天才に勝つ必要なし!「比較優位」で見つけるあなたの生存戦略

こんにちは。ゆうせいです。

みなさんの周りに、こんな人はいませんか?

「仕事も速いし、コミュニケーション能力も高くて、そのうえ英語もペラペラ」

いわゆる「スーパーマン」のような人です。そんな人を見ると、「自分には勝てるものが何ひとつない……」と落ち込んでしまうこと、ありますよね?私だって、そんな完璧な人を見たら自信をなくしてしまいます。

でも、安心してください。経済学の「比較優位(ひかくゆうい)」という魔法のメガネをかければ、そんなスーパーマンに対しても、あなたが勝てる(貢献できる)場所が必ず見つかるのです。

今日は、一見すると弱点だらけに見える私たちが、どうやって社会で輝くか。その逆転のロジックをお話ししましょう!


「絶対優位」と「比較優位」の違い

まず、2つの言葉を区別することから始めましょう。

1つ目は「絶対優位(ぜったいゆうい)」。

これは単純に「どちらの能力が高いか」という比較です。先ほどのスーパーマンは、あなたより仕事が速いので、あらゆる面で「絶対優位」を持っています。

2つ目が今回の主役、「比較優位(ひかくゆうい)」です。

これは「能力の高さ」ではなく、「機会費用(きかいひよう)」つまり「何を犠牲にしているか」で比較する考え方です。

少し難しいですか?高校生でもわかるように、具体的なストーリーで説明しますね。

ここに「天才部長」と「新人くん」がいます。2人は「プログラミング」と「コピーとり」の仕事をしなければなりません。

  • 天才部長:プログラミングを1時間で完了、コピーとりを10分で完了。
  • 新人くん:プログラミングに10時間かかる、コピーとりに20分かかる。

見ての通り、部長はどっちの作業も新人くんより速いです。つまり、部長は両方の作業において「絶対優位」を持っています。

じゃあ、部長が全部ひとりでやったほうがいいのでしょうか?

ここで「もったいない度(機会費用)」を計算してみましょう。数式を使いますが、日本語の部分は文字で書きますね。

コスト = 何かをするときに諦めたもの

部長が「コピーとり」をするとどうなるでしょう。たった10分ですが、部長の超高速なプログラミングの手が止まってしまいます。部長にとってのコピーとりのコストは、非常に高いのです。

一方、新人くんはどうでしょう。コピーをとっている間、プログラミングの手は止まりますが、もともと10時間もかかる作業です。部長の手が止まる損失に比べれば、新人くんの手が止まる損失(コスト)は圧倒的に小さいですよね?

つまり、新人くんは「コピーとり」において、天才部長に対して「比較優位」を持っているのです!

これを式で表すとこうなります。

部長の犠牲 > 新人くんの犠牲

たとえ作業スピードそのものが遅くても、「犠牲の少なさ」で勝負ができる。これが比較優位の面白いところです。


弱者でもチームを救える理由

この話のすごいところは、**「どんなに能力が低い人でも、必ず誰かに対して比較優位を持つ分野がある」**ということが数学的に証明されている点です。

逆に言えば、**「どんなに優秀な人でも、すべてにおいて比較優位を持つことはできない」**のです。

これを「比較劣位(ひかくれつい)」といいます。

先ほどの例で言えば、部長はコピーとりに関しては「比較劣位」にあるのです。自分がやるよりも、新人に任せたほうが(相対的に)得だからです。

メリット:Win-Winの関係が作れる

あなたが自分の「比較優位」にある仕事(相対的に得意なこと)に集中し、苦手なこと(比較劣位)を誰かに任せれば、チーム全体の生産性は最大になります。

部長はプログラミングに専念でき、新人くんはコピーとりで部長の時間を生み出せる。これぞまさにWin-Winです。

デメリット:状況によって「強み」が変わる

比較優位は、あくまで「相手との比較」で決まります。

もし、新人くんの隣に「コピーとりロボット」が来たらどうでしょう?新人くんの比較優位は消えてしまうかもしれません。常に「周りと比べて自分のポジションはどこか」を見極める必要があります。


キャリア戦略への応用:苦手を捨てろ!

さて、この理論をみなさんのキャリアにどう活かせばいいのでしょうか。

重要なのは、「なんでも平均的にできるようになろうとしないこと」です。

学校では、苦手科目を克服して、全科目の点数を底上げすることが良しとされます。しかし、ビジネスにおける比較優位の戦略は逆です。

成果 = 得意への集中 + 分業

もしあなたが「事務作業は遅いけれど、アイデア出しだけは無限にできる」というタイプなら、無理に事務処理能力を鍛える必要はないかもしれません。事務が得意な(比較優位を持つ)人にそれを任せ、あなたはアイデア出しに特化するのです。

そうすることで、相手にとっても「自分が事務をやったほうが、あの人の時間を無駄にせずに済む」というメリットが生まれます。

「苦手なことをやる」ということは、経済学的に言えば「社会全体の効率を下げている」とさえ言えるのです。ちょっと強気になれますよね?


今後の学習の指針

いかがでしたか?

「自分は何もできない」と嘆く必要はありません。あなたがやるべきなのは、誰かと比べて絶対的に勝つことではなく、自分の中にある手札を見直すことです。

これからの学習や仕事選びでは、次のステップを意識してみてください。

  1. 自分の「コスト」を知る:自分がそれをやると、どれくらい時間がかかりますか?他の大事なことを犠牲にしていませんか?
  2. 他人の「比較劣位」を探す:あのすごい人が「自分でやると時間がもったいない」と思っている雑務は何でしょう?そこがあなたの入り込む隙間です。
  3. 交換する:自分の得意(比較優位)を提供し、苦手(比較劣位)をお願いする勇気を持ちましょう。

「私がやります!」と手を挙げるその仕事が、天才たちの時間を救い、チームを救うのです。

堂々と、あなたの比較優位を磨いていってください。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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