組織開発とは?目的から成功した具体例まで詳しくご紹介
自社がIT業界でもっと成長を続けていくためには組織開発が不可欠だと考えているけれど、具体的にどのように進めていけばよいかわからず悩んでいる人はいませんか?
この記事では、組織開発の目的からIT企業で成功した具体例まで詳しくご紹介します。
組織開発とは?
組織開発とは、組織であることの効果や組織の健全性を高めるのを目的として働く人同士の関係性に働きかけ、組織やチームを活性化するための取り組みのことです。
1950年代にアメリカで生まれたため、英語ではOrganization Developmentと表現されますが、通称としてODと呼ばれることが多いでしょう。
組織開発とチームビルディングの違い
組織開発と混同されやすい言葉の1つにチームビルディングがありますが、チームビルディングとはチームメンバーの能力、スキル、経験を活かして目標達成できるチームを作る取り組みのことです。
チームビルディングは組織開発の手法の1つとされ、次のようなことを目的に行われます。
- 企業のビジョン(企業としての展望や理想)を浸透させる
- ビジョン達成のために必要なマインドセット(個人が持つ物の見方や考え方)を作る
- チームパフォーマンスとモチベーションの向上
- メンバー同士における関係性の強化
- 心理的安全性の担保
目標達成というゴールに向かってチームメンバー同士がお互いを尊重しあい、それぞれの能力や経験を活かして貢献できる環境を整えるのがチームビルディングの理想的な姿と言えるでしょう。
組織開発と人材開発の違い
組織開発と混同されやすい言葉に人材開発もありますが、人材開発とは従業員に対して教育や研修を行い、知識やスキルを高めることにより個人のパフォーマンスを上げる取り組みのことです。
組織開発と人材開発には次のような違いがあります。
課題の原因 | アプローチする対象 | アプローチ方法 | |
組織開発 | ・人間関係や組織における相互作用ととらえる | ・人間関係や組織における相互作用にアプローチする | ・人間関係を良くするためのアプローチをする ・組織の中や組織間の関係性にアプローチする |
人材開発 | ・従業員ととらえる | ・従業員の知識、スキル、経験、考え方にアプローチする | ・研修や面談をする |
組織開発と人材開発は、企業にとってどちらか片方だけを推進すればよいというものではなく、両方バランス良く進めていくことで成長につながるでしょう。
組織開発をしたいIT企業で役立つ7つのフレームワーク
フレームワークとは「枠組み」や「構造」を示す英単語で、ビジネスにおいては意思決定や分析、課題解決や戦略の立案などの際に共通して使うことのできる考え方を指します。
組織開発をしたいIT企業で役立つフレームワークを7つご紹介します。
ビジョン・ミッション・バリュー
ミッション・ビジョン・バリュー(以下MVVと略す)とは2002年にオーストリア出身の経営学者であるピーター・F・ドラッカーにより、著書の「ネクスト・ソサエティ」の中で提唱された言葉で、次のような意味を持ちます。
フレームワークの種類 | 言葉の意味 | 定義 | 企業で使われる場所 |
ミッション | 使命 | ・企業が果たさなければならない使命 ・企業が事業をする目的や社会の中で実現したいことを示す | ・経営理念 ・企業理念 |
ビジョン | 展望 | ・企業としての展望や理想 ・企業がミッションを完了してどうなりたいかを示す | ・経営理念 ・企業理念 |
バリュー | 価値 | ・企業や組織で共有しなければならない価値観や方針 ・従業員はバリューを基準にして行動する | ・行動指針 ・行動規範 |
IT企業がMVVを定め、組織に浸透させることで従業員はバリューを基準にして行動し、日々のミッションを達成することでビジョンに近づくことができるようになります。
MVVの策定は、スタートアップを目指すIT企業におすすめです。
手前味噌ですが、当社のMVVです。
OKR
OKRとはアメリカのインテル社で生まれた目標管理手法で、「目標と主要な成果」を示す英語のObjectives and Key Resultsの頭文字を取って名付けられました。
OKRでは企業の目標から逆算して部署や個人の目標を決めるため、1つのObjectives(目標)に対して、複数のKey Results(主要な成果)が付随するという形で成り立ちます。
組織におけるOKRの例は次の通りです。
階層 | 例 |
