保険料が高いと、将来の見返りもデカい?「課金額」と「リターン」の残酷な仕様
こんにちは。ゆうせいです。
新人エンジニア研修の講師の皆さん、受講生のモチベーション管理は順調でしょうか。
初任給の明細を手にした彼らが、真っ先に直面するバグ報告(クレーム)といえば、やはり「社会保険料」です。
「思ったより手取りが少ない」
「こんなに高い保険料を引かれているんだから、将来ものすごい金額が戻ってくるんですよね?」
彼らの素朴な疑問に対し、ただ「法律だから」と答えるのはナンセンスです。エンジニアは論理的な生き物。「インプット(支払額)」と「アウトプット(受給額)」の相関関係を明確に示せば、納得してくれます。
今回は、社会保険料の多寡が受給額にどう影響するのか。その「仕様」を、IT用語を交えて解説する方法をお伝えします。
結論:システムによって「仕様」が異なる
まず、結論からズバリ伝えましょう。社会保険というシステムは、大きく2つのサブシステムで構成されており、それぞれ課金ロジックが異なります。
- 健康保険: どれだけ課金してもサービスは同じ(定額サブスク型)
- 厚生年金・雇用保険: 課金すればするほどリターンが増える(Pay to Win型)
これらを混同していると、システムの全体像が見えません。それぞれ詳しく解説しましょう。
1. 健康保険:完全平等の「定額制プラン」
残念ながら(あるいは幸いなことに)、健康保険料をたくさん払っているからといって、病院でVIP待遇を受けられるわけではありません。
新入社員も、年収数千万円の社長も、病院の窓口で支払うのは同じ「3割負担」です。
- 高額課金ユーザー(高所得者): 毎月数万円払っても、3割負担。
- 低額課金ユーザー(新入社員): 毎月数千円でも、3割負担。
むしろ、「高額療養費制度(医療費が高額になった時の払い戻し)」においては、高所得者ほど自己負担の上限額が高く設定されています。つまり、高所得者の方がシステムへの貢献度(負担)が高いのです。
これをエンジニアに説明する時は、こう伝えてください。
「健康保険は、サーバー維持費みたいなもの。アクセス数(利用頻度)や帯域(収入)に関わらず、全員がシステムを支えるために負担する『相互扶助』のコストだよ」
2. 厚生年金・雇用保険:実績連動の「従量課金リターン」
一方で、働くことに関する保険は、支払った額がダイレクトに将来の給付に反映されます。ここは声を大にして「払い損ではない」と伝えましょう。
厚生年金:ログが全て保存される
将来もらえる老齢厚生年金の額は、現役時代の「標準報酬月額(給料のランク)」と「加入期間」で決まります。
年金額 現役時代の平均給与
加入月数
高い保険料を払っていた(=高い給料をもらっていた)エンジニアは、その分だけ将来の年金額が増えます。これは、データベースにしっかりと「高額納税ログ」が記録され、受給時に参照されるからです。
雇用保険・労災保険:直近のキャッシュメモリを参照
失業した時にもらえる「失業保険」や、病気で休んだ時の「傷病手当金(これは健康保険から出ますが計算式は報酬連動)」は、「休む直前の給料」をベースに計算されます。
給付額 直近の給料
50〜80
つまり、給料が高くて高い保険料を払っていた人は、いざという時の補償額も手厚くなります。ハイスペックなエンジニアほど、ダウンした時のリカバリーコストも高く見積もられているわけです。
知っておくべき「レベルキャップ(上限)」
ここで、優秀なエンジニアならこう考えるはずです。
「じゃあ、死ぬほど稼いで保険料を払い続ければ、将来は億万長者並みの年金がもらえるのか?」
答えはNOです。このゲームには「レベルキャップ(カンスト)」が存在します。
社会保険料の計算に使われる給料ランク(標準報酬月額)には上限があります。
- 健康保険の上限: 月給139万円
- 厚生年金の上限: 月給65万円
例えば、月給100万円の人と300万円の人を比較してみましょう。
厚生年金の世界では、どちらも「月給65万円のユーザー」として扱われます。払う保険料も同じなら、将来もらえる年金額も同じです。
つまり、ある一定ラインを超えると「課金効率」は変わらなくなります。これを超高所得者の「逆進性」と呼んだりしますが、新人エンジニアにとってはまだ先の「エンドコンテンツ」の話かもしれませんね。
研修でのキラーフレーズ
講義のまとめとして、次のように伝えてあげてください。
「健康保険料が高いことに文句を言いたくなる気持ちはわかる。でも、それは日本という巨大なセーフティネットの『サーバー維持費』だと思って割り切ろう」
「その代わり、厚生年金や雇用保険は、自分の将来への『積み立て投資』だ。給料が上がって保険料が増えるのは、将来の自分のステータスを強化していることと同じ。だから、安心してスキルアップして、年収を上げていこう」
こう言えば、彼らも「給料アップ=保険料アップ」をネガティブに捉えすぎず、前向きにキャリアを積む意欲を持ってくれるはずです。
まとめ
今回は、社会保険料の多寡と受給額の関係について解説しました。
- 健康保険: 払う額とサービス内容は無関係(完全平等)。
- 年金・雇用・労災: 払う額に比例して、受給額も増える(実績連動)。
- 上限の存在: 厚生年金には「月給65万円」という課金上限がある。
「天引き」の仕組みをブラックボックスにせず、ロジックを理解すること。それが、賢いエンジニアへの第一歩です。
今後の学習の指針
さらに実務的なテクニックを教えたい場合は、「4月、5月、6月の残業代」がその年の社会保険料を決める(定時決定)という仕様について教えてあげてください。
「春に残業しすぎると、等級が上がって1年間の手取りが減る」というバグ……ではなく仕様を知っているかどうかで、彼らの働き方は変わるはずですよ。
それでは、またお会いしましょう。ゆうせいでした。
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。
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