知らないと危険!OSS利用で著作権侵害を避けるための「依拠性」と「類似性」のはなし

こんにちは。ゆうせいです。

「このライブラリ、便利だから自分のプロダクトに組み込んじゃえ!」

こんな風に、オープンソースソフトウェア(OSS)を気軽に使っていませんか? もちろん、OSSは私たちの開発を加速させてくれる素晴らしいものです。でも、一歩間違えると「著作権侵害」という大きな落とし穴にはまってしまう可能性があるんです。

今回は、特に新人エンジニアのあなたに知っておいてほしい、著作権侵害が成立するための2つの重要なカギ、「依拠性(いきょせい)」と「類似性(るいじせい)」について、例え話を交えながら分かりやすく解説していきますね。

著作権侵害のパズルを完成させる2つのピース

誰かが作ったプログラムのコードやドキュメントには、原則として「著作権」という権利が発生します。そして、他人の著作物を無断で利用すると著作権侵害になるわけですが、裁判などで「侵害だ!」と判断されるためには、パズルのピースのように、ある2つの要件がそろう必要があるんです。

それが、今回お話しする「依拠性」と「類似性」です。

どちらか一方だけではダメで、両方がそろって初めて著作権侵害が成立する可能性がある、と覚えておいてください。

では、一つずつ見ていきましょう!

ピース1:依拠性(いきょせい) - それ、見て作りましたよね?

まず「依拠性」から。

なんだか難しそうな言葉ですが、すごく簡単に言うと「他人の著作物をもとにして、自分の創作物を作った」ということです。

例えば、あなたが学校の美術の授業で絵を描くとします。

もし、隣の席のAくんの描いた独創的な絵をチラッと見て、「あ、この構図いいな」と思って、それを真似して自分の絵を完成させたとしましょう。この場合、あなたの絵はAくんの絵に「依拠した」と言えます。

一方で、あなたがAくんの絵を一切見ずに、全くの偶然でAくんとそっくりな絵を描き上げたとしたら?

この場合は、Aくんの絵に依拠していないので、「依拠性がない」ということになります。たとえ結果的に作品がそっくりでも、著作権侵害にはなりません。( যদিও, 複雑なソフトウェアの世界で偶然そっくりなものが生まれる可能性は、天文学的に低いですが…)

つまり、依拠性は「知っていて、それに基づいて作ったか」どうかを問うものです。

エンジニアの世界で言えば、「GitHubで見つけた誰かのコードを参考にして、自分のプログラムを書いた」という状況がこれにあたりますね。

ピース2:類似性(るいじせい) - それ、似てますよね?

次に「類似性」です。

これは言葉の通り「あなたの作ったものが、元の著作物と似ているか」どうか、ということです。

ただし、ここで一つ大きな注意点があります!

著作権が保護するのは「アイデア」ではなく「表現」だということです。

どういうことか、また例え話で考えてみましょう。

「魔法学校に通う少年が、仲間たちと冒険を繰り広げ、悪の帝王を倒す」という物語の「アイデア」があったとします。このアイデア自体は、誰でも自由に使うことができます。だから、このテーマで色々な小説や映画が作られていますよね。

しかし、「ホグワーツという名の学校で、ハーマイオニーとロンという親友と出会い、ヴォルデモート卿を倒すために奮闘するハリー・ポッターの物語」という具体的な「表現」は、著作権で固く守られています。

これをエンジニアリングの世界に置き換えると、

「タスク管理アプリを作る」という「アイデア」は誰でも自由に実現できます。

でも、特定のアプリのソースコード、ユニークなUIデザイン、具体的な機能を実現しているアルゴリズムといった「表現」をそっくりそのままコピーしてしまえば、それは「類似性がある」と判断される可能性が非常に高くなります。

つまり、類似性で問われるのは、「単なる機能やアイデアが似ている」ことではなく、「その著作物の本質的な特徴、クリエイティブな表現が似ている」かどうか、という点なのです。

依拠性と類似性の関係まとめ

ここまでの話を整理してみましょう。

状況依拠性類似性著作権侵害?
ケース1あり(他人のコードを見た)あり(コードがそっくり)侵害の可能性大
ケース2あり(他人のコードを見た)なし(全く違うコードを書いた)侵害ではない
ケース3なし(偶然の一致)あり(コードがそっくり)侵害ではない
ケース4なし(見ていない)なし(全くの別物)侵害ではない

この表を見ると分かるように、著作権侵害を避けるためには、少なくとも「ケース2、3、4」のいずれかでなければなりません。特にエンジニアとして意識すべきなのは、他人のコードを参考にする「依拠」が避けられない場面で、いかに「類似」しないように自分の表現で実装するか、という点ですね。

じゃあ、僕たちはどうすればいいの?

「じゃあ、OSSを使うのは怖いことばかりなの?」と思うかもしれません。

でも、安心してください!ちゃんとルールを守れば、OSSはあなたの最高のパートナーになります。

一番大切なことは、利用するOSSの「ライセンスを必ず確認する」ことです。

ライセンスとは、そのソフトウェアの「取扱説明書」のようなもの。「こういう条件なら自由に使っていいですよ」「もしこれを使って新しいものを作ったら、そのソースコードも公開してくださいね」といったルールが書かれています。

  • MITライセンス
  • Apacheライセンス2.0
  • GPL(General Public License)

など、様々なライセンスが存在し、それぞれに「できること」「できないこと」が定められています。

まずは、これらの有名なライセンスがどんな内容なのかを調べてみることから始めてみましょう。ライセンスを正しく理解し、そのルールを守ること。それが、意図せず著作権を侵害してしまうリスクからあなた自身を守る、最も確実な方法です。

他人の素晴らしい創作物に敬意を払い、ルールを守って正しく利用する。

この姿勢を忘れずに、これからも素晴らしい開発ライフを送ってくださいね!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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