【初心者から始める】明日から仕事が変わる!生成AI活用マスター研修

第1章:【基礎理解】生成AIって、一体何者?

改めまして、こんにちは。ゆうせいです。

いよいよ研修のスタートですね!

「生成AI」という言葉、最近よく耳にするけれど、実は「何となくすごいもの」というイメージしかない…。そんな方も多いのではないでしょうか?

大丈夫です!この章を読み終える頃には、その漠然としたイメージが、くっきりとした知識に変わります。

まずは、強力なアシスタントである生成AIの「プロフィール」を、一緒に見ていきましょう。彼(彼女?)が一体何者で、どんな性格なのかを知ることで、今後の付き合い方がぐっと楽になりますよ。

1-1. AI、機械学習、生成AI…その違い、説明できますか?

ニュースを見ていると、「AI」「機械学習」「ディープラーニング」「生成AI」といった言葉が、区別なく使われていることがありますよね。でも、実はこれらの言葉には、ちゃんとした親子関係のような階層があるのです。

これを、私たちの身近な「家電」に例えてみましょう。

  • AI(人工知能):これは最も大きな括りで、「家電」そのものだと考えてください。人間の知的な振る舞いを真似る技術やソフトウェア全般を指す、とても広い言葉です。
  • 機械学習:これはAIという「家電」の中の、特定の種類の家電、例えば「学習機能付きのエアコン」のようなものです。たくさんのデータの中から、機械が自動で「ルール」や「パターン」を見つけ出す技術のことを指します。
  • ディープラーニング(深層学習):これは機械学習をさらにパワーアップさせた技術です。「超高性能な学習機能付きエアコン」とイメージしてください。人間の脳の神経回路の仕組みを真似ることで、より複雑で、より大量のデータから、より高度なパターンを自ら見つけ出すことができます。今日のAI技術のブレークスルーは、このディープラーニングの進化のおかげなのです。
  • 生成AI(ジェネレーティブAI):そして、いよいよ本日の主役の登場です。生成AIは、ディープラーニングという技術を使って、新しい何かを「創り出す(生成する)」ことに特化したAIです。家電の例えで言うなら、「冷蔵庫の中身を見て、今夜の献立のレシピを新しく考えてくれる、未来の冷蔵庫」のような存在です。

これまでのAIが、データの分析や識別の「エキスパート」だったのに対し、生成AIは、文章や画像、音楽などをゼロから創り出す「クリエイター」なのです。この「創り出す」という点が、画期的なのですね!

1-2. 生成AIは「超高性能な予測変換マシーン」?

では、生成AI、特に文章を作るAIは、一体どうやって言葉を紡ぎ出しているのでしょうか?

その心臓部とも言える技術が「大規模言語モデル(LLM)」です。

専門用語解説:「大規模言語モデル(Large Language Model / LLM)」とは?

この言葉、難しそうに見えますが、本質を掴めば怖くありません。

LLMをものすごく噛み砕いて言うと、「次に来る単語を予測するのが、めちゃくちゃ得意なマシーン」です。

皆さんがスマートフォンで「今日の天気は」と入力すると、「晴れ」「雨」といった次の単語の候補が出てきますよね?LLMは、あの予測変換の仕組みを、天文学的なレベルまで高性能にしたものだとイメージしてください。

LLMは、インターネット上の膨大な文章や書籍のデータを「読む」ことで、「この単語の後には、こういう単語が来やすい」という確率を、無数に学習しています。

ですから、私たちが「日本の首都は」という文章を与えると、LLMは学習した確率の中から、「東京です」という最も可能性の高い言葉の続きを予測して、返してくれるのです。

彼らは言葉の意味を「理解」しているというよりは、膨大なデータから「次に来る確率が最も高い言葉」を紡ぎ続けている、というわけです。

1-3. 生成AIの得意なこと、苦手なこと

そんな生成AIですが、もちろん万能ではありません。彼らにも得意なことと、実はちょっと苦手なことがあります。この特性を知っておくことが、AIを使いこなす上で非常に重要です。

  • 得意なこと:
    • 文章の作成・要約: メール文、ブログ記事、議事録の要約など、言語に関わる作業全般。
    • アイデア出し: 新しい企画の壁打ち相手や、キャッチコピーの考案など、発想を広げる手伝い。
    • 翻訳・プログラミング: 決まったルールや構造がある言語の処理。
  • 苦手なこと:
    • 正確性が100%求められること: 最新の情報や、専門性の高い固有名詞、複雑な計算を間違えることがあります。
    • 感情や常識の理解: 文章の「雰囲気」や「行間」を読むのはまだ苦手です。
    • 創造的な"飛躍": あくまで学習したデータに基づいているため、人間のような全く新しい芸術を生み出すのは困難です。

AIは、あなたの仕事をサポートする「超優秀なアシスタント」ですが、「最終的な判断を下す上司」ではない、ということを覚えておきましょう。

1-4. AIがもっともらしい嘘をつく!?

最後に、生成AIと付き合う上で、絶対に知っておかなければならない最も重要な特性についてお話しします。

それが、「ハルシネーション」です。

専門用語解説:「ハルシネーション(Hallucination)」とは?

ハルシネーションは、日本語で「幻覚」という意味です。

これは、AIが、事実に基づかない情報を、あたかも真実であるかのように、もっともらしく生成してしまう現象のことを指します。

これは、先ほどのLLMの仕組みと関係があります。彼らは「次に来る確率が高い言葉」を繋げているだけなので、その内容が事実かどうかを判断しているわけではありません。そのため、学習データに誤りがあったり、文脈を勘違いしたりすると、平気で嘘の情報を生成してしまうのです。

例えるなら、知識が不十分なのにプライドだけは高い新入社員に似ています。

上司から知らないことを聞かれたとき、「分かりません」と答えるのではなく、その場で考えたもっともらしい答えを、自信満々に報告してしまう…。そんなイメージです。

ですから、忘れないでください!

