学力が向上する」「志望校合格に近づく」といった合宿の目的や意義に注目します。この状態が高次解釈です。しかし、合宿の前日になり時間的距離が近づくと、生徒の関心は「朝早く起きる必要がある」「荷造りが手間である」「移動時間が長い」といった具体的な手順や労力へと移行します。この状態が低次解釈です。同じ出来事であっても、時間の経過に伴って注目する要素が変化する状態が、解釈レベル理論に該当します。
解釈レベル理論による不利益
心理的距離による認識の変化を考慮せずに計画や指導を行った場合に生じるデメリットを列挙します。
- 遠い未来の目標を設定する際、具体的な作業の難易度を過小評価し、実現が困難なスケジュールを組んでしまう
- 研修直前になって、受講者が課題の分量や参加の負担に直面し、学習に対する意欲が低下する
- 中長期的な方針を伝える際に細かな手順ばかりを説明し、受講者に方針の重要性が伝わらない
解釈レベル理論を研修設計に活用する利点
心理的距離に応じて人間の認識が変化する仕組みを理解し、研修の案内や目標設定に応用するメリットを示します。
- 数ヶ月先の研修を案内する際、得られるスキルや成長といった高次解釈を促す情報を提示することで、参加の動機付けを高められる
- 研修の当日に取り組む課題を説明する際、手順や必要な道具などの低次解釈に合わせた情報を提供することで、受講者の混乱を防げる
- 長期的なキャリア目標と目先の業務を結びつける際、距離の差を埋めるような対話を設計できる
距離に応じて伝え方を最適化するステップ
対象との距離感によって変化する認識のズレを防ぎ、受講者の学習を支援するためには、以下の手順で情報の見せ方を調整する手法が有効です。
1. 情報の性質を分類する
研修に関する情報を、意義や目的といった抽象的な要素と、手順や時間といった具体的な要素に分類して書き出します。
2. 時間軸に合わせて提示情報を変える
研修の数ヶ月前に行う告知では、参加する目的や将来のキャリアへの影響といった抽象的な要素を中心に伝達します。開催日が近づくにつれて、当日の持ち物や事前課題の進め方といった具体的な要素の比重を増やします。
3. 遠い未来の計画に具体性を持たせる
長期的な学習計画を立てさせる際は、数ヶ月先の行動であっても、明日行うとしたらどのような手順が必要かを想像させ、実行の難易度を正しく見積もるよう促します。
4. 目先の作業に意義を付与する
研修当日の単純な作業や反復練習に取り組ませる際は、目の前の作業が最終的な目標達成にどのように結びついているのかを改めて説明し、作業の価値を再認識させます。
人間は、遠くの出来事は輪郭だけを捉え、近くの出来事は細部まで観察する性質を持っています。まずは、次に発信する研修の案内文において、開催日までの期間に応じて目的と手順のどちらを強調すべきかを見直す手順から始めてください。時間の経過に合わせた情報提供を行うことで、受講者の意欲を維持しやすくなります。
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。

