【80:20の真実】パレートの法則とべき分布の違いとは?世界の不平等を数式なしで直感的に理解する
こんにちは。ゆうせいです。
あなたは日常生活で「世の中、なんだか不平等だなあ」と感じたことはありませんか?
たとえば、クラスの人気者数人にバレンタインのチョコが集中したり、一部の富裕層が世界の富の大半を持っていたり。実は、こうした「偏り」には、ある明確な数学的ルールが隠されているのです。
今日は、ビジネスや統計学でよく耳にする「パレートの法則」と、その親玉ともいえる「べき分布」について、一緒に紐解いていきましょう。難しい数式を覚える必要はありません。世界の仕組みを覗くメガネを手に入れるつもりで、リラックスして読んでみてくださいね。
パレートの法則とは?(80:20の魔法)
まずは、もっとも有名な「パレートの法則」からお話ししましょう。別名「80:20の法則」とも呼ばれます。
これは、「結果の80%は、全体の20%の要素によって生み出されている」という経験則のことです。
想像してみてください。あなたはイタリアの経済学者、ヴィルフレド・パレートです。ある日、庭のエンドウ豆を観察していて、ふと気づきます。
「おや? 収穫できた豆の80%は、実は植えたサヤのうちの元気な20%から採れているぞ」
これを人間に当てはめてみたらどうでしょう?
「なんと! 国の富の80%を、上位20%の人たちが独占しているじゃないか!」
これが発見のきっかけでした。現代でも、この法則はいろいろな場面で見られます。
- 売上の80%は、上位20%の優良顧客が生み出している。
- 仕事の成果の80%は、費やした時間の20%(集中した時間)で決まる。
- スマホを使っている時間の80%は、インストールしたアプリのうち上位20%しか使っていない。
どうですか? 思い当たる節がありませんか?
パレートの法則は、全体を見渡したときに「どこが重要か」を教えてくれる、優れたスポットライトのような存在なのです。
べき分布とは?(不平等の正体)
さて、ここからが少し深掘りです。「べき分布(べきぶんぷ)」という言葉を聞いたことはありますか?
パレートの法則が「現象」を表すキャッチコピーだとしたら、べき分布はそれを生み出している「数学的な舞台装置」のことです。
高校生の皆さんが習う「正規分布」を思い出してください。テストの点数や身長のように、平均値の周りに人が集まっている山形のグラフですね。あれは「みんな大体同じくらい」という平等な世界です。
一方で、べき分布の世界はまったく違います。「ごく一部の巨大な勝者」と「大多数のその他」で構成される世界なのです。
これを数式風に表現すると、次のような関係になります。
規模 頻度
一定
あるいは、グラフの縦軸と横軸の関係で言うとこうなります。
ある事象の発生確率 その規模
あっと、数式アレルギーが出そうになりましたか? 大丈夫です。もっと簡単に言い換えましょう。
「とてつもなく大きなものは、めったに起きないけれど、確実に存在する」
たとえば、地震の大きさ。震度1の地震はしょっちゅう起きますが、震度7の巨大地震はめったに起きません。でも、起きるときは起きます。
ウェブサイトのアクセス数もそうです。GoogleやYahoo!のような巨大サイトはごくわずかで、ほとんどのサイトはアクセスが少ない。
このように、極端な偏りがあるグラフの形のことを「べき分布」と呼びます。そして、この「べき分布」に従っているデータの一部(上位の偏っている部分)を切り取ってわかりやすく説明したのが、先ほどの「パレートの法則」なのです。
2つの共通点は「不平等」であること
この2つ、似ているようで混乱しますよね。まずは共通点から整理しましょう。
最大の共通点は、「世の中は平均的ではない」と認めている点です。
身長や体重の世界(正規分布)では、身長3メートルの人間はいませんし、体重が平均の100倍ある人もいません。
しかし、資産やフォロワー数の世界(べき分布・パレートの法則)では、平均の100倍、1000倍を持つ「モンスター」が存在します。
どちらも、「少数の要素が全体に巨大な影響を与えている」という現実を説明している点では、同じチームメイトと言えますね。
決定的な違いは「視点」にあり
では、どこが違うのでしょうか? ここが今日一番のポイントです。
1. 経験則か、数学的定義か
パレートの法則は、あくまで「経験則」です。「だいたい世の中、8対2くらいになることが多いよね」という、ざっくりとしたルールのことです。厳密に数式で証明するというよりは、ビジネスの現場で使う合言葉のようなものです。
一方、べき分布は「確率分布」という厳密な数学用語です。データ全体がどのようなカーブを描いているかを示す、数式で定義されたモデルです。
2. 注目している範囲
パレートの法則は、主に「上位(ヘッド)」に注目します。「重要な20%はどこだ? そこに集中しろ!」と教えてくれます。
対して、べき分布は「下位(ロングテール)」も含めた全体像を見ます。「上位はすごいけれど、下位に広がる無数の小さな存在も、全部合わせると無視できない力を持つよね」という視点も提供してくれるのです。Amazonが、本屋さんには置けないようなマイナーな本(ロングテール)を大量に売って利益を上げているのは、べき分布の性質をうまく利用した例ですね。
メリットとデメリットを知って使いこなそう
この2つの概念を知っておくことには、どんな良いことがあるのでしょうか。
メリット:効率化の鬼になれる
「全部頑張らなくていい」と気づけることが最大のメリットです。
テスト勉強で全範囲を均等に勉強するより、出題される頻度が高い「重要な20%」の単元を完璧にするほうが、点数は効率よく上がりますよね?
限られた時間やお金をどこに投下すべきか、優先順位をつける達人になれます。
デメリット:見落としのリスク
逆に、「重要な20%」ばかり見ていると、残りの80%を切り捨ててしまう危険があります。
パレートの法則を信じすぎて「売上の低い商品はいらない!」と切り捨ててしまったら、実はそのマイナー商品を目当てに来ていたコアなファンまで失ってしまうかもしれません。
「80対20」はあくまで目安であり、絶対の真理ではないことを忘れないでください。
今後の学習の指針
いかがでしたか?
「パレートの法則」はビジネスの現場で役立つ実践的なツール、「べき分布」はその背後にある自然界や社会の数理的な仕組み、というイメージがつかめたでしょうか。
もし、この話にワクワクしたなら、次は「ネットワーク科学」や「統計学」という分野を覗いてみてください。
「なぜ富は偏るのか?」「なぜ流行は生まれるのか?」といった問いに対して、より科学的な答えが見つかるはずです。
世の中の不平等を嘆くのではなく、そのルールを知って賢く生き抜く。そんな第一歩を、今日ここから踏み出してみませんか?
それでは、またお会いしましょう!
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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