会社のOKR | ・会社のObjectives(目標)に複数のKey Results(主要な成果)が紐づく ・会社のKey Results(主要な成果)にチームのObjectives(目標)が紐づく |
チームのOKR | ・チームのObjectives(目標)に複数のKey Results(主要な成果)が紐づく ・チームのKey Results(主要な成果)に個人のObjectives(目標)が紐づく |
個人のOKR | ・個人のObjectives(目標)に複数のKey Results(主要な成果)が紐づく |
階層ごとに1つのObjectives(目標)に対して、複数のKey Results(主要な成果)が設置されるのでOKRを通じてピラミッド型の構成になるのがわかります。
また各階層がKey Results(主要な成果)とObjectives(目標)でつながっていることから、全体の方向性にぶれが生じにくい構造となっています。
規模の大きなIT企業ほど組織の方向性はぶれやすくなりますが、OKRを活用することで組織の方向性と従業員の方向性に大きなずれを起こしにくくなるでしょう。
タックマンモデル
タックマンモデルとは、個人の能力や経験を十分に発揮しながら個人では達成できない目標に対して積極的に取り組める組織作りを目指すチームビルディングの発展段階について、心理学の観点から解説した理論のことです。
1965年に心理学者のブルース.W.タックマン(Bruce Wayne Tuckman)によって提唱されました。
タックマンモデルではチームビルディングの発展段階を次の5段階としています。
段階 | 概要 |
形成期 (Forming) | ・チームメンバーがそれぞれに紹介される段階 |
混乱期 (Storming) | ・チームの目標に対する認識の違いがわかったり、すれ違いや対立が起こったりとモチベーションが下がりやすくなる段階 |
統一期 (Norming) | ・チームメンバー間に信頼関係が構築された段階 |
機能期(Performing) | ・チームメンバーがまとまりながらも個人が自立して能力を発揮できるためパフォーマンスとモチベーションが高くなった段階 |
散会期(Adjourning) | ・目標達成や時間の制約などでチームが解散する段階 |
IT業界ではプロジェクトごとに新たなメンバーが集まり、仕事が終われば解散するためタックマンモデルは理解しやすいフレームワークだと言えるでしょう。
チームには必ず「混乱期」があり、すれ違いや対立は起こりうるものだという共通認識をチームメンバー全員が持つことで、組織運営をスムーズにすることができます。
この「混乱期」を歓迎できるようになる研修として、セイ・コンサルティング・グループでは「ヒューマンスキル研修」の中の「チームビルディングとモチベーションアップ」を設けてあります。
研修参加者が1つのチームとなり、4つのゲーム的なアクティビティを通じて他者と交流できるので、楽しみながら学ぶことができるでしょう。
興味のある方は、ぜひ次のページもごらんください。
1.4 チームビルディングとモチベーションアップ - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
ジョハリの窓
ジョハリの窓とは自己分析に用いる心理学モデルの1つで、1955年に心理学者のジョセフ・ルフト(Joseph Luft)とハリントン・インガム(Harrington Ingham)によって提唱されました。
ジョハリの窓では自分が知っている自分と他人が知っている自分の性質を、次の4つに区分して自分を理解します。
項目 | 概要 |
開放の窓 | ・自分も他人も知っている性質 |
盲点の窓 | ・自分は知らないが他人は知っている性質 |
秘密の窓 | ・他人は知らないが自分は知っている性質 |
未知の窓 | ・自分も他人も知らない性質 |
ジョハリの窓は従業員同士の相互理解を深める効果があるので、IT業界では組織開発で重要な信頼関係の構築に役立つフレームワークだと言えるでしょう。
認知/行動ループ
認知/行動ループとは、コミュニケーションを「認知」と「行動」に分解してお互いのずれを認識し、改善するためのフレームワークです。
具体的にはコミュニケーションを「自分の認知」「自分の行動」「相手の認知」「相手の行動」の4つに分解して書き出し、共有して対話をしてみるのです。
IT業界でも従業員同士の関係がこじれてしまう場合がありますが、両者の認識のずれがどこにあるのかが明確になるので、関係の改善が期待できるのです。
マッキンゼーの7S
