プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験 科目Bサンプル問題 全6問の解き方と研修での教え方
こんにちは。ゆうせいです。
IPA(情報処理推進機構)が、2027年度から始まる予定の新試験「プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)」の科目Bサンプル問題を、2026年10月30日に公表しました。この試験区分は、現行のデータベーススペシャリスト試験と応用情報技術者試験を再編したものと報じられています。
この記事では、サンプル問題6問をすべて解き、正解の理由に加えて、誤りの選択肢がなぜ誤りなのかも確認します。読者として想定しているのは、データやAIの研修を担当する講師の方です。各問の最後に、受講者がつまずきやすい点と、研修で扱うときの観点を添えました。
なお、問題文は記事の分量に合わせて要約し、一部改変しています。正確な問題文はIPAの公表資料をご確認ください。
全6問の正解とテーマ
| 問 | テーマ | 正解 |
|---|---|---|
| 問1 | データコントラクトと破壊的変更 | イ |
| 問2 | 散布図行列と重回帰分析の解釈 | キ |
| 問3 | LLMを使った支援システムの設計(RAG) | エ |
| 問4 | データレイク・DWH・データマートの使い分け | ウ |
| 問5 | SQLの結果行数の見積り | オ |
| 問6 | 中央値を使った得点補正アルゴリズム | オ |
6問とも、用語を覚えているだけでは解けません。状況を読み、誰の何が問題だったのかを判断する力が問われています。
問1 データコントラクトと破壊的変更(正解:イ)
問題の要旨
出典:プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目B サンプル問題 問1(問題文を要約し、一部改変)
A社は、各部門がデータの所有と管理の責任をもつ分散型のデータマネジメントを採用しています。営業部門は提供者(プロバイダー)として「顧客別月間売上データプロダクト」を公開しており、マーケティング部門は利用者(コンシューマー)として、その仕様を定めたデータコントラクトv1に合意し、解約予測AIの入力に使っています。A社では、データコントラクトの複数バージョンを同時に公開することを禁止しています。
v1では、amountカラムは「顧客の月間売上金額(単位:千円)」と定義され、説明文の承認フラグ(description_approved)はtrueです。
あるとき経営企画部門から「円単位のデータがほしい」という要望があり、営業部門は次のように対応しました。
- 既存のamountカラムの値を円単位に変更した
- 千円単位の値を入れるamount_kカラムを追加した
- データコントラクトをv2に更新した
- 変更を経営企画部門には伝えたが、マーケティング部門には伝えなかった
A社には、承認フラグがfalseのカラムだけ、AIが説明文を自動生成する補助ツールがあります。人間が確定した定義をAIが上書きしないための仕組みです。今回、amountの承認フラグはtrueのまま変更されず、AIはamount_kの説明文だけを生成しました。その結果、v2のamountの説明文は「千円単位」のまま残りました。
経営企画部門は、amountの説明文が千円単位のままであることに気付きましたが、自部門の利用には問題ないと判断して合意しました。その後、マーケティング部門の解約予測AIは、顧客の売上が突然1000倍になったと誤認し、異常な予測を出しました。
空欄aは事象の原因、空欄bはコンシューマー向けガイドラインの第1条(新規契約時)に入る内容です。
空欄aの考え方
原因は、提供者である営業部門の二つの行動にあります。
一つ目は、amountの値の意味(セマンティクス)を千円単位から円単位に変えたのに、説明文のメタデータを見直さなかったことです。承認フラグがtrueのままだったため、補助ツールは設計どおりamountを生成対象から外しました。意味を変えた人が承認フラグをfalseに戻していれば、説明文の見直しが行われたはずです。
二つ目は、既存の利用者にとって後方互換性のない変更(破壊的変更)だったのに、マーケティング部門へ通知せず、再合意も得なかったことです。
この二つを述べている選択肢(一)が正解です。
