演習中の講師は教える人から観察する人に変身する

講師として登壇する際、講義と同じくらい大切なのが「演習(ワーク)」の時間です。受講者が手を動かしているとき、あなたは何をしていますか。実は、この時間の過ごし方ひとつで、研修の成果が劇的に変わります。

今回は、プロの講師が実践している演習中の振る舞いについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。

演習中の講師は教える人から観察する人に変身する

こんにちは。ゆうせいです。

研修の中でワークが始まった瞬間、講師の役割はガラリと入れ替わります。それまでマイクを持って熱弁を振るっていた「教える人」から、一歩引いて受講者を見守る「観察する人」へとシフトするのです。

あなたは、一生懸命に考えているときに横から口を挟まれて、集中力が切れてしまった経験はありませんか。受講者にとって、演習の時間は自らの頭をフル回転させる貴重な成長のチャンスです。そのため、講師ができる最大の貢献は、極論を言えば「受講者の邪魔をしないこと」に尽きます。

ここからは、具体的な3つのアクションを見ていきましょう。


1. 観察と記録に全神経を集中させる

まず最初に行うべきは、会場を静かに巡回することです。これを専門用語で「机間巡視(きかんじゅんし)」と呼びます。

机間巡視とは

机間巡視は、学校の先生がテスト中に机の間を歩く姿をイメージすると分かりやすいでしょう。ただし、監視するためではなく、受講者がどこでつまづいているか、どんな面白い意見が出ているかを探るためのアンテナを張る行為です。

  • 受講者の議論にそっと耳を傾ける
  • 基本は黙って見守る
  • 後のフィードバックで使うためのメモを取る

特に、多くの受講者が勘違いしているポイントや、キラリと光る鋭い発言を拾い上げておきましょう。これらを後の解説で「Aさんのグループでは、こんな素晴らしい意見が出ていましたね」と紹介するだけで、講義の説得力は 100 % 増しになります。


2. 講師自身の余裕を戦略的につくる

意外に思われるかもしれませんが、演習中は講師が唯一「オフ」になれる時間でもあります。これを不真面目だと感じる必要はありません。プロほど、この時間を自分のメンテナンスに充てています。

セルフメンテナンスの重要性

講師が常にフルパワーで走り続けると、いざ受講者から鋭い質問が飛んできたときに、頭が回らず適切な回答ができないリスクがあります。

  • お手洗いなどの用事を済ませる
  • 次のセクションの資料を再確認する
  • 喉を潤し、呼吸を整える

このように自分自身に「余裕」という貯金を作っておくことで、休憩時間に受講者が質問に来た際、最高のコンディションで神対応ができるようになります。


3. 介入は最後の手段と心得る

議論が止まっているチームを見つけると、つい助け舟を出したくなりますよね。しかし、安易に答えを教えることは、受講者から「自分で考える楽しみ」を奪うことになりかねません。

介入を行うのは、以下の 2 つのケースに限定しましょう。

  1. 議論が完全にストップしてしまい、自力では再開不能なとき
  2. テーマから大きく脱線し、明後日の方向に進んでいるとき

これ以外は、たとえ沈黙が続いていてもじっと耐えてください。沈黙は、受講者の脳が激しく汗をかいている証拠です。


講師の立ち振る舞いによるメリットとデメリット

この振る舞いを意識することで、どのような変化が起きるでしょうか。

メリット

受講者の主体性が引き出されることが最大の利点です。講師が教えすぎないことで、受講者は「自分たちで解決した」という達成感を得られます。また、講師が収集したリアルな情報を元にフィードバックを行うため、内容の解像度が飛躍的に高まります。

デメリット

慣れないうちは、何もしないことに不安を感じるかもしれません。「あの講師、サボっているのではないか」と思われないか心配になることもあるでしょう。しかし、目的は受講者の成長です。適切な距離感を保つことこそが、講師としての誠実さだと考えてください。


まとめと今後のステップ

演習中の講師は、黒子に徹することが求められます。

  • 静かに見守り、情報を集める
  • 自分のコンディションを整える
  • 過度な介入を控える

この 3 点を意識するだけで、あなたの研修はもっと受講者中心の、深い学びに満ちたものになるはずです。

もし、次にあなたが人前で話す機会があれば、ワークが始まった瞬間に一歩後ろへ下がってみてください。そして、受講者の表情や言葉をじっくり観察してみましょう。そこには、教科書には載っていない最高の教材が転がっているはずです。

次は、集めたメモを使ってどのように魅力的なフィードバックを組み立てるか、その手法について一緒に学んでいきましょう。

今回の内容は、講師としてのスキルを \times 2 にも \times 3 にも高めてくれる土台となります。ぜひ実践してみてください。。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。