「言葉」で人生を変える仕事。研修講師と作家の意外な共通点とは?

こんにちは。ゆうせいです。

みなさんは、時間を忘れて本を読みふけってしまった経験はありますか?

たった一冊の本との出会いが、その後の人生を大きく変えることもありますよね。

作家という職業は、文字だけで人の心を動かし、新しい世界を見せてくれる魔法使いのような存在です。

では、研修講師はどうでしょうか?

「講師は喋る仕事、作家は書く仕事。まったく別物じゃないか」と感じるかもしれません。

しかし、優れた研修講師ほど、自分のことを「物語を紡ぐ作家」だと捉えています。

使う道具が「ペン」か「声」かの違いだけで、やっていることの本質は驚くほど似ているのです。

今回は、研修講師と作家という「言葉のプロフェッショナル」の共通点と違いを紐解きながら、相手の心に深く刺さる言葉の選び方について学んでいきましょう。

研修講師と作家の共通点:構成(プロット)の魔力

研修講師と作家の最大の共通点。それは、話の組み立て、つまり「構成力」にあります。

作家の世界ではこれを「プロット」と呼びます。

プロットとは?

プロットとは、物語の設計図のことです。

家を建てるときに設計図なしで柱を立て始めたら、すぐに崩れてしまいますよね。

小説も同じです。「どこで主人公をピンチにさせるか」「どこで謎を明かすか」を最初に決めておかないと、読者は途中で飽きて本を閉じてしまいます。

研修もまったく同じです。

「とりあえず知っていることを全部話そう」という講師の話は、迷路のように分かりづらく、受講生を眠らせてしまいます。

「最初の10分でこの問題提起をする」

「昼休憩の前には、この希望を見せる」

「最後に、明日への行動を促す」

このように、受講生の感情の動きを計算して設計図(プロット)を描く。

これができなければ、プロの講師とは言えません。

ボキャブラリー(語彙力)の重要性

作家は、一つの場面を描写するために何通りもの言葉を探します。

「悲しい」と書く代わりに、「胸が張り裂けそうだ」と書くか、「涙で視界が歪んだ」と書くか。この選択が読者の感動を左右します。

講師もまた、言葉の選び方一つで場の空気を変えます。

「注意してください」と言うのと、「ここが運命の分かれ道です」と言うのとでは、受講生の食いつきが違いますよね。

適切な言葉を選び抜き、相手の脳内に鮮明なイメージを届ける。

その執念において、両者は共通しているのです。

研修講師と作家の相違点:リライト(書き直し)の可否

では、講師は作家と全く同じように言葉を紡げばよいのでしょうか?

ここで、非常に大きな違いが立ちはだかります。

それは、「書き直し(リライト)」ができるかどうか、です。

作家は「推敲」ができる

作家は、原稿を書き上げたあと、何度も読み返し、修正することができます。これを「推敲(すいこう)」と言います。

納得がいかなければ書き直し、完璧な状態になってから世に出します。読者は完成品しか目にしません。

講師は「一発勝負」

一方で、研修講師の言葉は、一度口から出たら消すことができません。

「あ、今の言い方は微妙だったから削除!」とはいかないのです。

その代わり、講師には「ライブでの補正」が許されています。

受講生の顔を見て「あ、伝わっていないな」と思えば、その場ですぐに別の言葉で言い換えることができます。

作家が時間をかけて推敲する作業を、講師は瞬時に、しかも喋りながら脳内で行わなければならないのです。

伝わる言葉を生み出す方程式

ここで、人の心を動かす言葉の力を、数式で表してみましょう。

言葉の選び方と、それを届ける情熱のバランスが大切です。

言葉の浸透力 = 論理的な構成 \times 感情的な修辞

ご覧ください。掛け算になっています。

「論理的な構成」とは、先ほどお話ししたプロット、つまり話の筋道のことです。

「感情的な修辞」とは、少し難しい言葉ですが、比喩(たとえ話)や強調を使って、相手の感情に訴えかけるテクニックのことです(レトリックとも言います)。

作家のように緻密に構成を練り(論理)、現場では俳優のように感情を乗せて語る(修辞)。

この両方が揃って初めて、あなたの言葉は相手の胸に深く刻まれるのです。

「作家」の視点を持つメリットとデメリット

講師が「自分は作家だ」という意識を持つことには、大きなメリットと、いくつかの注意点があります。

メリット

  • 話が分かりやすくなる「起承転結」や「伏線回収」といった物語の技術を使うことで、複雑な内容でもスルスルと頭に入るようになります。
  • 言葉に重みが出るなんとなく話すのではなく、一語一語を大切に選ぶようになるため、短い言葉でも説得力が生まれます。

デメリット

  • 独りよがりな表現になる文学的な表現や、凝った言い回しにこだわりすぎると、受講生に「キザな人だな」「何を言っているか分からない」と思われてしまいます。あくまで「分かりやすさ」が最優先です。
  • 柔軟性がなくなる事前に作ったシナリオ(原稿)が完璧すぎると、現場で予想外の質問が来たときに、台本から外れることを恐れて対応できなくなることがあります。

まとめと今後の学習指針

いかがでしたか?

研修講師は、声で物語を執筆する作家であり、その物語の主人公を受講生にする演出家でもあります。

「ただ説明する」のではなく、「言葉で世界を作る」という意識を持つだけで、あなたの講義は退屈な授業から、感動的なエンターテインメントへと進化します。

今後の学習へのステップ

もしあなたが「もっと言葉の力を磨きたい」「話の構成をうまくしたい」と思うなら、ぜひ次のことに取り組んでみてください。

  1. 目次を分析する書店に行き、売れているビジネス書の「目次」だけを読んでみてください。目次は、その本の「プロット(設計図)」そのものです。「なぜこの章が最初にあるのか?」「なぜこの順番なのか?」を考えるだけで、構成力が劇的にアップします。
  2. 書き起こしをしてみる自分が話している内容を録音し、文字に起こしてみてください(今はスマホのアプリで自動でできます)。文字にして読んでみると、「あの」「えっと」といった無駄な言葉や、話の矛盾点に気づくはずです。自分の「口癖」を客観的に見ることは、最高の推敲(リライト)練習になります。

言葉は、無料で使える最強の武器です。

さあ、あなたも今日から、言葉の魔術師を目指して一歩を踏み出しましょう!

それでは、またお会いしましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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