(二)は、補助ツールが全カラムを再スキャンしなかったことを原因にしています。しかし、承認済みのカラムをAIに触らせないことは、この仕組みが意図した動作です。全カラムを再スキャンする仕様にすると、人間が確定させた定義をAIが上書きするという、防ぎたかった事態を招きます。原因はツールの仕様ではなく、承認フラグを戻さなかった運用にあります。
(三)は、経営企画部門が要望を出したことを原因にしています。利用者が要望を出すこと自体は正当です。要望を受けてどう変更するか、既存の利用者にどう影響するかを判断する責任は、提供者の側にあります。
空欄bの考え方
第1条は、コンシューマーが新規に契約するときに守るべきことです。本文で、コンシューマーとして問題があった行動は、経営企画部門が説明文と実態の食い違いに気付きながら合意したことです。経営企画部門が修正を求めていれば、v2の誤りはその時点で直り、マーケティング部門の事故も防げた可能性があります。
したがって、「定義に矛盾や不備がある場合は提供者に修正を求め、正しい定義が反映されてから合意する」という選択肢(五)が正解です。
(四)は、実データをダウンロードして利用者が独自に検査してから合意する、という内容です。データコントラクトは、提供者が仕様と品質を約束する仕組みです。利用者が毎回実データを検査しなければならないのでは、この仕組みを導入した意味が薄れ、利用者の負担も大きくなります。
(六)は、仕様違いで起きるビジネス損失を事前に提供者へ報告する、という内容です。損失の見込みを伝えても、仕様の食い違いそのものは解消しません。新規契約時に何をすべきかという第1条の目的から外れています。
以上から、aが(一)、bが(五)の組合せであるイが正解です。
研修での教え方
受講者がつまずきやすいのは、「データ型が変わっていないから互換性は保たれている」と考えてしまう点です。amountはdecimal型のまま、単位だけが変わりました。型のチェックでは検出できない変更こそ危険だと伝えると、問題の核心が伝わります。Java研修を受けた受講者には、メソッドの引数と戻り値の型は同じまま、戻り値の意味だけを変えた場合に呼び出し側がどうなるか、という例えが通じやすいです。
承認フラグは「AIに触らせない印」だと説明すると、AIと人間の責任分担の題材として扱えます。印を付けたのが人間なら、意味を変えたときに印を外すのも人間の責任です。
経営企画部門の行動は、「自分には害がないので、気付いた不備を黙って通した」という組織事故の典型です。データの話にとどめず、コードレビューや引き継ぎの場面に置き換えてグループで議論させると、受講者が自分の業務に引き寄せて考えられます。
問2 散布図行列と重回帰分析の解釈(正解:キ)
問題の要旨
出典:プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目B サンプル問題 問2(問題文を要約し、一部改変)
あるECサイトの毎月の利益を最大化したいと考えています。利益は、売上から、訪問者数に応じた費用、SNS広告費、メール配信数に応じた費用、固定費(月10万円)を引いて計算します。
24か月分のデータで、利益・売上・訪問者数・SNS広告費・メール配信数の散布図行列を作成しました。散布図行列の対角成分には各変数のヒストグラム、それ以外には2変数ずつの散布図が並んでいます。図からは主に次の傾向が読み取れます。
- SNS広告費と売上は、右上がりのほぼ一直線に並んでいる
- メール配信数と利益は、点が大きくばらついている
- SNS広告費とメール配信数は、ゆるやかな右上がりの傾向がある
続いて、SNS広告費とメール配信数を説明変数、利益を目的変数として、3通りの回帰分析を行いました。
| モデル | SNS広告費の係数 | メール配信数の係数 | 切片 | 決定係数 |
|---|---|---|---|---|
| モデル1 | 2.334 | なし | −22.753 | 0.718 |
| モデル2 | なし | 0.220 | 91.031 | 0.064 |
| モデル3 | 3.637 | −0.586 | −28.462 | 0.949 |
空欄aは散布図行列から読み取れること、空欄bはモデル3の結果から言えることです。
空欄aの考え方
