リッカート尺度とは?

リッカート尺度(Likert scale)は、質問に対して個人の意見や感情、態度を測定するためのアンケート形式の評価尺度です。一般的には、ある主張や質問に対して「どの程度同意するか」を示すために使われます。この尺度は心理学や社会科学の研究だけでなく、ビジネスや教育の分野でも幅広く活用されています。


具体例

リッカート尺度の典型的な質問の形式は、次のようなものです。

質問例:

「この職場での仕事に満足していますか?」

この質問に対して、以下のような選択肢を提示します。

  1. 非常に満足
  2. 満足
  3. どちらでもない
  4. 不満
  5. 非常に不満

この5段階の選択肢において、回答者は自分の意見に最も近い選択肢を選びます。この形式は、主張に対する賛否や強弱を表すのに適しています。


リッカート尺度の特徴

リッカート尺度にはいくつかの特徴があります。

1. 順序データ

リッカート尺度の選択肢は、順序があるデータです。つまり、選択肢は「非常に満足」から「非常に不満」のように、明確な順序が存在します。ただし、これらの選択肢の間隔が等しいわけではありません(「満足」と「非常に満足」の差が、「どちらでもない」と「不満」の差と同じとは限らない)。

2. スコア化

リッカート尺度の回答は、数値化して分析することができます。例えば、「非常に満足」を5点、「満足」を4点、「どちらでもない」を3点、「不満」を2点、「非常に不満」を1点として、数値データとして扱います。こうして得られたデータを集計し、平均値標準偏差などの統計的指標を算出することで、全体の傾向を分析できます。

3. 中立的な選択肢

通常、リッカート尺度には中間の選択肢(上記の例で言えば「どちらでもない」)が含まれます。これにより、強い意見を持たない回答者が無理に賛成や反対を選ぶ必要がなくなります。一方で、場合によっては中立的な選択肢を省略することで、回答者により明確な意見を引き出す場合もあります。


リッカート尺度のメリット

リッカート尺度を使うことにはいくつかのメリットがあります。

1. 使いやすさ

質問や選択肢が簡潔で、回答者にとって理解しやすいため、アンケートを実施する際に非常に使いやすい形式です。

2. 柔軟性

多くのテーマや対象に対応できるため、個人の満足度、意見、態度、感情など、さまざまな心理的・社会的要素を測定するのに適しています。

3. 統計分析が可能

数値化が容易で、回答を集計して平均分布を分析することで、全体の傾向を把握したり、グループ間の違いを調べたりできます。


リッカート尺度のデメリット

しかしながら、リッカート尺度にはいくつかの注意点もあります。

1. 回答の偏り

回答者が「非常に満足」や「非常に不満」のような極端な意見を避けて、常に「どちらでもない」や「満足」のような中間の選択肢を選ぶ傾向がある場合があります。これにより、結果が実際よりも穏やかに見える可能性があります。

2. スコアの扱い方

リッカート尺度のデータは、厳密には順序データであり、選択肢間の距離(例えば「満足」と「どちらでもない」の差)が必ずしも等間隔ではないことに注意が必要です。それでも、多くの場合はこの違いを無視して、スコアを数値データとして扱いますが、慎重な解釈が必要です。


リッカート尺度の応用例

リッカート尺度は、次のような状況で特に効果的です。

1. 従業員満足度調査

職場環境や業務内容に対する満足度を測定する際に、リッカート尺度はよく使われます。例えば、従業員が会社の福利厚生や上司との関係にどれだけ満足しているかを把握するのに役立ちます。

2. 顧客満足度調査

リッカート尺度は、顧客が商品やサービスに対してどの程度満足しているかを評価するアンケートにも使用されます。たとえば、「商品の品質に満足していますか?」という質問に、5段階で回答してもらうことで、顧客の意見を集めます。

3. 学生の学習態度調査

教育の分野でも、リッカート尺度はよく用いられます。学生が授業の内容に対してどれだけ理解しているか、あるいはどの程度興味を持っているかを調査するために使います。


まとめ

リッカート尺度は、簡便でありながら、個人の態度や意見を測定するための強力なツールです。その使い方を正しく理解すれば、アンケート結果を分析し、組織やプロジェクトの改善に活用することができます。今後、この尺度を使って調査を実施する際は、設計やスコア化の方法に注意しながら活用してみてください。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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