人的資本経営のトップランナー事例から学ぶ!IT育成担当者が知っておくべき戦略と実践
こんにちは。ゆうせいです。
企業の成長を支える源泉は何でしょうか?
最新の調査と事例が示す答えは明快です――それは「人」です。
今回は「人的資本経営コンソーシアム第2期」レポートをもとに、IT業界の育成担当者が押さえるべきトレンドや先進企業の実践例をやさしく、具体的に解説していきます。
人的資本経営とは? ― 人材は「資源」ではなく「資本」
人的資本とは?
人的資本とは、従業員が持つスキル、経験、思考力、価値観など、会社の将来を形作る「無形の資産」のことです。
これを単なる“コスト”ではなく、未来の収益を生み出す“投資対象”として捉えるのが人的資本経営の基本姿勢です。
調査結果から見えてきた3つの重要課題
2024年の人的資本経営調査では、特に次の3つの課題が浮き彫りになりました。
① 取締役会の関与と役割の明確化
IT業界においても、人材戦略を「経営の話」として位置づけることが求められています。
アステラス製薬や出光興産では、人的資本のKPIを取締役会がモニタリングする仕組みを構築しており、成果指標に「エンゲージメントスコア」なども取り入れています。
例え話:取締役会が人材戦略に関心を持たないのは、車にナビを付けずに高速道路を走るようなもの。どこへ向かうべきかが見えず、リスクも高まります。
② KPIの設定と現状ギャップの把握
多くの企業が「必要な人材はわかっているが、どう測るかが課題」と回答。
セイコーエプソンでは、理想と現実(As is - To be)のギャップを可視化し、リスキル施策に反映しています。
数式で示すなら:
- ギャップ = 理想の状態 − 現在の状態
- ギャップ = To be − As is
③ 人事部門のケイパビリティ(能力)の強化
「人材育成=人事の仕事」という構図から脱却し、経営戦略と連動する人事部門のスキルが問われています。
NTTでは、グループ全体で人材情報を統合管理し、意思決定に活かす仕組みを構築しています。
IT育成担当者が参考にすべき先進事例
ケース① メルカリのリスキル戦略
- 全社員が「スキルマップ」をもとにキャリア開発計画を立てる。
- 外部教育機関と連携したオンデマンド研修も整備。
ケース② 富士通の「社内副業制度」
- 社員が別部門で“副業”を経験できる制度を導入。
- 自発的な学びを促進し、社内イノベーションにも貢献。
ケース③ 日立製作所の人的資本KPIツリー
- 経営戦略に紐づけてKPIを設定し、HR施策に反映。
- たとえば、「Lumada売上 × デジタル人材の貢献度」を測定。
IT人材育成の現場で今すぐ使える4つのポイント
やること | なぜ重要? | 実践例 |
---|---|---|
1. CHROと現場をつなぐ定例会を設ける | 現場ニーズと経営戦略のすり合わせ | NTTでは月15回の1on1を実施 |
2. As is-To beのギャップをスキル単位で可視化 | リスキルの優先順位が明確になる | セイコーエプソン |
3. KPIにストーリーを持たせて開示 | 投資家・社員からの信頼構築 | 日清食品、日立製作所 |
4. 人事だけでなく経営・IRも巻き込む体制 | 施策の実行力が高まる | 富士通の人的資本報告 |
課題をチャンスに変える ― 成功の鍵は「見える化」と「対話」
人的資本経営を進めるには、数値で現状を把握し、戦略とつなげる“橋”を架ける必要があります。
それは難しそうに見えるかもしれませんが、既に多くの企業が工夫しながら一歩ずつ進んでいます。
あなたの会社では、誰が、何を、どうやって学び直しているでしょうか?
まずは、そこから“見える化”を始めてみませんか?
最後に ― 今後学ぶべきテーマ
今後さらに人的資本経営を深化させていくために、以下のテーマについても深掘りしていきましょう!
- 「人的資本KPI」の選定と評価基準の設計法
- スキルベース評価制度の実装と運用の勘所
- 生成AIを活用した社内人材マッチングの最前線
投稿者プロフィール

- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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