視点を変えてみる―AI時代を導くリーダーに必要な「俯瞰力」とメタ認知

今日のリーダーシップ研修で、「視点を変える」というお話をしました。

仕事をしていると、私たちはどうしても「自分から見た世界」で物事を考えてしまいます。

「なぜ部下は、もっと主体的に動いてくれないんだろう?」
「どうして上司は、こちらの事情をわかってくれないんだろう?」
「他部門は、なぜ協力してくれないの?」

そんなふうに感じる場面、ありませんか?

実は人間は、自分自身の視点に縛られやすいものです。

しかも、「空間的」にも「時間的」にも、かなり狭い範囲で考えてしまう傾向があります。

そこで役立つのが、

「視点を変えてみる」

という考え方です。

そして私は、AIが急速に発達していく時代だからこそ、この力がますます重要になると考えています。

キーワードは「メタ認知」と「俯瞰力」です。

少し難しそうな言葉が出てきましたね(^^)

大丈夫です!

できるだけ身近な例を使いながら、一緒に考えてみましょう。

そもそも「視点を変える」とは?

「視点を変える」とは、簡単にいえば、

「自分が立っている場所とは違う場所から、同じ出来事を眺めてみる」

ということです。

たとえば、サッカーの試合を想像してください。

選手としてグラウンドに立っていると、目の前の相手やボールはよく見えます。

一方で、スタンドの上のほうから試合全体を見ると、

「あっ、右側が空いている!」
「相手チームは左側に偏っているな」

といった全体の動きが見えてきます。

グラウンドにいる選手の能力が低いわけではありません。

立っている場所によって「見えるもの」が違うのです。

仕事も同じなんですね。

仕事にはたくさんの「視点」がある

たとえば、一つの問題についても、見る人によって捉え方は変わります。

視点考えてみたいこと
自分私は何に困っているのだろう?
上司上司から見ると、何が問題なのだろう?
部下部下には、どんな景色が見えているのだろう?
同僚同僚なら、この状況をどう捉えるだろう?
他部門他部門には、どんな事情や制約があるのだろう?
顧客お客様は、本当は何を求めているのだろう?
経営者会社全体から見れば、何を優先すべきだろう?

同じ出来事なのに、視点を一つずらしただけで答えが変わることがあります。

ここが面白いところなんです!

人間は「自分のカメラ」から世界を見ている

人間の視点を「カメラ」にたとえてみましょう。

普段、私たちは自分の頭に取り付けられたカメラで世界を撮影しています。

すると当然、

「私はこんなに忙しい」
「私はちゃんと説明した」
「私は悪くない」

という映像がたくさん撮れます。

ところが、部下の頭についているカメラには、

「忙しそうだから質問できない」

という映像が映っているかもしれません。

上司のカメラには、

「任せたつもりなのに、報告が上がってこない」

という映像が映っているかもしれません。

お客様のカメラには、

「社内事情はわからないから、とにかく早く返事がほしい」

と映っている可能性もあります。

誰か一人が間違っているとは限りません。

それぞれが「違う場所から同じ出来事を見ている」のです。

視点には「空間」と「時間」がある

視点を変えるときには、大きく二つの方向を意識するとわかりやすくなります。

「空間的な視点」と「時間的な視点」です。

空間的な視点を広げる

空間的な視点とは、

「誰の立場から見るか」

ということです。

自分だけでなく、

上司なら?
部下なら?
同僚なら?
他部門なら?
お客様なら?
経営者なら?
社会全体から見たら?

と、カメラを移動させていきます。

たとえば「部下が動いてくれない」

リーダーから見ると、

「指示したのに動いてくれない」

という問題かもしれません。

ところが部下から見ると、

「どこまで自分で判断してよいのかわからない」

のかもしれません。

さらに上司から見ると、

「もっと部下に任せてほしい」

と思っている可能性もあります。

そして顧客から見ると、

「誰がやるかはいいから、早く解決してほしい!」

だったりします(笑)

視点を移動させるだけで、「問題そのもの」の姿が変わってくるんですね。

時間的な視点を広げる

もう一つ大切なのが「時間」です。

人間はどうしても「今」に引っ張られます。

今日の売上。
今月の目標。
目の前のトラブル。
今日中に終わらせなければならない仕事。

もちろん大切です。

ただし、リーダーには少し先を見る力も求められます。

時間軸問い
今日今日、何をすべきか?
1か月後この判断は1か月後にどんな影響を与えるか?
1年後1年後の組織にとって良い判断か?
3年後今のやり方を続けて、組織は成長できるか?

たとえば、部下が仕事に失敗したとします。

短期的な視点なら、

「自分でやり直したほうが早い」

となるでしょう。

確かに早いんです。

でも、1年後を考えたらどうでしょう?

毎回リーダーがやり直していたら、部下はなかなか育ちません。

今日10分節約することと、1年後に一人で仕事を任せられる人材を育てること。

どちらが組織にとって大切でしょうか?