(一)は、SNS広告費と売上に強い負の相関があるという内容です。図ではSNS広告費が増えるほど売上も増え、点がほぼ一直線に並んでいます。強い正の相関であり、負の相関ではありません。
(二)は、メール配信数と利益に強い正の相関があり、利益がメール配信数に依存している、という内容です。散布図の点は大きくばらついています。表からも確認できます。説明変数が一つだけの単回帰分析では、決定係数は相関係数の2乗に等しくなります。モデル2の決定係数0.064から相関係数を求めると、次のようになります。
相関係数0.25程度は、弱い相関です。さらに「依存していることが分かる」という部分は、相関から因果関係を断定しており、この点でも誤りです。
(三)は、SNS広告費とメール配信数の間に弱い正の相関があり、共線性(説明変数どうしが相関していること)の存在が示唆される、という内容です。図の傾向と一致するため、(三)が正解です。
表にも、共線性を裏付ける手がかりがあります。メール配信数の係数は、モデル2では0.220(正)なのに、SNS広告費を加えたモデル3では−0.586(負)に反転しています。説明変数どうしに相関があると、もう一方の変数を加えたときに係数が大きく変わります。モデル2のメール配信数の係数は、メール配信数と一緒に動くSNS広告費の効果を一部取り込んでいたと考えられます。
空欄bの考え方
モデル3の回帰式は、SNS広告費をx1、メール配信数をx2として、次のように書けます。
(四)は、メール配信数が同じであれば、SNS広告費を1万円増やすと利益は約3.6万円増えると予測できる、という内容です。重回帰分析の係数は、ほかの説明変数を一定にしたときの影響を表します。x2を固定してx1を1増やすと、予測値は3.637増えます。したがって(四)が正解です。
(五)は、切片がマイナスなので利益が出ない、という内容です。切片は、すべての説明変数が0のときの予測値です。SNS広告費もメール配信数も0という条件での予測が−28.462万円になる、という意味にすぎず、このモデルで利益が出ないことを示すものではありません。また、実際のデータの範囲から大きく離れた点なので、切片の値そのものを業務の判断に使う意味は薄いと言えます。
(六)は、決定係数が0.949なのでモデルの精度は94.9%である、という内容です。決定係数は、目的変数のばらつきのうち、モデルで説明できる割合です。
予測が94.9%の確率で当たるという意味ではありません。
以上から、aが(三)、bが(四)の組合せであるキが正解です。
研修での教え方
散布図行列を初めて見る受講者には、対角成分がヒストグラム、それ以外が2変数の散布図であり、対角線を挟んで上下が同じ組合せになっていることから説明します。
決定係数と相関係数の関係(単回帰では決定係数が相関係数の2乗)を知っていれば、図が読みにくくても(二)を表から否定できます。図と表の両方から裏付けを取る姿勢を身に付けさせたい問題です。
係数の符号反転は、共線性を体感させるのに向いた題材です。「メール配信を増やすと利益が増える」というモデル2の結論が、モデル3では逆になることを見せ、変数を一つずつ見る分析の危うさを議論させるとよいでしょう。
もう一つの観点として、利益の式ではメール配信数1万通あたり0.5万円の費用がかかります。モデル3のメール配信数の係数−0.586は、この費用分に近い値です。メール配信が売上をほとんど押し上げず、費用として効いている可能性を読み取れます。式とモデルを突き合わせる練習として扱えます。
決定係数を「精度」と言い換える誤解は、研修の現場でも頻繁に見かけます。早い段階で訂正しておくと、その後の機械学習の評価指標の説明が通りやすくなります。
問3 LLMを使った支援システムの設計(正解:エ)
問題の要旨
出典:プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目B サンプル問題 問3(問題文を要約し、一部改変)
精密機器メーカーのA社では、保守エンジニアがトラブルの関連情報を探すのに時間がかかっています。製品仕様書の改訂が多く、文章量も多いためです。そこで、LLMを使った対話型のトラブルシューティング支援システムを作ることになりました。要件は次の二つです。
- 製品仕様書が改訂されたら、速やかにシステムへ反映できること
- 提示された解決策がどの製品仕様書に基づくかを、エンジニアが直接確認できること
