やる気が出ないのはなぜ? モチベーション理論から考える「自分と相手のやる気スイッチ」

皆さん、こんにちは!

突然ですが、皆さんは「今日はどうも仕事のやる気が出ないなぁ……」と感じることはありませんか?

朝から仕事がはかどる日もあれば、なかなかエンジンがかからない日もありますよね。

ところが、不思議なことに、仕事ではやる気が出ないのに、趣味やゲーム、旅行の計画となると、急に元気になる人もいます。

「仕事では疲れているのに、好きなことなら何時間でもできる!」

なんとも不思議な現象です(笑)。

実は、人間のやる気には、心理学や経営学で研究されてきたさまざまな仕組みがあります。

今回は、チームビルディングやモチベーションアップの研修でも取り上げている「モチベーション理論」について、身近な事例を交えながらご紹介します。

自分自身のやる気を理解するだけでなく、職場の仲間や部下、後輩との関わり方を考えるヒントにもなれば嬉しいです。

1.モチベーションとは、そもそも何でしょうか?

モチベーションという言葉は、一般的に「やる気」や「意欲」という意味で使われています。

心理学では、人が行動を始め、その行動を一定の方向に向け、継続するための心理的な働きとして捉えられています。

モチベーションを考える際には、主に次の3つが重要です。

観点意味具体例
方向何に向かって行動するか仕事、勉強、趣味
強さどのくらい努力するか集中して取り組む
持続性どのくらい続けるか毎日少しずつ学習する

例えば、休日はゲームに夢中なのに、仕事になるとやる気が出ない人がいたとします。

この人は、モチベーションが低いのでしょうか?

少し考えてみてください。

答えは、必ずしもそうではありません。

ゲームに対する意欲は十分にあります。つまり、仕事とゲームでは、モチベーションの向いている方向が違うのです。

「やる気がない!」と決めつける前に、「何に対してなら意欲が湧くのだろう?」と考えることが大切なのですね。

2.モチベーションは、いつから研究されているのでしょうか?

仕事におけるモチベーション研究は、20世紀前半から大きく発展しました。

産業化が進み、企業が多くの人を雇用するようになると、経営者たちは一つの疑問を持つようになります。

「どうすれば、従業員が意欲的に働き、生産性を高められるのだろう?」

当初は、賃金や労働時間、照明などの作業環境が重視されていました。

ところが、研究が進むにつれて、人間関係や承認、達成感などの心理的な要因にも注目が集まるようになったのです。

ホーソン実験が教えてくれたこと

1920年代から1930年代にかけて、アメリカのホーソン工場で、労働条件と生産性に関する一連の研究が行われました。

照明や休憩時間などを変えることで、作業効率がどのように変化するのかを調べたのです。

研究を通じて、物理的な環境だけでなく、職場の人間関係や集団の規範、働く人の心理的な側面も重要だと考えられるようになりました。

研究対象として注目されること自体が行動に影響する現象は、「ホーソン効果」として知られています。

ただし、ホーソン実験の結果には、その後の再分析によって疑問も示されています。「注目するだけで必ず生産性が上がる」と断定できるわけではありません。

それでも、働く人を単なる労働力としてではなく、感情や人間関係を持つ存在として理解する視点は、現在のマネジメントにも通じています。

3.マズローの欲求5段階説とは?

モチベーションを理解するうえで、よく知られているのが心理学者アブラハム・マズローの「欲求階層説」です。

マズローは、人間の欲求を大きく5つに分類しました。

段階欲求身近な例
第5段階自己実現の欲求自分の可能性を広げたい
第4段階承認の欲求認められたい、評価されたい
第3段階所属と愛情の欲求仲間が欲しい、つながりたい
第2段階安全の欲求安心して暮らしたい
第1段階生理的欲求食べたい、眠りたい