ここで「時間的な視点」が効いてきます。

「俯瞰する」とは鳥になって上から眺めること

「俯瞰」という言葉があります。

読み方は「ふかん」です。

もともとは、高い場所から下を見渡すという意味があります。

仕事で使う場合には、

「目の前の出来事だけでなく、全体像や関係性を広く捉えること」

と考えるとわかりやすいでしょう。

鳥になったつもりで、自分の仕事を上空から眺めるイメージです。

地上の自分と、上空の自分

地上にいる自分は、

「忙しい!」
「納期が!」
「部下が!」
「メールが!」

となっています。

ちょっと待ってください(笑)

上空100メートルくらいまで飛んでみましょう。

すると、

「そもそも、この仕事は何のためにやっているんだろう?」
「全部自分でやる必要があるのかな?」
「チーム全体を見ると、Aさんに任せたほうがよさそうだ」
「お客様が求めているものと、私たちが頑張っていることがズレていないかな?」

そんな問いが生まれてきます。

視点が高くなると、見える範囲が広くなるのです。

AI時代だからこそ「メタ認知」が重要になる

ここで「メタ認知」という専門用語をご紹介します。

メタ認知とは、

「自分の考え方や行動を、一段高いところから客観的に捉えること」

です。

「メタ」には、「より高い次元から」「一段上から」といった意味があります。

難しく聞こえますが、実は日常生活でも使っています。

もう一人の自分が、自分を見ているイメージ

会議中にイライラしているとしましょう。

普通の状態なら、

「なんでわかってくれないんだ!」

となります。

メタ認知が働くと、

「あれ? 自分はいま、かなりイライラしているな」

と気づけます。

さらに、

「なぜイライラしているんだろう?」
「自分の意見を否定されたと感じたからかな?」
「相手は本当に私を否定したのかな?」

と、自分自身を観察できます。

感情をなくす必要はありません。

むしろ、

「自分はいま、こう感じている」

と認識することが重要なのです。

メタ認知を簡単な式で表すと?

イメージとしては、こんな式で考えられます。

自分の思考 + 一段上からの観察 = メタ認知

言葉だけに置き換えるなら、

「自分が考えていること」+「自分がどう考えているかを見ること」=「自分の思考を客観的に捉える力」

となります。

つまり、「考える」だけではありません。

「自分は、なぜそう考えているのか?」まで考えるわけです。

頭の中に小さな監督カメラを置くようなイメージでしょうか(^^)

なぜAI時代に俯瞰力が必要なのか?

AIは、情報整理、文章作成、アイデア出し、分析など、さまざまな仕事を支援してくれるようになりました。

今後はさらに多くの仕事でAIを活用する場面が増えていくでしょう。

すると人間側には、

「AIに何を考えさせるのか?」
「出てきた答えを、どの視点から評価するのか?」
「そもそも解くべき問題は何なのか?」

という力が求められます。

AIが答えを出せる時代だからこそ、「問いを選ぶ人間」の役割が大きくなるとも考えられます。

AIに聞く前に「誰の視点が抜けている?」と考える

たとえば、新しいサービスを考えているとしましょう。

AIに、

「新サービスのアイデアを出してください」

と聞けば、たくさんの案が出てくるでしょう。

しかし、

「20代の顧客から見たら?」
「70代のお客様から見たら?」
「営業担当者から見たら?」
「開発担当者から見たら?」
「競合企業から見たら?」
「3年後の市場から見たら?」

と問いを変えると、出てくる情報も大きく変わります。

AIを使いこなす力は、単にプロンプトの書き方を覚えるだけではないのかもしれません。

「どの視点から考えるべきか?」

を設計する力も重要になってくるのです。

リーダーこそ「自分の正しさ」から離れてみる

リーダーになると、判断する機会が増えます。

経験も増えます。

成功体験も蓄積されます。

とても心強いことなのですが、少し注意も必要です。

経験が増えるほど、

「以前もこうだったから、今回も同じだろう」

と考えやすくなるからです。

そこで役立つ質問があります。

「もし自分の考えが間違っているとしたら、どこだろう?」

なかなか強烈な質問ですよね!

でも、とても価値があります。

「正しい答え」を探すより「違う見方」を増やす

複雑な仕事には、唯一絶対の正解がない場合も少なくありません。

A案にもメリットがある。
B案にもメリットがある。
短期的にはA。
長期的にはB。
顧客から見ればA。
社員から見ればB。

そんなことが普通にあります。

だからリーダーに必要なのは、

「私は正しい」

と言い切る力だけではありません。

「別の場所から見たら、どう見える?」

と考え続けられる力も必要なのです。

視点を変えるための質問集

視点は「質問」によって動かせます。

困ったときには、次のような質問を自分に投げかけてみてください。

変えたい視点自分への質問
上司上司の立場だったら、何を気にするだろう?
部下部下から私はどう見えているだろう?
同僚同僚なら、この問題をどう説明するだろう?
他部門相手部門には、どんな事情があるだろう?
顧客お客様にとって本当に重要なことは何だろう?
経営会社全体の利益から見るとどうだろう?
未来1年後の自分なら、今日の判断をどう評価するだろう?
第三者まったく関係のない人が見たら、何と言うだろう?
メタ認知私はなぜ、そう考えているのだろう?

