【講師向け】SSD・YOLO・Faster R-CNNはどう違う?物体検出の「御三家」を初心者に直感的に解説する方法
こんにちは。ゆうせいです。
前回の記事では、SSDという技術単体にスポットライトを当てましたが、実際の研修現場では、受講生からこんな鋭い質問が飛んでくることがあります。
「先生、SSDが良いのは分かりましたが、YOLOとかFaster R-CNNとは何が違うんですか?」
「結局、どれを使えばいいんですか?」
この質問、ドキッとしますよね。
物体検出の世界には、いくつかの有名なライバルたちが存在します。初心者が混乱しやすいこの「ライバル比較」こそ、講師の腕の見せ所です。
今日は、専門的な比較表を丸暗記させるのではなく、それぞれの技術を「キャラクター」に見立てて、誰でも直感的に使い分けが理解できる教え方をご紹介します。
そもそも「2段階」か「1段階」か
まず、個別の技術に入る前に、物体検出には大きく分けて2つの流派があることを伝えましょう。
- 2段階(Two-stage)派: 「あそこに何かありそうだ」と目星をつけてから、「それは何か?」と詳しく調べる慎重派。
- 1段階(One-stage)派: 「あそこに人がいる!」と、発見と特定を同時に行う即断即決派。
これを、日常生活に例えてみましょう。
生徒さんにこう問いかけてみてください。
「あなたが無くしたコンタクトレンズを探すときと、待ち合わせ相手を人混みで探すとき、探し方は同じですか?」
- コンタクトレンズ(2段階派): 床全体をくまなく見て、「お、何か光ってる(候補検出)」と近づき、「なんだ、ゴミか(クラス分類)」と確認しますよね。これは正確ですが時間がかかります。
- 待ち合わせ相手(1段階派): ざっと景色全体を見て、「あ、いた!」と瞬時に判断しますよね。これは速いですが、見間違いもたまにあります。
この「正確さ」と「速さ」のトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たずの関係)を理解してもらうことが、スタートラインです。
物体検出界の「御三家」キャラクター図鑑
では、ここから主要な3つの技術(Faster R-CNN、YOLO、SSD)をキャラクター化して紹介します。
1. 丁寧で慎重な「Faster R-CNN」
これは「2段階派」の代表格です。
彼は、画像の中に「物体がありそうな場所」をたくさんリストアップしてから、その一つ一つを丁寧に鑑定します。
特徴
- 精度: 非常に高い(
)
- 速度: 遅い(
)
- 例え: 顕微鏡を持った研究者。絶対に病気を見逃してはいけない「医療画像診断」などで活躍します。
2. 爆速の直感型「YOLO」
これは「1段階派」のスターです。
YOLO(You Only Look Once)という名前の通り、「一度見るだけ」で全てを終わらせます。画像をグリッド(格子状)に区切って、各エリアを同時に判定します。
特徴
- 精度: 少し粗いことがある(
)
- 速度: 非常に速い(
)
- 例え: 動体視力の良いスポーツ選手。一瞬の判断が必要な「自動運転の歩行者検知」などで人気です。
3. バランスの達人「SSD」
そして我らが SSD です。
YOLOと同じく「1段階派」で速いのですが、YOLOの弱点を克服しようとした工夫が詰まっています。
初期のYOLOは、小さな物体を見つけるのが苦手でした。そこでSSDは、大きさの違う複数のフィルター(特徴マップ)を使ってチェックする仕組みを取り入れました。
特徴
- 精度: Faster R-CNNには負けるが、YOLO(初期)より良い傾向
- 速度: Faster R-CNNより圧倒的に速く、リアルタイムで動く
- 例え: 複数のカメラを使いこなす敏腕警備員。
なぜ SSD はバランスが良いのか?
ここで、生徒さんが一番つまずくポイント、「SSDはどうしてYOLOより小さな物体に強いの?」(※YOLOのバージョンによりますが、概念として)を解説しましょう。
SSD の最大の特徴は「Multibox(マルチボックス)」という名前に隠されています。
生徒さんに、こんな質問をしてみてください。
「遠くの山を見るときと、手元のスマホを見るとき、目の使い方は同じですか?」
SSD は、画像の解析をするときに、異なる解像度の画像(特徴マップ)を何枚も用意して、それぞれで物体を探します。
- 大きい画像(細かい部分が見える)
小さな物体を探す担当
- 小さい画像(全体がぼんやり見える)
大きな物体を探す担当
このように、「大小さまざまな枠(ボックス)を用意して、それぞれのサイズが得意な層に探させる」という分業体制をとっているのです。だから、速いのに小さなものも見逃しにくいんですね。
結局、どう選べばいいの?
最後に、生徒さんが一番知りたい「選び方」の指針を示しましょう。
以下の基準を黒板に書くイメージで伝えてください。
- 絶対にミスが許されない、静止画の解析なら?
間違いなく Faster R-CNN です。レントゲン写真を見るのに、0.1秒である必要はありませんよね。
- とにかくリアルタイム性重視、スマホで動かしたいなら?
SSD や YOLO の出番です。防犯カメラや自動運転など、1秒遅れると事故になる場面です。
- SSD と YOLO はどう使い分ける?
実はここが一番難しいところです。最近のYOLO(v5, v8など)は非常に進化しており、精度もSSDを上回ることがあります。ですので、初心者にはこう伝えましょう。「基本的な仕組みを学ぶなら構造が綺麗な SSD。最新の実装で手軽にアプリを作りたいならコミュニティが活発な YOLO」
今日のまとめ
いかがでしたでしょうか。
アルゴリズムの優劣を語るのではなく、「適材適所」であることを伝えるのがポイントです。
- Faster R-CNN は「慎重な研究者(精度重視)」
- YOLO は「直感的なスポーツ選手(速度重視)」
- SSD は「大小の視点を持つバランス型警備員」
こうしてキャラクター化しておけば、今後新しいアルゴリズムが出てきても「これはどのタイプかな?」と考える土台ができます。
次回は、この中の「YOLO」を使って、実際に自分のスマートフォンを「AIの目」に変える実験の準備についてお話しします。理論が分かれば、実践はもっと楽しくなりますよ。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。