検討したアプローチは、製品仕様書から作ったデータで追加学習する方法(アプローチ①)と、追加学習をせず、質問に関連する情報を検索してプロンプトに付け、その情報に基づいて回答させる方法(アプローチ②)です。改訂の反映が短時間かつ低コストで済むことから、アプローチ②を採用しました。
空欄aはプロンプトに付加するもの、空欄bはこの方式が活用するLLMの能力、空欄cは回答の出力時に行うことです。
空欄aの考え方
アプローチ②は、一般にRAG(検索拡張生成)と呼ばれる方式です。プロンプトに付けるのは、外部のデータベースから検索・抽出した、質問に関連する文書です。したがって(一)が正解です。
(二)は、LLMがもつ知識から情報を検索するための、ベクトル変換した質問文、という内容です。RAGで検索する対象は、LLMの内部の知識ではなく、製品仕様書などの外部の文書です。質問文をベクトルに変換するのは検索の手段であり、プロンプトに付けるのは検索結果の文書です。
空欄bの考え方
LLMのパラメータを更新せずに、プロンプトで与えられた情報から回答を導く能力は、文脈内学習(In-Context Learning)です。したがって(五)が正解です。
(三)のパラメトリック知識は、学習によってパラメータに蓄えられた知識を指します。RAGが使うのは、パラメータの外にある知識です。
(四)の継続的学習は、新しいデータでモデルを更新し続ける手法であり、パラメータの更新を伴います。本文の「パラメータを更新せずに」という条件に合いません。
空欄cの考え方
二つ目の要件は、解決策がどの製品仕様書に基づくかを、エンジニアが直接確認できることです。回答の根拠となった関連文書名を表示すれば、この要件を満たせます。したがって(六)が正解です。
(七)の信頼度スコアは、数値を見ても、どの文書に基づく回答なのかは分かりません。また、LLMが示す信頼度が、回答の正しさと一致するとは限りません。
以上から、aが(一)、bが(五)、cが(六)の組合せであるエが正解です。
研修での教え方
RAGと追加学習(ファインチューニング)の違いは、比較表で整理すると受講者に伝わりやすくなります。
| 観点 | RAG | 追加学習 |
|---|---|---|
| 知識の更新 | 文書を差し替えるだけ | 再学習が必要 |
| 費用 | 比較的低い | 学習の計算資源が必要 |
| 根拠の提示 | 参照した文書を示せる | 示しにくい |
| 向いている用途 | 頻繁に変わる知識の参照 | 口調や出力形式の習得 |
文脈内学習は、プロンプトに例を数個示して答え方を学ばせるfew-shotと同じ仕組みだと説明すると、受講者の知識がつながります。G検定の学習経験がある受講者なら、なじみのある用語です。
根拠文書の表示は、LLMがもっともらしい誤りを出す問題(ハルシネーション)への基本的な対策です。保守作業のように誤りが事故につながる現場では、「AIの回答を人が検証できる設計」が要件そのものになる、という視点を伝えたい問題です。
問4 データレイク・DWH・データマートの使い分け(正解:ウ)
問題の要旨
出典:プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目B サンプル問題 問4(問題文を要約し、一部改変)
住宅設備メーカーのA社のデータ分析基盤は、次の流れで構成されています。
- 様々なデータソースのデータをデータレイクに集める
- データレイクのデータをETLツールで加工してDWHに格納する
- DWHのデータをETLツールで加工してデータマートに格納する
- データマートのデータをBIツールや機械学習で使う
- データレイクのデータは、データプリパレーションツールで加工して直接使うこともできる
設備やユーザーなどのマスターデータは、DWHのテーブルに格納されています。
コールセンターの問合せ記録は、日別のJSON形式のテキストファイルで保存されています。この問合せ記録について、次の三つの利用要件があります。
- 要件1:全社で、全期間の問合せを対象に、ユーザーや設備の属性を軸に汎用的に検索・集計したい。特定の設備の問合せ内容を照会することもある
- 要件2:設備保守部門で、一定期間に点検修理を要した問合せを対象に、設備情報と設備利用年月数の導出値を切り出して分析したい
- 要件3:受付日時、対象設備、問合せ内容を機械学習に使い、センチメント分析やFAQの改善を行いたい
