【新人エンジニア向け】連立方程式をプログラムのように解く!「逆行列」と「掃き出し法」
こんにちは。ゆうせいです。
前回は、行列の計算における「行と列の出会い」について、その独特な掛け算ルールをマスターしました。
今回は、いよいよ行列がその真価を発揮する瞬間をお見せします。テーマは、ズバリ「連立方程式」です。
中学校で習った や
の連立方程式。
「上の式を2倍して、下の式から引いて……」と、一生懸命計算した思い出がありませんか?
変数が2つならまだしも、3つ、4つと増えていくと、手計算では限界が来ます。
しかし、行列の力を使えば、どんなに複雑な連立方程式も「たった一つのシンプルな式」で表現し、システマチックに解くことができるのです。
今回は、まるでパズルを解くような爽快感がある「掃き出し法」と、行列の世界での割り算にあたる「逆行列」について解説します。
連立方程式を「変形」するとは?
まず、具体的な連立方程式を例に考えてみましょう。
これを解くとき、皆さんは無意識に次のような操作をしているはずです。
- 「下の式から、上の式の2倍を引こう」と考えて、
を消す。
- 残った
の式を整理する。
- 求まった
を上の式に代入して
を求める。
この一連の操作、実は「行列に対する変形」として書き換えることができます。
係数だけを取り出した行列を見てみましょう。
これに対して、「2行目から1行目の2倍を引く」といった操作を行い、最終的にシンプルな形(答えがすぐわかる形)に変形していく。これが「行基本変形(ぎょうきほんへんけい)」と呼ばれるテクニックです 。
行基本変形の3つのルール
操作は難しくありません。使える魔法は次の3つだけです。
- ある行を何倍かする(例:2行目を
倍する)。
- ある行に、別の行の何倍かを加える(例:2行目に1行目の
倍を加える)。
- 行と行を入れ替える。
この操作を繰り返して、最終的に次のような形を目指します。
つまり、係数の行列が次の形になればゴールです。
この形になったとき、右辺の数字がそのまま答えになります 。
行列の世界の「1」と「割り算」
さて、ここで登場した という行列。
左上から右下への対角線上に が並び、それ以外が
であるこの行列を、「単位行列(たんいぎょうれつ)」と呼びます 5。
単位行列 
これは、数の世界でいう「1」と同じ役割を持ちます。
であるように、どんな行列
に単位行列
を掛けても、元の
のまま変化しません 。
逆行列 
では、数の世界でいう「逆数(割り算)」はあるのでしょうか?
のように、ある行列
に掛け合わせると、答えが単位行列
(つまり1)になるような行列。
それを「逆行列(ぎゃくぎょうれつ)」と呼び、 と書きます。
これがあると何が嬉しいのでしょうか?
連立方程式を行列で書いた式 を思い出してください。
もし の逆行列
がわかっていれば、両辺に左から
を掛けるだけで一発で答えが出ます。
つまり、「逆行列を求めること」=「連立方程式を解くこと」なのです 。
逆行列を求めるアルゴリズム「掃き出し法」
では、その便利な逆行列はどうやって求めればいいのでしょうか?
ここで登場するのが「掃き出し法(はきだしほう)」です 。
これは、先ほどの「行基本変形」を使った賢い手順です。
言葉で説明するより、配置を見ると一目瞭然です。
元の行列 の隣に、単位行列
を並べて書きます 。
そして、左側の行列が単位行列になるように、行基本変形を行っていきます。
すると不思議なことに、同じ操作を右側の単位行列にも適用すると、最終的に右側に現れるのが逆行列 なのです。
やってみよう
- 左側を変形する :左下の
を消したいので、1行目を
倍して2行目に足します 12。
- さらに変形 :2行目を
倍してシンプルにします。
- 仕上げ :右上の
を消したいので、2行目を
倍して1行目に足します。
これで左側が単位行列になりました。
このとき、右側にできあがった こそが、求めていた逆行列です !
今回のまとめ
今回は、連立方程式を行列の力で解く方法について解説しました。
- 行基本変形 :式を足したり引いたりする操作を行列上で行うこと。
- 単位行列
:掛け算しても相手を変えない、行列界の「1」。
- 逆行列
:行列界の「割り算」。掛けると単位行列になる。
- 掃き出し法 :行基本変形を使って、機械的に逆行列を求めるアルゴリズム。
一見複雑に見える連立方程式も、この手順(アルゴリズム)に従えば、コンピュータを使って一瞬で解くことができます。これが、プログラミングやデータ解析で行列が重宝される理由の一つです。
しかし、世の中には「どうしても解けない連立方程式」や「逆行列が存在しない行列」も存在します。
「逆数が存在しない数」なんてあるの? と思うかもしれませんが、 で割ることができないのを思い出してください。
次回は、そんな特異なケースを見極めるための重要な指標、「行列式(ぎょうれつしき)」について解説します。
「面積」の概念を使うと、行列の性質が手に取るようにわかりますよ。
それでは、また次回お会いしましょう!
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。
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