受講生の心を動かす「監督」になれ!研修講師と映画監督の意外な共通点

こんにちは。ゆうせいです。

みなさんは、映画を見るのが好きですか?

たった2時間で、泣いたり、笑ったり、時には人生観が変わるような衝撃を受けたり。映画には不思議な力がありますよね。

では、その映画を作っている「映画監督」と、私たち「研修講師」。

一見するとまったく別の世界の住人のように思えますが、実は非常に似ている部分があるのです。

「え?講師はメガホンを持って『カット!』なんて言わないよ」と思いましたか?

確かに撮影はしませんが、受講生の心を動かし、一つのゴールへ導くという点では、講師もまた「監督」なのです。

今回は、映画監督という視点から研修講師の仕事を捉え直し、あなたの研修を「名作」に変えるためのヒントをお話しします。

研修講師と映画監督の共通点:編集(エディティング)の魔術

映画監督と研修講師の最大の共通点。それは「編集」という作業にあります。

専門用語では「エディティング」と言いますが、これは単に映像を繋ぐことだけではありません。「何を捨てるか」を決める作業のことです。

膨大な情報を削ぎ落とす勇気

映画の撮影では、実際に使われる何倍もの長さの映像を撮ります。しかし、監督はそれをバッサリと切り捨て、本当に伝えたいメッセージに必要なシーンだけを残して、2時間の映画に仕上げます。

研修講師も同じです。

講師である私たちは、そのテーマについて膨大な知識を持っています。

しかし、それを全て話そうとすると、時間がいくらあっても足りませんし、何より受講生が消化不良を起こしてしまいます。

「あれも言いたい、これも大事だ」という気持ちを抑え、今回の受講生にとって本当に必要な情報だけを選び抜く。

この「捨てる勇気」こそが、映画監督と研修講師に共通するプロの技術なのです。

シナリオ(脚本)の構成力

映画には必ず「脚本(シナリオ)」があります。

「導入」で観客の興味を引き、「展開」でハラハラさせ、「結末」で感動させる。この流れが計算されています。

研修も同じです。

「今日はよろしくお願いします」といきなり本題に入るのではなく、

「なぜ今日この研修が必要なのか(導入)」

「具体的にどうすればいいのか(展開)」

「明日からどう変わるのか(結末)」

というストーリーを描く必要があります。

講師は、受講生という観客を飽きさせないための脚本家であり、監督なのです。

研修講師と映画監督の相違点:一回性(ライブ感)

では、講師は映画監督のように、完璧に計算された作品をそのまま届ければ良いのでしょうか?

ここで、決定的な違いが登場します。それは「ライブ(生放送)」か「パッケージ(完結品)」か、という点です。

映画は「パッケージ」

映画は、一度完成すれば中身は変わりません。

今日見ても、10年後に見ても、主人公は同じセリフを喋り、同じタイミングで涙を流します。観客がどんな反応をしようと、スクリーンの中の世界は変わりません。

研修は「ライブ」

一方で、研修は「ライブ」です。

同じテキスト、同じテーマで話していても、受講生が変われば雰囲気はガラリと変わります。

もし受講生が退屈そうにしていたら、予定していた話を飛ばして面白いワークを入れる必要があるかもしれません。逆に、質問が盛り上がれば、時間を延長してでも答えるべき瞬間もあります。

映画監督は「完成品」を届けますが、研修講師は受講生と一緒にその場で「作品」を作り上げていくのです。

この「予定調和を壊す勇気」が必要な点が、映画監督とは違う、講師ならではの面白さであり難しさです。

感動を生み出すための方程式

ここで、研修を名作映画のように感動的にするための要素を、簡単な式で表してみましょう。

このバランスが崩れると、退屈な研修になってしまいます。

研修の感動 = シナリオの構成力 \times 即興(アドリブ)力

やはりここでも掛け算です。

「シナリオの構成力」とは、映画監督のように緻密に計算して準備する力のこと。

「即興(アドリブ)力」とは、目の前の受講生の反応に合わせて、その場で演出を変える力のことです。

準備は映画監督のように完璧に行い、本番ではジャズミュージシャンのように自由に振る舞う。

この二つの顔を持つことが、一流の研修講師への近道なのです。

「監督」視点を持つメリットとデメリット

講師が「自分は映画監督だ」という意識を持つことには、素晴らしい効果と、気をつけるべき落とし穴があります。

メリット

  • 全体像が見えるようになる細かい説明にとらわれず、「この研修全体を通して、受講生にどんな感情を持って帰ってほしいか」という大きな視点(これを「俯瞰(ふかん)」と言います)で物事を考えられるようになります。
  • メリハリがつく映画に静かなシーンと激しいシーンがあるように、研修にも「真剣に聞く時間」と「楽しく話す時間」のリズムを作れるようになります。

デメリット

  • 演出過剰になる感動させようとするあまり、ドラマチックすぎる演出や過度な精神論に走ってしまうことがあります。ビジネス研修の目的はあくまで「実務に役立つこと」であることを忘れてはいけません。
  • 受講生をコントロールしようとしてしまう「ここで笑うはずだ」「ここで感動するはずだ」という思いが強すぎると、予想外の反応が返ってきたときにイライラしてしまいます。受講生はあなたの作品の「出演者」ではなく、意思を持った人間であることを忘れないでください。

まとめと今後の学習指針

いかがでしたか?

研修講師は、知識を教える先生であると同時に、学びという物語を紡ぐ映画監督でもあるのです。

「情報を伝える」だけでなく「感情を動かす」ことを意識するだけで、あなたの研修は劇的に変わります。

今後の学習へのステップ

もしあなたが「もっと構成力を磨きたい」「話の組み立てをうまくしたい」と思うなら、ぜひ次のことに挑戦してみてください。

映画の「構成」をメモする

次に映画を見るときは、ただ楽しむだけでなく「分析」してみてください。

「開始何分で事件が起きたか?」

「一番盛り上がったのは終わりの何分前か?」

「静かなシーンの次はどんなシーンだったか?」

これをノートに書き出してみると、人を惹きつける物語には「型」があることが分かります。

その「型」を、ぜひあなたの次の研修の構成に取り入れてみてください。

さあ、次はあなたがメガホンを取る番です。

受講生の心に残る名作を、一緒に作り上げましょう!

それでは、またお会いしましょう!!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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