要件1のデータの配置先がa、加工元がb、要件2のデータの配置先がc、加工元がdです。
三つの置き場所の役割
最初に、三つの置き場所の役割を整理しておきます。
- データレイク:集めたデータを、元の形式のまま保管する場所。JSONやテキストのような非構造データもそのまま置ける
- DWH(データウェアハウス):全社で共通に使えるよう、データを統合・整理し、履歴とともに蓄える場所
- データマート:特定の部門や目的に合わせて、必要なデータだけを切り出して加工した場所
倉庫に例えると、データレイクは荷物を届いたまま積んでおく倉庫、DWHは全社員が使えるよう分類して並べた図書館、データマートは特定の部署のために必要な本だけを集めた棚、という関係です。
空欄の考え方
要件1は、全社で、全期間のデータを、ユーザーや設備の属性を軸に汎用的に使う要件です。全社共通・汎用・全期間という条件と、マスターデータがDWHにあることから、配置先はDWH(a)です。問合せ記録は日別のJSONファイルとしてデータレイクにあるため、加工元はデータレイク(b)です。
要件2は、設備保守部門という特定の部門が、一定期間・点検修理ありという条件で絞り込み、導出値まで付けたデータを使う要件です。特定の部門と目的に合わせた加工なので、配置先はデータマート(c)です。図の流れではデータマートはDWHから作ります。要件1でDWHに整備した問合せデータと、DWHにある設備のマスターデータを使えばよいので、加工元はDWH(d)です。
要件3は、本文ですでに、データレイクのデータをデータプリパレーションツールで加工すると整理されています。問合せ内容のような非構造のテキストを探索的に使う用途には、元の形式を残したデータレイクが向いています。
以上から、aがDWH、bがデータレイク、cがデータマート、dがDWHの組合せであるウが正解です。
誤りの選択肢を確認する
aをデータマートにしている選択肢(エ〜ク)は、全社で汎用的に使うデータを、特定の部門向けの置き場所に置くことになります。全社の利用者が自由な軸で集計するという要件1に合いません。
cをDWHにしている選択肢(ア、オ、カ)は、特定部門の目的に合わせた絞り込みや導出値を、全社共通の基盤に混ぜることになります。
dをデータレイクにしている選択肢(ア、イ、カ、ク)は、図の流れ(データマートはDWHから作る)に反します。また、要件1で行ったJSONの加工やマスターとの結合を、要件2でもう一度行うことになります。
研修での教え方
この問題は、図の矢印の向きを読むだけで候補をかなり絞れます。受講者には、まず構成図のデータの流れを確認する習慣を付けさせたいところです。
置き場所は「誰が」「どの範囲で」使うかで決まる、と整理すると応用が利きます。全社かつ汎用ならDWH、部門かつ特定目的ならデータマート、非構造データの探索的な利用ならデータレイクです。受講者の会社のデータを例に、どこに置くべきかを考えさせる演習にもつなげられます。
問5 SQLの結果行数の見積り(正解:オ)
問題の要旨
出典:プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目B サンプル問題 問5(問題文を要約し、一部改変)
不動産賃貸仲介業のA社の検索システムには「物件」テーブルがあります。統計情報は次のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 行数 | 1,600,000 |
| 沿線の列値個数 | 400 |
| エアコンの列値個数 | 2(Y:設置あり、N:設置なし) |
| オートロックの列値個数 | 2(Y:設置あり、N:設置なし) |
沿線、エアコン、オートロックの列値は互いに独立で、それぞれ一様分布に従うと仮定して、次のSQL文の結果行数を見積もります。
SQL1は、沿線が○△線で、エアコンとオートロックの両方がある物件を調べます。見積り結果は1,000行です。
sql
SELECT 物件コード, 物件名 FROM 物件 WHERE 沿線 = '○△線'
AND ( エアコン = 'Y' AND オートロック = 'Y' )
SQL2は、沿線が○△線で、エアコンかオートロックのいずれかがある物件を調べます。見積り結果が空欄aです。
sql
SELECT 物件コード, 物件名 FROM 物件 WHERE 沿線 = '○△線'