マッキンゼーの7Sとは、企業には3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があると考え、その7つの経営資源を基に個々の企業に最適な事業戦略を考えることのできるフレームワークです。
マッキンゼー社のコンサルタント、ウォーターマンとピーターズによって提唱されました。
7Sで示される経営資源の概要は次の通りです。
経営資源の種類 | 経営資源の項目 | 概要 |
ハードな経営資源 | 戦略(Strategy) | ・企業が掲げるビジョンに向けて具体的に立てた経営戦略 |
機構(Structure) | ・企業における組織の仕組みの特徴 | |
システム(System) | ・企業の人事評価制度、就業規則、ITシステムなど | |
ソフトな経営資源 | スタッフ(Staff) | ・企業に所属する従業員 |
経営スタイル(Style) | ・企業の経営方針や組織風土 | |
経営スキル(Skills) | ・企業の経営陣の経営能力と目標達成の原動力となるスキル | |
共通の価値観(Shared value) | ・ミッション、ビジョン、バリュー |
マッキンゼーの7Sを活用することで、自社の現状の状態を把握・分析し課題を明確にすることができるでしょう。
課題が見えたらそれに対する対策を講じて実行できるので、組織開発が効率的に進みます。
コーチング
コーチングとはコミュニケーションを通じて対象者の能力や可能性を引き出し、目標達成に向けた行動をしてもらうための手法です。
上司にコーチングの技術がある場合、部下が自分の中にある答えを見つけてそれに基づいて行動できるようになるため、指示待ち型の組織になるのが防止できるでしょう。
組織開発に成功したIT企業の具体例
組織開発に成功したIT企業の具体例を3つご紹介します。
Googleではイノベーションが生まれやすい職場環境を整えるための組織開発の1つとして、ビジョンを共有し周知しました。
チーム全員でビジョンを作るだけではなく、それを実現するための目標と主要な成果をOKRのフレームワークに基づいて決めることとしたのです。
具体的には会社、チーム、個人で四半期ごとにOKRに基づいた目標と主要な成果を定め、会社全員がビジョンに向かって行動できる体制を整えたのです。
Googleではこのようにフレームワークに基づいた組織開発をし、適切な人材を採用しその人に立ち入らず仕事を任せることでさまざまなイノベーションを生み出しています。
参考:Google re:Work 「イノベーションが生まれる職場環境をつくる」
LINEヤフー株式会社
LINEヤフー株式会社では、組織開発を進めるための人材育成の手法「1on1ミーティング」を取り入れています。
具体的には、経験を基に能力を向上させる学習サイクルである経験学習を実務の中に組み込む方法として、1on1ミーティングを週に1度30分間行うようにしました。
そして上司が部下に振り返りの時間を設け、目標達成に向けた課題を共有しどうすれば乗り越えられるかを話し合うのです。
管理職を対象にしたワークショップも実施して、経験学習と1on1ミーティングが機能しているかの内省や、クオリティーアップにも取り組んでいます。
この取り組みでLINEヤフー株式会社では従業員の潜在能力やポテンシャルを少しずつ引き出し、成果につなげているのです。
参考:Yahoo!Japan Corporate blog「部下育成の効果的な方法『1on1ミーティング』の経験学習サイクル」
ココネ株式会社
ココネ株式会社では入社時、異動時、評価の振り返り時、月次などことあるごとにアンケート調査を実施して従業員の声を集め、組織開発に活かしています。
アンケートをやりっぱなしにせず、公開し、活用し、継続することを大切に考え、PDCAサイクルを回し続けているのです。
例えば月次アンケートは従業員の状態を複合的に見る土台として位置づけられ、「職場がわくわくする場所かどうか」「心身の健康状態はどうか」「仕事は充実しているか」の3つの質問を継続的にたずねることで今の従業員の状態を把握しています。
この取り組みでココネ株式会社では従業員一人一人の状態と全体の傾向を把握し、よりよい人事施策へとつなげることができています。
まとめ
組織開発とは組織であることの効果や組織の健全性を高めるのを目的として働く人同士の関係性に働きかけ、組織やチームを活性化するための取り組みのことで、自社に合ったフレームワークを用いることでより効率的に進めることができるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ積極的に組織開発に取り組んでみてください。