土地の値段は4つある?エンジニアのための「土地評価額」算出アルゴリズム
こんにちは。ゆうせいです。
新人エンジニアのみなさん、突然ですが質問です。あなたが今持っているそのスマートフォン、いくらでしたか?
「10万円くらいかな」とすぐに答えられますよね。家電や車には「定価」や「市場価格」という明確な一つの値段があります。
しかし、土地の世界はそう単純ではありません。なんと、たった一つの土地に対して、4つ(場合によっては5つ)もの異なる値段がついているのです。
システム開発に例えるなら、一つのデータオブジェクトに対して、管理者用、ユーザー用、API用、監査用と、アクセスするインターフェースによって返ってくる値(Value)が違うようなものです。
「なんでそんな複雑な仕様なの?」と思いますよね。でも、これにはちゃんと理由があるんです。
今回は、将来マイホームを買うときや、実家について考えるときに必ず役立つ「土地の評価額」の仕組みについて、エンジニアの皆さんに馴染みのある言葉を交えながら解説していきます。
基本仕様:一物四価(いちぶつよんか)
土地には「一物四価」という原則があります。一つの物に4つの価格がある、という意味です。
これは、土地を評価する「目的」と「担当者(省庁)」が違うために起こります。それぞれの役割を見ていきましょう。
- 実勢価格(時価):実際に売り買いされる値段
- 公示地価(地価公示価格):国が決めた標準的な値段
- 相続税路線価:相続税を計算するための値段
- 固定資産税評価額:毎年の税金を計算するための値段
これらはバラバラに決まっているわけではなく、ある法則(アルゴリズム)に基づいて連動しています。詳しく見ていきましょう。
4つの価格の役割と決まり方
1. 実勢価格(時価)= ライブデータ
これは、実際に不動産市場で取引される価格です。「駅近だから高い」「形が悪いから安い」といった、市場の需要と供給によってリアルタイムに変動します。
システムで言えば、負荷状況によって変動する「実効スループット」のようなものです。売り手と買い手の合意で決まるため、必ずしも理論値通りにはなりません。
2. 公示地価 = ベンチマーク
国土交通省が毎年発表する、「この土地はこれくらいの価値がありますよ」という公的な標準価格です。
これは、土地取引の指標(ベンチマーク)となる数値です。実勢価格は変動が激しいので、国が「正常な価格」として定点観測したデータを提供しているわけです。ニュースで「銀座の地価が上がりました」と報じられるのは、だいたいこの価格のことです。
3. 相続税路線価 = 相続税計算用パラメータ
国税庁が発表する価格です。その名の通り、親から土地を相続したときや、生前贈与を受けたときにかかる税金を計算するために使われます。
特徴的なのは、土地そのものではなく「道路」に値段がついていることです。「この道路に面している土地は、1平方メートルあたり◯◯円」という形で設定されています。
4. 固定資産税評価額 = ランニングコスト計算用
市町村が決定する価格です。土地を持っているだけで毎年かかる「固定資産税」や「都市計画税」を計算する基準になります。
これは3年に1回、「評価替え」というアップデートが行われます。
エンジニア必見!価格算出のアルゴリズム
さて、ここからが本題です。これら4つの価格は、実は「公示地価」を基準(マスターデータ)として、一定の比率で計算できるようになっています。
この比率さえ覚えておけば、一つの数字から他の価格を推測(リバースエンジニアリング)することができます。
定数定義
基準となる価格 公示地価(100%とする)
計算式
相続税路線価 公示地価 0.8
固定資産税評価額 公示地価 0.7
つまり、国が決めた標準価格に対して、相続税評価額は「8掛け」、固定資産税評価額は「7掛け」の水準になるよう設定されているのです。
例えば、公示地価が1億円の土地があったとします。
相続税評価額 8,000万円
固定資産税評価額 7,000万円
となります。
なぜ安く設定されているのか?(安全率の考慮)
「実際の価値より安く評価してくれるの?」と思ったあなた、鋭いですね。
相続税や固定資産税は、現金で支払う必要があります。もし、土地の価格が急暴落した年に、高い時の価格で税金を請求されたら、納税者はたまりませんよね。
そのため、地価の変動リスクを吸収するための「バッファ(安全率)」として、あらかじめ市場価格よりも低めに設定されているのです。システム設計でいうところの、ピーク時の負荷を見越してリソースに余裕を持たせておくのと似ていますね。
評価額制度のメリット・デメリット
この複雑なシステムには、メリットとデメリットが存在します。
メリット
- 公平性が保たれる時価(実勢価格)は「売り急ぎ」などで不当に安くなることがありますが、公的な評価額を使うことで、誰に対しても公平に課税できます。
- 税金の予測が立つ「7掛け」「8掛け」というロジックが決まっているため、土地を買う前におおよその税金額をシミュレーションできます。
デメリット
- 乖離(かいり)が発生するバグがある都心部など人気のエリアでは、実勢価格が暴騰しすぎて、公示地価の何倍もの値段で取引されることがあります。逆に田舎では、評価額より安くても売れないことがあります。計算式と現実にズレが生じることがあるのです。
- 縦割り行政の弊害国交省、国税庁、市町村と、管轄する役所が違うため、データを調べる際に別々のサイトを見なければならず、UX(ユーザー体験)があまり良くありません。
今後の学習の指針
いかがでしたか?土地の価格は「一つ」ではなく、目的ごとに「変換」されて使われていることが理解できたかと思います。
エンジニアのみなさんには、ぜひ一度「路線価図」というキーワードで検索してみてほしいと思います。Googleマップのような地図上に、道路ごとの値段がびっしりと書かれています。
「自分が住んでいるアパートの前の道路は、1平方メートルあたりいくらなんだろう?」
これを確認するだけでも、世の中の見え方が少し変わってきます。
まずは「一物四価」という言葉と、「税金計算用は市場価格より少し安い(7掛け・8掛け)」というロジックだけ持ち帰ってください。
いつかあなたがマイホームという巨大なサーバーを構築するとき、この知識が必ず役に立ちますよ!