基本的な欲求がある程度満たされると、より高次の欲求が重要になっていくと考えたのです。

例えば、お腹がペコペコのときに、

「さあ、将来の自己実現について考えましょう!」

と言われても、

「その前に、お昼ご飯を食べさせてください!」

となりそうですよね(笑)。

職場でも同じことが考えられます。

安心して働ける環境が整っていなければ、成長や挑戦について考える余裕が生まれにくい場合があります。

ただし、人間の欲求が必ず5段階の順番どおりに満たされるというわけではありません。

生活が厳しくても夢を追いかける人もいれば、十分な収入があっても人間関係に悩む人もいます。

欲求階層説は、人間が何を求めて行動するのかを考えるための、一つの有用な枠組みなのです。

4.ERGモデル――人が求めるものは3つに分けられる

マズローの理論を発展させたものに、クレイトン・アルダーファーが提唱した「ERG理論」があります。

ERGとは、3つの欲求を表す英語の頭文字です。

欲求英語仕事での具体例
生存欲求Existence安定した収入、働きやすい環境
関係欲求Relatedness仲間との信頼関係、良好な人間関係
成長欲求Growth新しい挑戦、知識や能力の向上

3つの欲求は、同時に存在する

ERG理論の特徴は、3つの欲求が必ずしも順番に現れるわけではないという点です。

例えば、ある社員は、

「安定した収入も欲しいし、職場の仲間とも仲良くしたい。そして、自分自身も成長したい!」

と考えているかもしれません。

欲張りでしょうか?

いえいえ、とても自然なことですよね。

また、成長したいのに挑戦の機会が得られない場合、人間関係や待遇など、別の欲求をより重視するようになることもあります。

ERG理論では、このような欲求の変化も説明しています。

自分のやる気スイッチが、相手と同じとは限らない

ここで、少し考えてみましょう。

皆さんが今、仕事で一番大切にしたいものは何でしょうか?

A.安定した収入や働きやすい環境

B.仲間との良好な人間関係

C.新しいことへの挑戦や成長

どれを選びましたか?

例えば、自分がCの「成長」を大切にしているとします。

そこで後輩にも、

「新しい仕事に挑戦してみよう! きっと成長できるよ!」

と声をかけました。

ところが、後輩は今、Aの「安定」を一番大切にしていたらどうでしょう?

「新しい仕事より、まずは今の仕事を安心してできるようになりたいんですけど……」

と思うかもしれません。

つまり、自分にとってのやる気スイッチが、相手にとっても同じとは限らないのです。

チームビルディングでは、相手が何を大切にしているのかを知ることが重要になります。

5.ハーズバーグの二要因理論――不満をなくしても、やる気が高まるとは限らない

続いて、フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」をご紹介します。

ハーズバーグは、仕事に対する満足と不満を説明する要因を、大きく2つに分けました。

「衛生要因」と「動機づけ要因」です。

衛生要因とは?

衛生要因とは、不十分な場合に仕事への不満を生みやすい要因です。

例えば、給料、労働条件、職場環境、人間関係、会社の方針などが挙げられます。

暑すぎるオフィスで仕事をしている場面を想像してみてください。

「暑い! 集中できない!」

そこでエアコンが修理され、快適な室温になりました。

「よかった! これで仕事ができる!」

不満は解消されましたね。

しかし、エアコンが直っただけで、

「よーし! 明日から仕事が楽しくて仕方がないぞ!」

とまで感じるでしょうか?

そこまではいかないかもしれません(笑)。

動機づけ要因とは?