全部使う必要はありません。

行き詰まったときに一つだけでも問いかけてみてください。

カメラの位置が少し動くだけで、意外な景色が見えてくるかもしれません。

にゃんこにも教えられる「視点を変える」大切さ

ここで、恒例のにゃんこエピソードです(=^・^=)

猫を見ていると、本当に面白いですよね。

人間から見ると、

「なんで、そんな狭い箱に入るの?」

という場所に、わざわざ入っていきます。

しかも、とても満足そう(笑)

人間からすると、

「もっと広いところがあるでしょう!」

と言いたくなります。

でも、猫からすれば、

「いやいや、この狭さが落ち着くんですけど?」

なのかもしれません。

さらに猫は、高い場所にもよく登ります。

棚の上から人間をじーっと眺めています。

人間側から見ると、

「降りてきなさい!」

猫側から見ると、

「人間たちよ、今日も慌ただしく動いておるな」

なんて思っていたりして……。

同じ部屋にいても、人間と猫では見えている世界が違います。

仕事も同じではないでしょうか。

自分には「どう考えてもこうだ!」と見えていることでも、相手の場所に移動してみると、まったく違う景色が見える場合があります。

そして、ときには猫のように少し高い場所へ上がって、全体を眺めてみる。

にゃんこ、意外とリーダーシップのお手本なのかもしれませんね(笑)

視点を変えることのメリットと注意点

もちろん、視点を変えれば何でも解決するわけではありません。

メリットと注意点の両方を知っておきましょう。

メリット注意点
思い込みに気づきやすくなる考えすぎて決断が遅くなる場合がある
相手への理解が深まる相手の気持ちを勝手に決めつけない
問題を多面的に捉えられる視点を増やしすぎると混乱することもある
長期的な判断がしやすくなる目の前の課題を軽視してはいけない
AIへの問いの質を高められるAIの回答をそのまま正解と思わない

大切なのは「視点を増やすこと」と「最後は決めること」の両立です。

リーダーですから、いつまでも空を飛んでいるわけにもいきません(笑)

俯瞰して、考えて、最後は地上に戻って行動する。

そんなイメージがちょうどよいと思います。

今日からできる「視点移動」の3ステップ

難しいトレーニングは必要ありません。

仕事で何か問題が起きたとき、次の順番で考えてみてください。

ステップ1 今の自分の視点を確認する

「私は今、どの立場から考えている?」

まず、自分のカメラの位置を確認します。

ステップ2 別の人のカメラに切り替える

「上司なら?」
「部下なら?」
「お客様なら?」
「他部門なら?」

一つで構いません。

別のカメラに切り替えてみましょう。

ステップ3 時間を未来へ動かす

最後に、

「1年後から見たら、この判断はどう見える?」

と考えます。

人物と時間。

この二つを動かすだけでも、視野はかなり広がります。

まとめ AI時代を導く人ほど「一段上から見る力」を

今回のリーダーシップ研修では、「視点を変える」というテーマをお伝えしました。

人間はどうしても、自分自身の視点に縛られます。

しかも、目の前の人、目の前の仕事、今日の問題といった、空間的にも時間的にも狭い範囲で考えがちです。

だからこそ、意識してカメラを動かしてみることが大切です。

上司ならどう見るだろう?
部下なら?
同僚なら?
他部門なら?
顧客なら?
経営者なら?

そして、1年後、3年後から振り返ったら?

さらに一段高い場所から、

「そもそも私は、なぜそう考えているのだろう?」

と自分自身を観察してみる。

そこに「メタ認知」があります。

AIが私たちの仕事を強力に支援してくれる時代には、「答えを出す力」だけでなく、「どこから問題を見るか」「何を問うか」「出てきた答えをどう評価するか」という力が、ますます大切になっていくでしょう。

目の前の問題で行き詰まったら、ぜひ一度、自分に聞いてみてください。

「別の場所から見たら、どう見えるだろう?」

そして、もう一つ。

「もっと高いところから見たら、何が見えるだろう?」

カメラを少し動かすだけで、昨日まで見えなかった選択肢が見つかるかもしれませんよ!

今後、リーダーシップやAI活用について学ぶ際には、「問題解決」「意思決定」「メタ認知」「クリティカルシンキング」「システム思考」といったテーマにも学習を広げてみてください。

それぞれ別々の知識に見えますが、根っこには「目の前だけを見るのではなく、より広く、より深く、より長い時間軸で考える」という共通点があります。

AI時代を導くリーダーに必要なのは、AIよりたくさんの情報を覚えることではないのかもしれません。

自分の視点さえも疑いながら、より良い「問い」を立てられること。

そんな俯瞰力を、日々の仕事の中で少しずつ鍛えていきたいですね(^^)

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投稿者プロフィール

田渕講師
田渕講師
セイ・コンサルティング・グループ株式会社専務取締役
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上
キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
アンガーマネジメントファシリテーター、コンサルタント
ハッピーな人生を送る秘訣は「何事も楽しむ!」ことにあり。
一期一会を大切に、そして楽しく笑顔になる研修をミッションに!