【新人エンジニア研修】「貸し倒れ引当金」はシステムの「例外処理」と同じ?会計の備えを学ぶ

こんにちは。ゆうせいです。

新人エンジニアの研修を担当されているみなさん、日々の講義お疲れ様です。

エンジニアのみなさんは、プログラミングやシステム設計のスキルはメキメキ上達していることでしょう。でも、いざ業務システムを作る段になると、仕様書に出てくる「会計用語」にフリーズしてしまうことはありませんか。

特にこの言葉。

「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」

漢字が6文字も並んでいて、なんだか威圧感がありますよね。「お金を借りて倒れる? どういうこと?」と混乱する新人さんも多いはずです。

しかし、この概念は私たちエンジニアが普段やっている「ある考え方」と非常に似ているのです。

今日は、この難しそうな会計用語を、システムの「バッファ」や「例外処理」に例えて、直感的に理解できるように解説します。これを知れば、金融系システムの開発も、自社の決算書を見るのも、少し楽しくなるはずです。

「ツケ払い」にはリスクがある

まず、ビジネスの基本ルールからお話ししましょう。

日本の企業の取引の多くは、「掛け(かけ)」で行われます。

これは要するに、「商品は先に渡すけど、代金は来月末に振り込んでね」という後払いの約束、いわゆる「ツケ」のことです。この、まだもらっていない代金の権利を「売掛金(うりかけきん)」と呼びます。

ここで質問です。

「来月末に払うよ」という約束は、100パーセント守られるでしょうか。

残念ながら、答えはNOです。

取引先が倒産したり、資金繰りが悪化したりして、「ごめん、払えなくなっちゃった」と言われることがあります。これが「貸倒れ(かしだおれ)」です。お金が返ってこなくて、バタリと倒れてしまうイメージですね。

未来の失敗を、いま予測する

もし、100万円のシステムを納品して、それが貸倒れになったらどうなるでしょう。

100万円の損が発生しますよね。

問題は、その「損」をいつ計上するかです。

実際に相手が倒産したときでしょうか。

ここで登場するのが「貸倒引当金」です。

会計の世界では、「将来これくらいは返ってこないかもしれないな」という金額を、あらかじめ予測して、今のうちに「損」として計上しておくルールがあるのです。

これをエンジニアの言葉で翻訳してみましょう。

みなさんがプロジェクトのスケジュールを立てるとき、「すべてが順調に進む」前提で引きますか。引きませんよね。

「サーバーがダウンするかもしれない」「仕様変更があるかもしれない」と考えて、あらかじめ数日の「バッファ(予備日)」を設けるはずです。

貸倒引当金とは、まさにこの**「会計上のバッファ」**なのです。

「売上のうち、過去の統計から見て 1 % くらいは回収不能になるエラーが発生しそうだな」

そう予測して、あらかじめ利益からマイナスしておく。これが貸倒引当金の正体です。

なぜそんなネガティブなことをするのか

「実際に損してから記録すればいいじゃないですか。なんでわざわざ先に損にするんですか?」

そんな鋭い質問が飛んでくるかもしれません。

これには「費用収益対応の原則(ひようしゅうえきたいおうのげんそく)」という、会計のかっこいいルールが関係しています。

例えば、2023年に売上が上がったとします。その売掛金が2024年に貸倒れになったとしましょう。

もし2024年に損を計上すると、「2023年はめっちゃ儲かった!」という記録と、「2024年は急に大損した!」という記録が残ります。

これでは、会社の本当の実力がわかりにくくなってしまいますよね。

2023年の売上に伴うリスクなのだから、2023年のうちに「見込みの損」として計上しておくほうが、成績表としては誠実だよね、という考え方なのです。

プログラムで言えば、エラーが起きてから慌てるのではなく、あらかじめ try-catch 文を書いて、例外が発生したときの処理をコードの中に組み込んでおくのと似ています。

メリットとデメリット

この仕組みの良し悪しを整理しておきましょう。

メリット:経営が安定する

突然の倒産劇があっても、「想定内」として処理できます。

引当金を計上しているということは、リスク管理ができている証拠です。株主や銀行からも「この会社はちゃんとしているな」と信用されます。

デメリット:利益が減って見える

まだ実際には損をしていないのに、計算上は「費用」として扱われるため、その期の利益が減ってしまいます。

また、「いくら引当てるか」の計算(見積もり)が難しく、ここを適当にやると粉飾決算(嘘の報告)を疑われる原因にもなります。

今後の学習の指針

いかがでしたか。

「貸倒引当金」という漢字の塊が、少し身近な「転ばぬ先の杖」に見えてきたでしょうか。

この知識を足がかりに、新人エンジニアのみなさんは次のステップへ進んでみてください。

まずは、自分の会社や、有名なIT企業の「決算書(貸借対照表)」を見てみることです。

「流動資産」という項目の中に、「受取手形及び売掛金」という行があり、そのすぐ下に、マイナスの数字で「貸倒引当金」が書かれているはずです。

「おっ、この会社はこれくらいのリスクを見積もっているんだな」

そう読み取ることができれば、あなたはもう単なるプログラマーではありません。ビジネスの数字が読めるエンジニアへの第一歩を踏み出しています。

それでは、またお会いしましょう。

セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。