ITプロジェクトのリスク受容とは?

こんにちは。ゆうせいです。
「リスク受容」という言葉を聞いたことがありますか?これは、ITプロジェクトにおいて、リスクを完全に排除したり移転したりするのが難しい場合に、あえてそのリスクを受け入れる選択肢です。リスクを全て避けようとすると、逆にプロジェクトが進まなくなってしまうこともあるため、戦略的にリスク受容を選ぶことが重要な場合もあります。

今日は、この「リスク受容」について詳しく説明しますね!


リスク受容とは?

リスク受容とは、「あるリスクが発生する可能性やその影響を理解したうえで、それを許容する」というリスク管理のアプローチです。
簡単に言えば、「このリスクは仕方がないから、そのまま受け入れて進める」という考え方です。

例えば、次のような状況でリスク受容が適用されることがあります:

  • リスクが発生しても影響が小さい場合。
  • リスクを回避・軽減・移転するコストが高すぎる場合。
  • プロジェクトの進行において、リスクを受け入れるほうが合理的である場合。

ITプロジェクトでリスク受容を選択する場面

ITプロジェクトでは、次のようなリスクが「受容」されることがあります:

1. 技術的リスク

新しい技術を採用する場合、その技術が完全に成功する保証はありません。しかし、競争力を高めるためにそのリスクを受け入れることがあります。

例:

「最新のAIモデルを使えば成功率が上がるが、開発に予期しないトラブルが起きる可能性がある。それでも価値があるから試してみよう。」


2. スケジュールリスク

短納期のプロジェクトでは、予算やリソースの制約から多少の遅延が起きる可能性を受け入れることがあります。

例:

「予定より2~3日遅れる可能性はあるが、クライアントが納得しているのでスケジュールはこのまま進めよう。」


3. コストリスク

予算を厳格にコントロールすることが難しい場合、ある程度の予算超過を受け入れることがあります。

例:

「サーバー負荷対策で追加のクラウドリソースが必要になった場合、そのコストは受け入れる。」


リスク受容のメリット

リスク受容には、以下のようなメリットがあります。

1. プロジェクトを迅速に進められる

すべてのリスクを回避しようとすると、時間やリソースが過剰に消費されることがあります。受容を選ぶことで、計画を進行させるスピードが保たれます。

2. コストを削減できる

リスク回避や軽減には追加の費用がかかることが多いです。そのため、影響が小さいリスクは受け入れることで予算の節約が可能です。

3. リスク管理のバランスを取れる

すべてのリスクを軽減・回避することは非現実的です。受容を選択することで、全体のリスク管理がバランスよく進められます。


リスク受容の注意点

もちろん、リスク受容には注意点もあります。

1. 事前の影響分析が必須

リスクを受け入れる前に、そのリスクがプロジェクト全体にどのような影響を及ぼすかをしっかり分析する必要があります。「許容できるリスク」かどうかを判断することが重要です。

分析例:

  • 発生確率: 低い、中くらい、高い
  • 影響の大きさ: 小さい、中くらい、大きい
  • コスト: 受容した場合の追加コストを計算する

2. ステークホルダーと合意を取る

リスクを受け入れる際は、顧客やチームメンバーなどのステークホルダーと合意を取ることが不可欠です。特に顧客が納得していない場合、後で問題が拡大する可能性があります。


3. 最悪のシナリオに備える

リスクを受け入れるということは、「そのリスクが発生する可能性をゼロにできない」ということです。万一発生した場合の対策(バックアッププラン)を用意しておくことが重要です。


リスク受容の実施プロセス

ステップ1: リスクを特定する

プロジェクトで起こりうるリスクを洗い出します。
(例: 新技術採用の失敗リスク、納期遅延のリスク)


ステップ2: リスクを評価する

リスクの発生確率と影響度を分析し、「受容しても問題ないリスク」を絞り込みます。

  • 発生確率: 20%
  • 影響度: 小
    → このようなリスクは受容対象になり得ます。

ステップ3: 受容の条件を明確にする

受け入れるリスクの範囲を明確にして、プロジェクトチームやステークホルダーと共有します。
(例: 「納期が1週間遅れるリスクは受容するが、それ以上の遅延は許容しない」)


ステップ4: リスク発生時の対応を準備する

リスクを受容しても、何も対策を用意しないのはNGです。リスクが現実化した場合に備えて、事前に対応策を考えておきましょう。


まとめ

リスク受容は、ITプロジェクトを柔軟かつ効率的に進めるための有力な方法です。
ただし、適切なリスク分析やステークホルダーの合意、バックアッププランがなければ、プロジェクトの成功に影響を与える可能性があります。

次に進むべきステップとして、以下をおすすめします:

  1. リスク評価ツールの学習(例: リスクマトリックスの活用)
  2. リスク受容を含むリスク対応策の事例研究
  3. リスク発生時の迅速な対応方法の訓練

リスクを上手に受け入れて、効率的にプロジェクトを進めていきましょう!

セイ・コンサルティング・グループのリスクマネジメントの研修へのリンク

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。