一方、動機づけ要因とは、仕事そのものへの満足感や意欲を高める要因です。

達成感、承認、責任、成長、仕事そのものの面白さなどが挙げられます。

例えば、難しい仕事を任され、試行錯誤しながら完成させたとします。

「やった! 自分にもできた!」

そんな達成感は、次の仕事への意欲につながります。

二要因理論のポイントは、「不満を減らすこと」と「満足感を高めること」は必ずしも同じではないという考え方です。

ただし、現実には給与や人間関係が意欲を高める場合もあり、2つの要因を完全に切り離せるわけではありません。

職場では、働きやすい環境を整えることと、達成感や成長を感じられる機会をつくることの両方が大切ですね。

6.期待理論――人は「頑張れば報われる」と思えると行動しやすい

次にご紹介するのは、ビクター・ブルームの「期待理論」です。

期待理論では、人が努力しようとする意欲は、主に3つの要素によって左右されると考えます。

動機づけ = 期待 × 道具性 × 誘意性

日本語に置き換えると、

やる気 = 努力が成果につながる見込み × 成果が報酬につながる見込み × 報酬の魅力度

という考え方です。

例えば、資格試験に挑戦するとしたら?

ある社員が資格取得を目指しているとします。

「勉強すれば合格できそうだ!」

これは、努力が成果につながるという期待です。

「合格すれば、会社から評価される!」

これは、成果が報酬につながるという期待です。

「評価されれば、希望する仕事に挑戦できる!」

これは、報酬の魅力度に関係します。

3つの要素がそろうと、努力する意欲が高まりやすくなります。

一方で、

「どれだけ頑張っても合格できそうにない」

「合格しても何も変わらない」

「そもそも、その報酬に魅力を感じない」

と思っていたら、意欲は高まりにくいでしょう。

ここで重要なのは、報酬はお金だけではないという点です。

感謝されること、認められること、希望する仕事を任されることも、その人にとって価値のある報酬になります。

7.内発的動機づけと外発的動機づけ――ご褒美は逆効果になる?

ここで、ちょっとしたクイズです!

ある会社で、新しいゲームが開発されました。

社員にゲームを体験してもらうため、2つのチームを用意しました。

Aチームには、

「ゲームに参加してくれたら、1,000円を支払います」

と伝えます。

一方、Bチームには、

「新しく開発されたゲームに挑戦してみませんか?」

とだけ伝えました。

さて、どちらのチームが積極的に参加するでしょうか?

実は、この条件だけでは判断できません。

Aチームには報酬を目的に参加する人がいるでしょうし、Bチームにはゲームそのものに興味を持って参加する人がいるかもしれません。

ここで登場するのが、2種類の動機づけです。

外発的動機づけ

外発的動機づけとは、報酬や評価、罰の回避など、活動そのものとは別の結果を得るために行動することです。

例えば、「賞与が欲しいから頑張る」「叱られたくないから仕事をする」といった場合です。

内発的動機づけ

内発的動機づけとは、活動そのものに面白さや興味、楽しさを感じて行動することです。

例えば、「プログラミングが面白くて、つい時間を忘れてしまう」といった場合です。

アンダーマイニング効果とは?

さて、先ほどのゲームの話に戻りましょう。

1週間後、Aチームへの報酬をなくしたら、どうなるでしょうか?

「えっ、もう1,000円もらえないの? それなら参加しなくてもいいかな」

と思う人がいるかもしれません。

さらに興味深いのは、もともとゲームが好きだった人でも、報酬を与えられることで、ゲーム自体への興味が低下する場合があることです。

このように、外的な報酬によって、もともと持っていた内発的動機づけが低下する現象を「アンダーマイニング効果」と呼びます。

ただし、報酬が必ず逆効果になるわけではありません。

報酬が予告されているか、行動をコントロールするように感じられるか、能力を認めるものとして受け止められるかなどによって、影響は異なります。

大切なのは、報酬の有無だけでなく、与え方なのですね。

8.にゃんこから学ぶ、やる気スイッチの不思議

ここで、少しにゃんこのお話です。

例えば、猫じゃらしで遊ぶのが大好きなにゃんこがいるとします。

猫じゃらしを動かすと、目をキラキラさせて追いかけます。

ところが、飼い主が一生懸命に新しいおもちゃを買ってきても、まったく興味を示さないことがあります。

そして、なぜかおもちゃが入っていた段ボール箱の方に夢中!

