【初心者向け】AIはどうやって「コツ」を掴む?方策勾配定理を完全理解する研修講義
こんにちは。ゆうせいです。
自転車に初めて乗れた日のことを覚えていますか?
最初はグラグラして怖いけれど、何度も転びそうになりながら「ハンドルをこう切れば倒れない」という感覚を体が覚えていきますよね。言葉で説明するのは難しいけれど、確かに存在する「成功のコツ」。
実はAIも、これと同じように試行錯誤しながら学習を進めます。
今日は、その学習プロセスの中心にある非常に重要な理論、方策勾配定理について解説します。名前だけ聞くと難しそうで逃げ出したくなるかもしれませんが、安心してください。高校生でもわかるように、直感的な言葉で紐解いていきます。
方策(ポリシー)とはAIの「性格」である
まず、専門用語を一つだけ覚えてください。それが方策(ポリシー)です。
これは、AIが「ある状況でどんな行動をとるか」を決めるルールブックのようなものです。数式ではよくギリシャ文字の (パイ)を使って表されます。
例えば、スーパーマリオのようなゲームを想像してください。
目の前に穴があるとき、「ジャンプする」のか「ダッシュする」のか。この判断を下す確率を決めているのが方策です。
- 慎重な方策:穴の手前で止まる確率が高い
- 勇敢な方策:思い切ってジャンプする確率が高い
強化学習の目的は、この「方策」を調整して、最終的にゲームクリア(報酬を最大化)できる最強の性格を作り上げることなのです。
どうやって「最強の性格」に育てるのか
では、どうすればAIを賢く育てられるでしょうか。
答えはシンプルです。「良い結果が出た行動を褒めて、もっとやるように仕向ける」のです。
あなたが犬に「お手」を教える場面を想像してみてください。
たまたま犬が手を出したときに餌をあげると、犬は「手を出せば良いことがある!」と学習し、次から積極的に手を出すようになりますよね。
これを数学的に行うのが方策勾配法です。
- AIに行動させる。
- 結果が良かったら、その行動を選んだ確率(方策のパラメータ)を少し上げる。
- 結果が悪かったら、その確率を少し下げる。
この「少し上げる・下げる」の調整量を計算するための数式が、今回紹介する定理なのです。
方策勾配定理を日本語で翻訳してみよう
ここから少しだけ数式の話になりますが、アレルギー反応を起こさないでくださいね。数式は言葉に直すと驚くほど単純です。
AIのパラメータ を更新する式は、概念的に書くと以下のようになります。
新しいパラメータ 今のパラメータ
学習率
勾配
この式の最後にある「勾配」こそが、パラメータをどの方向に動かせばいいかを示す矢印です。方策勾配定理は、この勾配を次のように計算できると教えてくれます。
勾配 期待値 [ 行動のスコア
確率の変化率 ]
少し補足しましょう。
- 行動のスコア(Q値など):その行動をとった結果、どれくらい良いことがあったか。
- 確率の変化率(
):その行動をとりやすくするために、パラメータをどう動かせばいいか。
つまり、この定理が言っているのはこういうことです。
「すごく良かった行動(スコアが大)なら、その行動が出る確率をグンと上げなさい。微妙だった行動なら、あまり変えなくていいよ。」
どうでしょう。当たり前のことを言っているように聞こえませんか?
そう、難しい数式も、実は私たちの直感と同じことを記述しているだけなのです。
メリットとデメリットを知っておこう
この手法は万能に見えますが、もちろん弱点もあります。特徴をしっかり理解しておきましょう。
メリット
- 滑らかな動作が得意:ロボットのアーム制御など、数値が連続的に変化する行動を学習させるのに向いています。
- 確率的な戦略が取れる:じゃんけんのように、あえてランダムに動いて相手を惑わすような高度な戦略も学習できます。
デメリット
- 学習が遅い:たくさんの失敗(データ)を積み重ねないと、なかなか賢くなりません。
- 局所解に陥りやすい:たまたま上手くいっただけの変な行動を「これが正解だ!」と思い込んでしまい、そこから抜け出せなくなることがあります。
今後の学習の指針
方策勾配定理は、AIが経験から学ぶための基礎中の基礎です。
ここを理解できれば、さらに進化した強力なアルゴリズムへの扉が開かれます。
次に学ぶべきキーワードを挙げておきますね。
- REINFORCEアルゴリズム:今回学んだ定理をそのまま実装した、一番シンプルな形です。
- Actor-Critic(アクター・クリティック):行動する役(Actor)と、それを採点する役(Critic)に分かれて学習する、より効率的な手法です。
まずは、Pythonなどのプログラミング言語を使って、簡単な迷路を解くAIを作ってみることをおすすめします。「理論」が「動き」に変わる瞬間は、本当に感動的ですよ!
もし実装方法でつまづいたり、数式の意味がわからなくなったりしたら、いつでも聞いてください。一緒にAIの学習を楽しんでいきましょう!
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。