生命保険は本当に必要?「遺族年金」を知れば保険料はもっと安くなる

こんにちは。ゆうせいです。

研修講師の皆さん、ライフプランや福利厚生の講義で「死」について語るのは、どうしても空気が重くなりがちですよね。

「もしあなたが死んだら……」なんて切り出すと、新入社員は居心地が悪そうにしますし、講師としてもあまり脅したくはありません。

ですが、この「遺族年金(いぞくねんきん)」こそ、会社員が持っている最強の隠しアイテムなのです。

これを正しく理解していれば、民間の生命保険に高いお金を払う必要がなくなるかもしれません。毎月の固定費を削減できるポジティブな話題として、受講生の目を輝かせる解説法をお伝えします。

遺族年金は「国が運営する生命保険」

まず、遺族年金のイメージを「お年寄りの制度」から「現役世代のための生命保険」に変えてもらいましょう。

私たちが払っている社会保険料には、実は数千万円クラスの死亡保障が自動的についています。

もし民間の保険会社で同じ内容の契約をしようとしたら、月額数万円は取られるでしょう。それが、厚生年金保険料という「セット料金」の中にコミコミになっているのです。

では、どんな時に、誰が、いくらもらえるのか。ここでも「2階建て」の構造を使って整理します。

1階と2階で「守る相手」が違う

年金制度の1階(国民年金)と2階(厚生年金)は、遺族年金においても役割が異なります。ここが最大のポイントです。

1階:遺族基礎年金(いぞくきそねんきん)

これは「子供を守るための保険」です。

非常に重要なルールがあります。それは、「18歳未満の子供」がいないと1円ももらえないということです。

亡くなった人に養われていた「子供がいる配偶者」か、「子供自身」だけが受け取れます。子供がいない夫婦の場合、片方が亡くなってもこの1階部分は支給されません。

2階:遺族厚生年金(いぞくこうせいねんきん)

これが会社員の特権、「家族を守る保険」です。

対象範囲が広く、子供がいなくても、配偶者や親などが受け取れる可能性があります(優先順位や年齢条件あり)。

つまり、会社員が亡くなった場合、子供がいれば「1階+2階」のダブル受給、子供がいなくても「2階」は受け取れる可能性が高いのです。自営業(1階のみ)の人と比較して、圧倒的に手厚い保障と言えます。

もらえる金額の計算式イメージ

では、具体的にどれくらいもらえるのでしょうか。詳細な計算は複雑なので、研修で使える「ざっくりとした公式」を紹介します。

遺族基礎年金(1階)

定額制です。

令和6年度の基準で言うと、以下のようになります。

基本額(約81万6000円) + 子供の数に応じた加算

子供が1人なら、年間約105万円。子供が2人なら、約128万円です。これが子供が18歳になるまで(厳密には18歳到達年度の末日まで)続きます。

遺族厚生年金(2階)

こちらは給料の額によって変わりますが、魔法の数字「4分の3」を覚えてください。

受給額 = 本来もらえるはずだった老齢厚生年金 \times 3 \div 4

現役世代で亡くなった場合、加入期間が短くて年金額が少なくなりそうですが、そこは安心してください。「短期要件」という救済措置があり、

「もし300ヶ月(25年)働いていたとしたら」という仮定で計算してくれます。

平均的な収入の会社員であれば、1階と2階を合わせて月額10万円〜15万円程度になることが多いです。年間150万円だとしても、20年受け取れば3000万円です。これが「数千万円クラスの保険」と言われる理由です。

講師が教えるべき「落とし穴」

素晴らしい制度ですが、知らないと損をする落とし穴もあります。公平な視点としてここも伝えましょう。

1. 夫と妻で条件が違う

非常に現代的ではない部分ですが、残されたのが「妻」か「夫」かで条件が異なります。

  • 妻が遺族の場合: 年齢などの条件が緩く、比較的もらいやすいです。特に30歳未満の子供のいない妻でも、5年間は給付されるなどの措置があります。
  • 夫が遺族の場合: 妻が亡くなった時に夫が55歳未満だと、遺族厚生年金はもらえません

「専業主夫」などの家庭が増えている今、このジェンダーギャップは知っておくべきリスクです。

2. 再婚すると失権する

遺族年金は「亡くなった人に養われていた人の生活保障」です。再婚(事実婚を含む)をして新しいパートナーができると、「養う人ができた」とみなされ、支給が打ち切られます。

メリットとデメリット

メリット

  • インフレに対応: お金の価値が変われば、支給額もある程度調整されます。固定額の民間保険にはない強みです。
  • 終身保障(ケースによる): 遺族厚生年金は、条件を満たせば一生涯受け取れる場合があります。

デメリット

  • 金額が生活費全額には届かない: 月額10数万円では、今の生活水準を維持するには足りないかもしれません。あくまで「ベース部分」です。
  • 子供が巣立つと減る: 子供が18歳を過ぎると「遺族基礎年金」がなくなります(中高齢寡婦加算というフォロー制度はありますが)。

研修での活用法:民間の保険に入る前に

講師の皆さんは、受講生にこう問いかけてみてください。

「皆さん、社会人になったからといって、言われるがままに高い生命保険に入ろうとしていませんか?」

民間保険の営業担当者が提案する「必要保障額(死んだあとに必要な総額)」から、この「遺族年金の見込み額」を差し引いてみましょう。

必要保障額 - 遺族年金 - 貯金 - 会社の死亡退職金 = 本当に必要な民間保険の額

この計算をすると、独身の若者や、共働きの夫婦であれば、高額な死亡保険はほとんど不要(または最低限で良い)という結論になることが多いのです。

「保険料を節約して、その分を自己投資や資産運用に回そう」。そう提案できれば、受講生の目の色は変わります。

まとめ

今回は、会社員の頼れるセーフティネット「遺族年金」について解説しました。

  • 遺族年金は、社会保険料に含まれている「最強の生命保険」
  • 1階(基礎)は「子供のため」、2階(厚生)は「家族のため」
  • 民間の保険に入る前に、まず自分が国からいくらもらえるかを知るべき

「死」をタブー視せず、「残された家族への最初のプレゼント」として遺族年金の知識を持ち帰ってもらいましょう。

今後の学習の指針

ここまで学んだら、次は「iDeCo(イデコ)」などの私的年金における死亡時の取り扱いについて調べてみてください。

iDeCoで積み立てた資産は、本人が亡くなった場合どうなるのか。「死亡一時金」として遺族が受け取れるのですが、そこには「みなし相続財産」として相続税の対象になる……といった、少しディープなお金の話が待っています。

それでは、またお会いしましょう。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。