AND ( エアコン = 'Y' OR オートロック = 'Y' )
SQL3は、エアコンとオートロックの両方がある物件を沿線ごとに集計し、全物件数に占める割合を百分率(小数点以下切捨て)で求めます。空欄bに入る式を答えます。
sql
WITH TEMP ( TOTAL ) AS ( SELECT COUNT(*) FROM 物件 )
SELECT 沿線, FLOOR( b )
FROM 物件 CROSS JOIN TEMP
WHERE エアコン = 'Y' AND オートロック = 'Y'
GROUP BY 沿線, TOTAL
空欄aの考え方
沿線は400種類で一様分布なので、○△線の物件は1,600,000 ÷ 400 = 4,000件です。
エアコンありの割合は1/2、オートロックありの割合も1/2です。両方ありの割合は、独立なので掛け算で1/4になります。4,000 × 1/4 = 1,000件となり、SQL1の見積りと一致します。
SQL2は「いずれかがある」なので、どちらか一方でもあればよい条件です。確率の加法定理を使うと、次のようになります。
「どちらもない」割合(1/2 × 1/2 = 1/4)を1から引いても、同じ3/4が得られます。したがって、4,000 × 3/4 = 3,000件です。
1,000はSQL1と同じ値であり、ANDとORを取り違えた場合の答えです。4,000は、設備の条件を無視して沿線だけで数えた場合の答えです。
空欄bの考え方
COUNT()は、沿線ごとに集計した物件数です。TOTALは全物件数です。百分率で求めるので、100を掛ける必要があります。したがって、COUNT() * 100 / TOTAL が正解です。
COUNT(*) / TOTAL は割合であって、百分率ではありません。また、多くのRDBMSでは整数どうしの割り算は整数になるため、全物件数より小さい件数を割ると0になってしまいます。100を先に掛けてから割る順序にも意味があります。
SUM(*) は、SQLの構文として存在しません。SUMは列や式を引数にとる関数で、アスタリスクを引数にとれるのはCOUNTだけです。
以上から、aが3,000、bがCOUNT(*) * 100 / TOTAL の組合せであるオが正解です。
なお、SQL3の結果行数が400になっているのは、沿線ごとにまとめた結果が、沿線の種類数と同じ400行になるためです。
研修での教え方
ANDとORの件数は、ベン図で示すと理解が早くなります。「ORの件数はANDより多くなるはず」という感覚で検算する習慣を付けさせたいところです。
統計情報から結果行数を見積もる考え方は、RDBMSのオプティマイザが実行計画を選ぶときと同じです。データベース研修で実行計画を扱う前の導入にも使えます。
発展として、「エアコン付きの物件はオートロック付きでもあることが多い」など、独立の仮定が崩れた場合に見積りがどうずれるかを議論させると、仮定を置いて見積もることの意味を考えさせられます。
SQL3では、1行だけのTEMPをCROSS JOINで全行に付け、TOTALをGROUP BYに含めています。SELECT句で使う集約関数以外の列はGROUP BYに含める必要がある、という基本の確認にもなります。
問6 中央値を使った得点補正アルゴリズム(正解:オ)
問題の要旨
出典:プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目B サンプル問題 問6(問題文を要約し、一部改変)
関数correctionは、100点満点の試験の得点を昇順に格納した配列scoreを受け取り、補正した得点の配列を返します。得点は0以上の整数で、0又は100が過半数を占めることはないものとします。配列の要素番号は1から始まります。
処理の流れは次のとおりです。
- 要素数nが奇数なら中央の要素、偶数なら中央の2要素の平均を中央値centerとする
- 得点がcenter以下なら、(50 ÷ center) × 得点 を計算する
- 得点がcenterより大きければ、(50 ÷ (100 − center)) × (得点 − center) + 50 を計算する
- 計算結果を小数第1位で四捨五入して、補正後の得点とする
correction({20, 30, 30, 30, 60, 80}) の戻り値に、50以上の要素がいくつ含まれるかを答えます。
補正の意味
