「ページ置き換えアルゴリズムの仕組み」とは? 新人エンジニア向けに解説

こんにちは。ゆうせいです。
今日は、新人エンジニアの皆さんに「ページ置き換えアルゴリズムの仕組み」をお話しします。
ページ置き換えアルゴリズムは、仮想記憶システムの中で非常に重要な役割を果たす仕組みです。物理メモリの容量が限られている中で、効率よくメモリを使うために欠かせません。

一見複雑そうですが、仕組みを一つずつ解説するので安心してください。これを理解すれば、仮想メモリ管理の本質が見えてきますよ!


ページ置き換えアルゴリズムとは?

ページ置き換えアルゴリズムとは、物理メモリがいっぱいになったとき、どのページ(データ)をメモリから追い出すかを決める方法です。
これにより、新しいデータを効率よくメモリに格納できます。

どうしてページ置き換えが必要?

物理メモリは容量が限られていますが、仮想アドレス空間はそれを超える大きさがあります。そのため、メモリに入りきらないデータは、一部をディスク(スワップ領域)に移動しなければなりません。

例:
ゲームやブラウザ、音楽プレイヤーを同時に開いていると、メモリが不足します。そのとき、使っていないアプリのデータを一時的にスワップ領域に移動します。


ページ置き換えアルゴリズムの種類

ここでは、代表的なページ置き換えアルゴリズムをいくつか紹介します。それぞれの特徴を理解しましょう。


1. FIFO(First In First Out)アルゴリズム

最初に入ったページを最初に置き換える方法です。
ページを追加した順番を記録し、一番古いページを追い出します。

メリット

  • 実装が簡単。

デメリット

  • 最も古いページがまだ頻繁に使われている場合でも、追い出してしまう。

物理メモリ容量:3ページ
アクセス順:1 → 2 → 3 → 4

  • 1、2、3を順にメモリに格納(空きスロットがあるため問題なし)。
  • 4を格納するとき、最初に入った「1」を追い出す。

2. LRU(Least Recently Used)アルゴリズム

最近使われていないページを追い出す方法です。
過去の使用履歴を元に、最も長い間使われていないページを選びます。

メリット

  • 使用頻度の低いページを効率的に追い出せる。

デメリット

  • 実装がやや複雑で、履歴を記録するコストが高い。

物理メモリ容量:3ページ
アクセス順:1 → 2 → 3 → 2 → 4

  • 1、2、3を順にメモリに格納。
  • 4を格納する際、最も長い間使われていない「1」を追い出す。

3. OPT(Optimal)アルゴリズム

将来使われないページを優先して追い出す方法です。
理論上、最も効率的なアルゴリズムですが、将来のアクセスパターンを予測する必要があるため、現実では使えません。

メリット

  • 理論上、最小のページフォールト数を達成。

デメリット

  • 実用性が低い(未来のアクセスパターンを完全には予測できない)。

物理メモリ容量:3ページ
アクセス順:1 → 2 → 3 → 2 → 4 → 1

  • 4を格納するとき、今後最も遠い未来に使われる「3」を追い出す。

4. Clock(Second Chance)アルゴリズム

FIFOを改良した方法で、ページに「使用ビット」を持たせます。
ページが最近使われたかどうかをチェックし、使われていない場合に置き換えます。

メリット

  • LRUより効率的で、実装も現実的。

デメリット

  • 適切に設定しないと性能が低下する。

物理メモリ容量:3ページ
アクセス順:1 → 2 → 3 → 4

  • 各ページに「使用ビット」を持たせ、最近使われていない「1」を追い出す。

5. LFU(Least Frequently Used)アルゴリズム

使用回数が最も少ないページを追い出す方法です。
各ページの使用回数をカウントして、最も少ないページを選びます。

メリット

  • 使われていないページを効率的に追い出せる。

デメリット

  • カウントの管理がコスト高。
  • 最近頻繁に使われたページが低頻度だと誤って追い出す可能性がある。

物理メモリ容量:3ページ
アクセス順:1 → 2 → 3 → 2 → 4

  • 「1」が最も使用頻度が低いため、4を格納するときに追い出す。

アルゴリズムの比較

以下は、代表的なアルゴリズムを性能や実装の難易度で比較した表です。

アルゴリズムメリットデメリット実用性
FIFO実装が簡単効率が悪い場合が多い
LRU使用履歴に基づき効率的実装が複雑でオーバーヘッドが大きい
OPT理論上最も効率的実用性が低い(未来予測が困難)
Clock現実的で効率が良い設定による性能のばらつき
LFU頻度に基づく合理的な置き換え実装が難しく誤動作する可能性も

実際に試してみよう!

ページ置き換えアルゴリズムを体感するために、以下のような実験をしてみてはいかがでしょうか?

  1. シミュレーションプログラムを作る
    Pythonなどで簡単なシミュレーションプログラムを作り、FIFOやLRUの動作を確認してみましょう。
  2. OSの挙動を観察する
    LinuxのvmstatコマンドやWindowsのタスクマネージャーで、ページフォールトがどの程度発生しているかを観察します。
  3. アルゴリズムの改良に挑戦
    LRUやClockアルゴリズムを改良して、特定のアクセスパターンに対する性能を向上させる試みを行ってみましょう。

まとめと次のステップ

ページ置き換えアルゴリズムは、仮想記憶の性能を大きく左右する重要な要素です。状況に応じて適切なアルゴリズムを選ぶことが求められます。次に学ぶべき内容としては以下があります。

  • 仮想メモリのトレードオフ(性能とコスト)
  • キャッシュメモリとページ置き換えの関係
  • リアルタイムシステムにおけるメモリ管理

これらを学ぶことで、効率的なメモリ管理やパフォーマンスチューニングが可能になります。次回も新しいテーマでお会いしましょう!


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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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