「そっちなの!?」

思わず突っ込みたくなりますよね(笑)。

猫の行動と人間のモチベーション理論をそのまま同じものとして説明することはできませんが、身近な例として考えると面白いものです。

人間も、周囲が「きっと喜ぶはず!」と思って用意したものに、必ずしも魅力を感じるとは限りません。

上司が良かれと思って与えた仕事や報酬も、部下にとってはそれほど嬉しくない場合があります。

相手が何を好み、何に興味を持っているのか。

日頃から観察し、コミュニケーションを取ることが大切なのですね。

9.チームのモチベーションを高めるには?

ここまで、さまざまなモチベーション理論をご紹介してきました。

では、実際の職場では、どのように活用すればよいのでしょうか?

私が大切だと考えるのは、次の5つです。

① 安心して働ける環境を整える

適切な労働条件や相談しやすい環境は、仕事に集中するための土台になります。

② 一人ひとりの価値観を知る

安定を重視する人もいれば、人間関係や成長を大切にする人もいます。

自分の価値観だけで判断しないことが重要です。

③ 小さな達成感を積み重ねる

大きな目標だけでなく、小さな成功体験も意欲につながります。

「できた!」という経験を大切にしたいですね。

④ 努力や成果を具体的に認める

「よく頑張ったね」だけでなく、

「今回の資料は、相手に伝わるように図を工夫していたね」

と具体的に伝えることで、本人の取り組みが認められたと感じやすくなります。

⑤ 仕事の意味や目的を共有する

「なぜ、この仕事をするのか?」

目的が分かることで、日々の仕事に意味を見いだしやすくなります。

ただし、どの方法が有効かは、人や状況によって異なります。

だからこそ、一人ひとりとの対話が欠かせないのです。

10.まとめ――やる気スイッチは、人によって違う

今回ご紹介したモチベーション理論を振り返ってみましょう。

理論主な考え方職場でのヒント
マズローの欲求階層説人にはさまざまな段階の欲求がある基本的な安心も大切にする
ERG理論生存・関係・成長の欲求は同時に存在する相手の重視する欲求を知る
ハーズバーグの二要因理論不満の解消と満足感の向上は異なる環境整備と達成感の両方を考える
ブルームの期待理論努力・成果・報酬のつながりが意欲に影響する頑張りが報われる見通しをつくる
内発的・外発的動機づけ興味や楽しさ、報酬などが行動を促す報酬だけに頼らない
アンダーマイニング効果外的報酬が内発的動機づけを弱める場合がある報酬の与え方に配慮する

モチベーションは、単純に「高い」「低い」だけで説明できるものではありません。

何に向かっているのか。

何を大切にしているのか。

どのような環境で意欲が高まるのか。

そして、その答えは人によっても、時期によっても変わります。

チームビルディングで大切なのは、全員のやる気スイッチを同じ場所にそろえることではありません。

一人ひとりの違いを理解し、それぞれが力を発揮できる環境をつくることです。

最後に、皆さんに3つ質問させてください。

「最近、仕事でモチベーションが上がったのは、どんな瞬間でしたか?」

「職場の仲間は、どんなときに嬉しそうにしていますか?」

「明日から、相手のやる気スイッチを知るために、何ができそうですか?」

まずは、自分自身のモチベーションを振り返ることから始めてみてください。

そして次のステップとして、自己決定理論や目標設定理論なども学んでみると、モチベーションへの理解がさらに深まります。

やる気を無理に引き出そうとするのではなく、やる気が自然に生まれやすい関わり方を考える。

そんな小さな積み重ねが、働きやすく、前向きなチームづくりにつながるのではないでしょうか。

皆さんの職場にも、素敵な「やる気スイッチ」がたくさん見つかりますように!(^^)




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投稿者プロフィール

田渕講師
田渕講師
セイ・コンサルティング・グループ株式会社専務取締役
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
アンガーマネジメントファシリテーター、コンサルタント
ハッピーな人生を送る秘訣は「何事も楽しむ!」ことにあり。
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