補正の式を、元の得点をx、補正後の得点をy、中央値をcとして書くと次のようになります。
0点を0点に、中央値を50点に、100点を100点に対応させ、その間を直線で結ぶ変換です。グラフにすると、中央値の位置で折れ曲がる折れ線になります。中央値の受講者がちょうど50点になるよう、得点を調整しているわけです。
解き方
要素数は6で偶数なので、mは3です。中央値は、3番目と4番目の平均で、(30 + 30) ÷ 2 = 30 になります。
各要素を計算します。
| 元の得点 | 使う式 | 計算 | 補正後 |
|---|---|---|---|
| 20 | 中央値以下 | 50 ÷ 30 × 20 = 33.33… | 33 |
| 30 | 中央値以下 | 50 ÷ 30 × 30 = 50 | 50 |
| 30 | 中央値以下 | 50 ÷ 30 × 30 = 50 | 50 |
| 30 | 中央値以下 | 50 ÷ 30 × 30 = 50 | 50 |
| 60 | 中央値より大きい | 50 ÷ 70 × 30 + 50 = 71.43… | 71 |
| 80 | 中央値より大きい | 50 ÷ 70 × 50 + 50 = 85.71… | 86 |
50以上の要素は、50、50、50、71、86の5個です。したがって、オが正解です。
誤りの選択肢を確認する
2個(イ)は、71と86だけを数えた場合です。「50以上」には50ちょうども含まれます。
3個(ウ)は、50、71、86のように値の種類を数え、重複する50を1個と数えた場合です。問われているのは要素の個数です。
6個(カ)は、全要素を数えた場合で、33を見落としています。
研修での教え方
トレース表(変数の値を1行ずつ書き出す表)を受講者自身に書かせるのが、最も確実な指導方法です。上の表のように、元の得点、使う式、計算、補正後を並べる形式を示すとよいでしょう。
境界の扱いにも注意を促します。30点は「center以下」の分岐に入りますが、どちらの式で計算しても50になります。折れ線が中央値の位置で途切れずにつながっているためです。この性質を確認させると、式の意味の理解が深まります。
問題文の「0又は100が過半数を占めることはない」という前提も、良い教材になります。0点が過半数だと中央値が0になり、50 ÷ center がゼロ除算になります。100点が過半数だと、100 − center が0になり、やはりゼロ除算になります。前提条件がエラーを防ぐ役割を果たしていることに気付かせると、プログラムを読む観点が一つ増えます。
偶数個のデータの中央値が中央2要素の平均になる点も、統計の基礎として確認しておきたい箇所です。
まとめ
6問を通して見ると、この試験が測ろうとしているのは、データとAIを使う現場で起きる状況を読み、判断する力です。
- 問1と問3は、データやAIの仕組みと、人間の責任の分担を問う問題でした
- 問2と問5は、数値と仮定から結論を導き、その妥当性を確認する問題でした
- 問4と問6は、構成図やプログラムの流れを正確に読み取る問題でした
研修で扱う場合は、正解を示すだけでなく、誤りの選択肢を選んだ受講者がどこで判断を誤ったのかを一緒にたどることをおすすめします。誤答の理由には、受講者が現場で同じ判断を誤る可能性が表れているからです。
次の学習ステップとしては、IPAが同時に公表したシラバス案で出題範囲の全体を確認し、続いてマネジメント領域とシステム領域のサンプル問題にも目を通すと、新試験制度全体の考え方がつかめます。試験の名称や内容は仮称の段階であり、今後変わる可能性があるため、最新の情報はIPAの公式ページで確認してください。
参考:IPA「新試験制度のサンプル問題について」 https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/henkou/2026/20260622.html
Sources:
- 新試験制度のサンプル問題について|IPA
- 試験に関するよくある質問|IPA
- IPA、2027年度に開始する「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」の「データ・AI領域」サンプル問題を公開|INTERNET Watch
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