【割り算の“限界”とその先へ:非線形な世界をどう扱うか?】

こんにちは。ゆうせいです。
これまで、割り算が持つ力を統計や機械学習の様々な場面で見てきましたね。
- 相関 → 変数間の関係を無次元で表す
- 標準化 → 単位を取り除き、比較しやすくする
- 正則化 → 係数の影響を“抑える”ための割り算的発想
- 正規分布 → 平均からの距離を「σ(標準偏差)」という定規で測る
ここまでの世界観には、ある共通点があります。
それは、すべてが「線形(直線的)」な世界だったということ。
でも現実のデータは、そんなに素直じゃないんです。
今回は、「割り算ではうまく扱えない世界=非線形性(ひせんけいせい)」に注目し、
そのときに私たちはどんな工夫や視点を持つべきか?というお話をしていきます。
1. 割り算は“まっすぐな世界”の道具
まず最初に確認したいのが、割り算は線形性があるときに強いということです。
たとえば:
- 身長が1cm伸びるごとに体重が0.5kg増える
- 広告費が1万円増えると売上が3万円増える
このような「比例関係」が成り立つ世界では、**「傾き=変化量の比率」**という形で割り算がとても有効です。
2. 非線形な関係ではどうなる?
ところが現実のデータでは:
- あるところまでは効果があるが、それ以上は効果が薄れる
- 少しの違いで結果がガラッと変わる
- 階段状にしか変化しない(例:合格/不合格)
といった非線形な現象が頻繁に現れます。
例:
- 人の集中力は「睡眠時間」との関係が山型になる
- 売上は広告費に対して最初は急増、後半は鈍化
- 背の高さと「バスケ部に入る確率」は段階的に変化する
こうなると、「1単位あたりにどれくらい変化するか?」という直線的な割り算の発想だけでは対応できません。
3. 対処法①:非線形モデルを使う
このような非線形な関係に対しては、非線形な数式やモデルを導入する必要があります。
たとえば:
● 多項式回帰(Polynomial Regression)
→ 線形回帰では捉えきれない曲線的な関係を表現できます。
● ロジスティック回帰(Logistic Regression)
→ 「0か1か」のような分類タスクでも、滑らかに確率を出力できます。
ここでも登場するのは割り算の仲間=逆数や指数関数です!
4. 対処法②:特徴量エンジニアリング
非線形性に対応する別の方法として、「特徴量の工夫」があります。
たとえば:
- ログ変換(指数的なスケールを平坦化)
- 交互作用項の追加(x₁×x₂ のような掛け算)
- カテゴリ変数の分割(One-Hot Encoding)
- ビニング(連続値を区切る)
これらはすべて、単純な線形な割り算の世界では扱いきれない“かたち”を変える工夫です。
5. 対処法③:カーネル法で「別の空間」に移す
機械学習の中でも洗練された方法の一つに「カーネル法」があります。
とくに有名なのが サポートベクターマシン(SVM) です。
ここでは、非線形な特徴を持ったデータを、一度“高次元空間”にマッピングし、
そこで線形な境界(つまり割り算的なロジック)を使って分類します。
現実では曲線でしか分けられない問題も、
「違う視点で見れば一直線で分けられる」ことがあるんです!
6. 割り算の限界とは「前提条件」の限界
ここまでで明らかになってきたのは、
割り算が便利なのは、次のような前提が成り立つときだということです:
前提 | 割り算が有効な理由 |
---|---|
変化が比例している | 単位あたりの変化が一定 → 比が意味を持つ |
関係が滑らか(連続的) | 微分や平均などが安定的に定義できる |
データが線形的に分布している | 傾き・距離・位置が定義しやすい |
これらの前提が崩れたとき、割り算そのものではなく、そのままの割り算では意味が通じなくなるんですね。
7. じゃあどうすればいい?
結論から言うと、
「割り算の構造を保ちながら、空間やスケールを変える」
というアプローチが必要になります。
- 関数変換(log、sqrt、expなど)
- 特徴量の非線形変換
- 多項式回帰やカーネル法
- 分類問題では確率・オッズ比による評価
どれも、割り算の考え方を拡張・再設計することで非線形性に対応しているんです。
まとめ
- 割り算は「直線的・比例的な関係」を扱うのが得意
- 現実のデータは非線形性が多く、割り算だけでは表現できないことも
- 非線形関係には、多項式・ロジスティック関数・カーネル法などで対応
- 大切なのは「比で考える」視点を保ちつつ、構造を拡張する発想力
次回予告:「割り算と情報理論:エントロピーとKLダイバージェンスの深い意味」
次回は、統計や機械学習の中でも情報の量や違いを測るときに使われる、
エントロピーやKLダイバージェンスと割り算の関係を解説します!
「確率で割る?」「ログで差をとる?」「分布の違いをどう測る?」
情報理論の基礎から応用までを、視覚的にわかりやすくお届けします!
どうぞお楽しみに!
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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