統計学と機械学習の違い

統計学と機械学習は、データを使って現象を分析したり予測したりする点で似ていますが、その目的やアプローチにはいくつかの違いがあります。ここでは、両者の特徴をわかりやすく解説しながら、その違いを詳しく見ていきます。


統計学とは?

統計学は、データを理解し解釈するための科学です。具体的には、データの集計や分析、そしてその結果をもとに結論を導き出すための方法や手法を提供します。統計学では、基本的に以下のようなステップを踏んでデータを分析します。

  1. 仮説の立案:調べたい事象に対する仮説を立てる。例えば「雨の日は事故が増えるのではないか」という仮説を検証するためのデータを集めます。
  2. データの収集と整理:データを集め、それを整理して見やすくします。
  3. 分析と検証:データを使って仮説を検証し、結論を導きます。ここで使われるのが、平均や分散、相関係数などの統計的な指標です。
  4. 結論の解釈:結果をもとに仮説を検証し、結論を出します。これにより、特定の事象に対する理解が深まります。

統計学の主な目的は、データから有意義な情報を抽出し、現実の事象に基づいた「因果関係」や「相関関係」を解明することにあります。そのため、統計学では「なぜこの結果が出たのか?」という点を重視することが多いです。


機械学習とは?

機械学習は、大量のデータを用いてコンピュータが自動的にパターンや規則性を学び、それをもとに予測や分類を行う技術です。特に近年は、AI(人工知能)の一部として注目されています。機械学習のアプローチは、主に以下のようなステップに分かれます。

  1. データの収集と前処理:必要なデータを収集し、機械が学習しやすい形に整えます。
  2. モデルの選択と訓練:アルゴリズム(例:線形回帰、ニューラルネットワークなど)を用いてデータを学習します。
  3. モデルの評価と調整:モデルがどれだけ正確に予測できるかを評価し、必要に応じて調整します。
  4. 予測と適用:最終的なモデルを使って新しいデータに対して予測や分類を行います。

機械学習の目的は、データから「将来の予測」を行うことで、統計学のように「なぜこの結果が出たのか?」よりも、「どのようなパターンが見られるか?」「どのような予測ができるか?」といった結果重視の考え方に重きを置きます。


統計学と機械学習の違い

視点統計学機械学習
目的因果関係の理解とデータの解釈を重視パターンの発見と予測精度の向上を重視
仮説検定仮説を立て、データで検証するアプローチ仮説にこだわらず、データに基づく学習
データ量比較的小規模のデータセットで行うことが多い大量のデータで行うことが一般的
柔軟性確率論や統計的なルールに基づくデータに応じて柔軟なモデルを構築
透明性結果の解釈が容易であることが多い複雑なモデルでは解釈が難しい場合も多い

具体例で見る違い

例えば、「ある患者が病気になるかどうかを予測したい」とします。

  • 統計学のアプローチ:患者の生活習慣や病歴などから、病気と特定の生活習慣の間にどのような因果関係があるかを検証します。「喫煙が病気に影響を与えるか?」といった仮説を立て、統計手法で因果関係を確かめます。
  • 機械学習のアプローチ:患者の様々なデータをもとに、病気になるかどうかを予測するモデルを構築します。仮説を立てず、データをそのままアルゴリズムに与えて、パターンを見つけることに注力します。予測結果は得られますが、必ずしも「なぜその予測が出たのか」を説明することはしません。

統計学と機械学習のメリットとデメリット

統計学のメリットとデメリット

  • メリット
  • 結果の解釈がしやすく、因果関係を明確にできます。
  • 仮説検証により、科学的な根拠に基づいた結論が得られます。
  • デメリット
  • 複雑なデータや大量のデータには対応しづらいです。
  • 仮説に依存するため、発見されない関係性が存在する可能性もあります。

機械学習のメリットとデメリット

  • メリット
  • 大量のデータを使うことで精度の高い予測が可能です。
  • データから新しいパターンや関係性を見つけやすいです。
  • デメリット
  • 結果の解釈が難しく、なぜその予測が出たのかが分かりにくい場合があります(ブラックボックス問題)。
  • データに依存するため、偏ったデータでは正確な予測が難しいです。

今後の学習の指針

統計学と機械学習は、どちらもデータ分析において強力なツールです。しかし、目的やデータの種類によって、どちらを使うかを選ぶことが重要です。因果関係を理解したい場合は統計学を、より精度の高い予測を重視する場合は機械学習を学ぶと良いでしょう。

両者の知識を組み合わせることで、データ分析の幅が大きく広がります。統計的な知識をもとに機械学習モデルを構築することで、結果の解釈がしやすくなり、精度の高い予測が可能となるケースも多々あります。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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