研修受講者の主体性を引き出す手法:心理的コントロールの仕組みと対策

こんにちは。ゆうせいです。

研修や業務において、参加者に手順を細かく指示するほど、参加者の意欲が低下してしまう現象が見受けられます。人間は、自分の行動や環境を自分自身で決定しているという感覚を持つことで、行動の持続性を高める性質を備えています。本日は、心理学および行動経済学の概念である心理的コントロールについて解説します。

心理的コントロールとは何か

心理的コントロールとは、人間が自分の行動、選択、および周囲の環境に対して、自分自身で影響を与え、制御できていると感じる認知の状態を指します。人間は外部から強制された行動よりも、自らの意思で選択した行動に対して、より高い動機付けを維持する傾向を持っています。

高校生の学習状況を例に挙げます。ある生徒が、保護者から「毎日夕方6時から8時まで、指定した問題集を解きなさい」と指示され、その通りに学習する場面を想定します。別の場面として、同じ生徒が「夕食前後の時間帯で、自分が苦手だと感じる科目の参考書を2時間学習する」と自ら計画を立てて実行する場合を想定します。学習に費やす時間は同じ2時間ですが、自分で時間と内容を選択したと感じる後者の状況において、生徒は高い集中力を発揮し、学習を長期的に継続する傾向を示します。自分自身で学習の進め方を制御しているという感覚が、心理的コントロールに該当します。

選択の機会を奪うことのデメリット

心理的コントロールの機能を考慮せず、手順を過度に指定して研修を進行した場合に生じる不利益を列挙します。

  • 受講者が受け身の姿勢となり、研修で提示された課題以外の自発的な学習行動をとらなくなる
  • 細かな手順まで指定されることで、受講者が自身の能力を信頼されていないと感じ、参加意欲が低下する
  • 研修中に予期せぬ問題が発生した際、受講者が自分で解決策を考えることを放棄し、講師の指示を待つ状態に陥る

自己決定を促すメリット

受講者が自分の行動を制御しているという感覚を意図的に引き出し、学習環境の整備に活用する利点を提示します。

  • 研修の目標設定において受講者に選択肢を提示することで、課題に対する責任感と当事者意識を醸成できる
  • 学習を進める順序や方法を受講者自身に委ねることで、各自の理解度に応じた最適な学習ペースを維持できる
  • 自らの選択によって課題を完了したという経験が、研修後の業務における自律的な問題解決能力の向上につながる

参加者の主体性を引き出すためのステップ

受講者の心理的コントロールを高め、学習への自律的な参加を支援するためには、以下の手順でプログラムの指示方法を調整する手法が有効です。

1. 必須要件と選択可能領域を分離する

研修の中で必ず守るべきルールや到達すべき目標と、受講者が自由に決定してよい進行手順や表現方法を明確に切り分けます。

2. 複数の選択肢を提示する

課題に取り組む際、単一の解答手順を指示するのではなく、アプローチの異なる複数の手法を提示し、受講者に自身に合うものを選択させます。

3. 目標設定に裁量を持たせる

全体の学習目標の枠内で、受講者自身が個別の小さな目標を設定し、達成に向けた計画を自ら立てる時間を確保します。

4. 選択に対する支援を提供する

受講者が進め方を選択する際、完全に放置するのではなく、判断に必要な情報や参考資料を提供し、適切な選択ができるよう環境を整えます。

研修の場において、すべての手順を細かく指示することは、参加者の意欲を削ぐ要因となります。まずは、次回の研修のグループワークにおいて、課題の発表形式を参加者に自由に選択させる手順を一つ追加する段階から進めてください。自己決定の機会を設けることで、参加者が自発的に学習に取り組む環境の構築が可能になります。

セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。

学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。