リーダーシップとは?その種類からリーダーシップスキルを持つ人材の育成方法まで詳しく解説
IT業界で仕事をしていくためにはリーダーシップを身に着けるのが大切なため、人材育成においてもリーダーシップスキルを向上させる取り組みをしていきたいけれど、何から取り組んでよいかわからず頭を悩ませている人はいませんか?
この記事では、リーダーシップの種類からリーダーシップスキルを持つ人材の育成方法まで詳しく解説します。
リーダーシップとは?
リーダーシップは学者によってさまざまな定義づけがされていますが、組織コンサルタントのデイビッド・A・ナドラーは、リーダーシップを「ビジョンを掲げ他者の力を結集して変革を実現すること」と定義づけています。
これは、リーダーシップが次の3つの要素で成り立っているためです。
リーダーシップの要素 | 概要 | IT業界におけるリーダーシップにこれらの要素が必要な理由 |
Envisioning | ・ビジョンを提示する | ・ゴールが明確でないとチームが何を目指して進めばよいかわからなくなるため |
Empowering | ・他者の力を引き出す | ・専門分野の異なるチームメンバーがそれぞれの力を最大限発揮することで目標が達成できるため |
Enabling | ・変革を実現する | ・何かを変えたり、改善したりするのがチームの役割のため |
IT業界におけるリーダーシップで上記3つの要素が必要なのは、スキルの異なるチームメンバーが同じ目標をかかげ、顧客が何かを改善したいというニーズに応えるのが果たさなければならない使命=ミッションであるためです。
IT業界でリーダーシップを発揮するためには?
IT業界でリーダーシップを発揮するためには、具体的にどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。
前の項目でご紹介した「リーダーシップの要素」に沿って3つご紹介します。
ビジョンを提示する
リーダーシップの要素の1つとして「ビジョンを提示する」がありますが、IT業界でビジョンを提示できるようになるために、ビジョンとは何か、ビジョンを考える時に使用するフレームワークSWOT分析、ビジョンの表現方法についてそれぞれ考えていきましょう。
ビジョンとは
ハーバード・ビジネススクールの教授でリーダーシップ研究の第一人者であるジョン・P・コッター教授は、ビジョンを次のように定義づけています。
「ビジョンとは将来あるべき姿を示すもので、なぜ人材がそのような将来を築くことに努力すべきなのかを明確に、あるいは暗示的に説明を加えたものである」
企業におけるビジョンとは、企業としての展望や理想、企業がミッションを完了してどうなりたいかを示すとされますが、ジョン・P・コッター教授の定義ではビジョンには説明を加えなければならないとしています。
この説明を加える役割を持つのがリーダーで、ビジョンに向かって努力しなければならない理由をチームメンバーに明確に、また時には暗に示す必要があるとしているのです。
このことからIT業界でリーダーシップを発揮するためには、自分のチームにおける将来のビジョンを自分なりの言葉でわかりやすく説明できなければならないのがわかります。
ビジョンを考える時に使用するフレームワークSWOT分析
自分のチームにおける将来のビジョンをわかりやすく説明するためには、自社の現状を評価し分析できている必要がありますが、その時に使うと便利なフレームワークがSWOT分析です。
SWOT分析とは強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの視点で企業を評価、分析する手法のことです。
1960年~70年代にかけてスタンフォード大学で研究プロジェクトを率いたアルバート・ハンフリーによって提唱されました。
SWOT分析における4つの視点について、もう少し詳しく見てみましょう。
4つの視点 | 概要 |
強み(Strength) | 商品やサービスに好影響を与えることができる、自社における資源や特徴(内部環境) |
弱み(Weakness) | 商品やサービスに好ましくない影響を与えてしまう、自社における資源や特徴(内部環境) |
機会(Opportunity) | 商品やサービスに好影響を与えることができる、自社以外における資源や特徴(外部環境) |
脅威(Threat) | 商品やサービスに好ましくない影響を与えてしまう、自社以外における資源や特徴(外部環境) |
この4つの視点を踏まえてSWOT分析を行う手順は次の通りです。
- SWOT分析を行う目的を明確にする(この場合は自分のチームにおける将来のビジョンをわかりやすく説明する)
- 外部環境を分析する
- 内部環境を分析する
内部環境は外部環境の影響を受けやすいため、分析は外部環境から行うのが望ましいでしょう。
ビジョンの表現方法
自社のビジネスにおいて4つの視点が何なのかを明確にしたら、次はこの分析結果と整合性のある、自分のチームにおける将来のビジョンを考えます。
そしてチームの将来をわかりやすくメンバーに伝えるためには、次の4つの項目が説明できるように準備しておくとよいでしょう。
項目 | 概要 |
誰に(誰のために) | ・チーム、商品、サービスが誰のために存在しているのか |
何を(どんな価値を) | ・物ではなく「~すること」と定義する |
どのような独自能力(強み)で | ・SWOT分析で出てきた現在の強みと今後蓄積したい能力 |
どのように | ・商品やサービスの提供方法 |
IT業界でリーダーシップを発揮するためには、会社のビジョンを分析して整合性のあるチームのビジョンを考え、それをわかりやすい表現でチームメンバーに伝えるのが大切です。
他者の力を引き出す
リーダーシップの要素の1つが「他者の力を引き出す」ですが、その方法としてコーチングをご紹介します。
他者の力を引き出す方法コーチング
コーチングとは「相手の中にある答えを引き出すことで、成果の獲得に導くパートナーとしてのあり方」と定義づけることができます。
相手の中にある答えを引き出すというのは、相手に気づきを促すと言い換えるとわかりやすいでしょう。
気付きを促すことで、相手が納得して自分の行動を変えていくため、成果の獲得へと進みやすくなるのです。
IT業界においてリーダーシップを発揮する上で、コーチングが必要な理由は次の3つです。
- IT業界の仕事は知的労働で、知的労働にはY理論的アプローチ(人間は働くことが好きでうまく権限と責任を与えれば自分の創意工夫で自主的に仕事を進めるという考え方)が優位にあるため
- IT業界の技術の進歩が速く自分より技術を持ったメンバーを動かす必要があるため
- 年上の部下が増加しているため
年上の部下に何かを教えるのは難しいですが、コーチングは相手に気づきを促すアプローチをするため自然に接することができるようになります。
コーチングとティーチングの違い
ティーチングとは、上司など上の立場にある人が部下などの下の立場にある人を経験や知識に基づき、目標達成へと導く指導方法のことです。
コーチングでは答えは相手にあるのが前提ですが、ティーチングは自分にあるのが前提となるのが大きな違いと言えます。
コーチングとティーチングはどちらか一方だけを使用するのではなく、相手の成熟度に合わせて使い分けるのが望ましいでしょう。
コーチングの4STEP
コーチングには一定の流れがありますが、それを表したのがコーチングの4STEPです。
4STEP | 概要 |
ゴール | ・達成したいゴールを引き出し明確にする |
現実 | ・目標に対して現実を確認しギャップがあるのを理解してもらう |
選択肢 | ・ギャップを埋めるためにはどのような選択肢があるかできるだけ多く考えてもらう |
意志 | ・相手の意志を引き出し行動につなげる |
「ゴール」「現実」「選択肢」「意志」の順番で相手に聴き、それを傾聴することがコーチングの基本であることを覚えておきましょう。
変革を実現する
リーダーシップの要素の1つとして「変革を実現する」がありますが、その方法としてチェンジマネジメントをご紹介します。
変革を実現する方法チェンジマネジメント
チェンジマネジメントとは個人や組織を現状から目指す姿へと移行させるためのマネジメント手法です。
チェンジマネジメントは個人、プロジェクト、組織など、さまざまな単位で行えるのが特徴的だと言えるでしょう。
チェンジマネジメントの3つの要素
変革を実現するためには、チェンジマネジメントに次の3つの要素が含まれていなければなりません。
3つの要素 | 概要 |
ディスラプション(破壊) | ・チームメンバーにとって居心地の良くない状態を意図的に作り課題を感じさせる |
ビジョン | ・変革のゴール |
計画 | ・定めたビジョンを達成するためのステップ |
ディスラプションでチームに課題を意識してもらい、変革のモチベーションを維持するためにビジョンを説明し、計画をたてて少しずつ変革というゴールを目指すとイメージするとわかりやすいでしょう。
チェンジマネジメントの5つのプロセス
チェンジマネジメントには次の5つのプロセスがあります。
5つのプロセス | 概要 |
診断 | ・変革が必要かどうかを見定める段階で変革が必要な場合ビジョンもここで策定する |
戦略 | ・変革をするためのアプローチや戦略を考える段階 |
計画 | ・チームメンバーに対し変革に伴う不安や抵抗を抑え、エンゲージメントを高めるための施策やスケジュールを決める段階 |
導入 | ・計画の内容を実行して従業員の状況をモニタリングし、フィードバックを収集して対策を講じる段階 |
維持 | ・変革後にそれを維持するための確認と、必要あれば追加の対策を定着するまでし続ける段階 |
チームの変革を成功させるには、スモールステップで少しずつ変革のための計画を実行し、定着するまで根気よく対策を講じ続けるのが望ましいとわかります。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップと混同されやすい言葉にマネジメントがありますが、この2つはどのような違いがあるのかを見てみましょう。
定義 | 目標やビジョンを達成するための役割 | 必要とされるタイミング | 必要な視点 | |
リーダーシップ | ・ビジョンを掲げ他者の力を結集して変革を実現すること | ・チームメンバーの自発的な行動を促して正しい方向性へ導く | ・新たなプロジェクトの立ち上げ ・組織が停滞している時 | ・中長期的な視点 |
マネジメント | ・上の立場から必要な指示や命令をして組織を管理すること | ・効率的な方法を考えチームの活動が維持できるよう管理する | ・ビジョンが定まり目標を確実に達成したい時 | ・長期的な視点と短期的な視点 |
リーダーシップもマネジメントも、IT業界において組織を活性化し目標やビジョンを達成するためには、身に着けておきたいスキルであるのを覚えておきましょう。
セイ・コンサルティング・グループではIT業界でリーダーシップを発揮できる人材育成をサポートしています
セイ・コンサルティング・グループではIT業界でリーダーシップを発揮できる人材育成をサポートしています。
具体的には「IT技術者とDX推進者のためのリーダーシップ」という講座で「部下の育成」「動機づけ」「ビジョン提示」などについて学べるようになっています。
受講者はこの講座によって自分の目指したいリーダー像が明確になるため、少しずつ現場でリーダーシップを発揮できるようになるのです。
次世代のリーダー育成をどうすればよいか悩んでいる方は、ぜひ一度セイ・コンサルティング・グループにお声がけください。
まとめ
リーダーシップとは「ビジョンを掲げ他者の力を結集して変革を実現すること」と定義づけられ、IT業界でリーダーシップを発揮するためには「ビジョンを提示する」「他者の力を引き出す」「変革を実現する」の3つの要素を満たすのが大切です。
この記事も参考にして、ぜひリーダーシップを発揮できる人材の育成に取り組んでみてください。