AIの回答は、絶対に鵜呑みにしてはいけません。

必ず「これって本当かな?」と疑う目を持ち、最終的な事実確認(ファクトチェック)は、私たち人間の重要な責任なのです。

さあ、これで生成AIの基本的なプロフィールは掴めましたね。

次の章ではいよいよ、このユニークなアシスタントの能力を最大限に引き出すための「魔法の呪文」、プロンプトの作り方を学んでいきましょう!

第2章:【実践入門】AIの能力を引き出す「魔法の呪文」

第1章では、生成AIがどんな存在なのか、そのプロフィールを見てきましたね。

超優秀だけれど、たまに嘘もついちゃう、ユニークなアシスタントだということがお分かりいただけたかと思います。

さて、そんなアシスタントに最高のパフォーマンスを発揮してもらうには、実は「指示の出し方」にちょっとしたコツが必要なのです。

どんなに優秀なアシスタントでも、上司の指示が曖昧では、的外れな仕事をしてしまいますよね。

この章では、AIの能力を100%以上引き出すための、いわば「魔法の呪文」=「プロンプト」の作り方を、誰でもマスターできるように徹底解説します!

2-1. AIへの最高の指示書「プロンプト」とは?

まず、一番大事な言葉を覚えましょう。それが「プロンプト」です。

専門用語解説:「プロンプト(Prompt)」とは?

プロンプトとは、私たちが生成AIに入力する「指示」や「命令」のことです。

あなたがChatGPTなどの画面に打ち込んでいる、あの文章そのものがプロンプトなのです。

これは、レストランでシェフに料理を「オーダー」するのに似ています。

あなたがどんなに素晴らしい料理を食べたいと思っていても、そのオーダーがウェイターに伝わらなければ、望んだ料理は出てきません。

プロンプトは、AIという超一流シェフに対する、あなたの「オーダーシート」なのです。このオーダーシートの書き方次第で、出てくる料理の質、つまりAIの生成するアウトプットの質が、天と地ほども変わってきます。

2-2. なぜ、あなたの指示はAIに伝わらないのか?~良いプロンプト、悪いプロンプト~

「生成AIを使ってみたけど、なんだか当たり障りのない、使えない文章しか出てこない…」

もしあなたがそう感じたことがあるなら、その原因はAIの能力不足ではなく、あなたのプロンプト、つまり「指示の出し方」にあるのかもしれません。

ここでも、AIを「あなたの部署に新しく配属された、超優秀だけどまだ会社のことは何も知らない新人アシスタント」だと考えてみましょう。

  • 悪いプロンプトの例:「会議のまとめ、作っておいて」

こんな指示を新人アシスタントに出したら、どうなるでしょう?

「え…?どの会議ですか?」「誰向けのまとめですか?」「箇条書きですか?文章ですか?」

彼は困惑し、結果としてあなたの意図とは全く違う、役に立たないものを作ってしまうでしょう。

  • 良いプロンプトの例:「あなたは優秀なアシスタントです。先ほど行った、A社との新製品開発に関する会議の議事録を、箇条書きで要約してください。特に、決定事項と今後のTODOが明確に分かるように整理して、本日17時までに報告をお願いします。」

どうでしょう?この指示なら、新人アシスタントは迷うことなく、あなたの期待通りの完璧な仕事をしてくれるはずです。

悪いプロンプトは「曖昧」で、良いプロンプトは「具体的」。この差が、AIのパフォーマンスを決定づけるのです。

2-3. これだけは押さえろ!成果が劇的に変わるプロンプトの4大要素

では、どうすれば「具体的」で分かりやすい、良いプロンプトが書けるようになるのでしょうか?

その秘訣は、たった4つの要素を意識することです。

この4つの要素を盛り込むだけで、あなたのプロンプトは劇的に進化します。さあ、絶対に覚えてください!

  1. 役割設定 (Role Setting):プロンプトの冒頭で、「あなたは〇〇です」と、AIに特定の役割やキャラクターを与えるのです。
    • 例:「あなたはプロの編集者です」「あなたはフレンドリーな接客のプロです」役割を与えることで、AIはその道のプロになりきり、より専門的で、質の高いアウトプットを生成してくれるようになります。
  2. 背景・文脈の提供 (Context):あなたが何をしたいのか、どんな状況なのか、その背景をAIに教えてあげます。
    • 例:「私は営業部のマネージャーで、来週、重要な顧客にプレゼンをします」「この文章は、社内の若手向けに発信するブログ記事です」背景を共有することで、AIはあなたの意図を深く理解し、より的確な回答を返してくれます。
  3. 具体的な指示 (Instruction):AIに何をしてほしいのか、そのアクションを明確に、具体的に指示します。
    • 例:「以下の文章を要約してください」「メリットとデメリットを3つずつ挙げてください」「小学生にも分かるように説明してください」ここがプロンプトの核となる部分です。曖昧な表現を避け、できるだけ具体的に書きましょう。
  4. 出力形式の指定 (Output Format):どんな形式で回答してほしいのか、フォーマットを指定します。
    • 例:「箇条書きで」「表形式で」「です・ます調の丁寧な文章で」「300字以内で」出力形式を指定することで、後から自分で手直しする手間を大幅に省くことができます。

2-4. 【ワークショップ①】基本の型を使って、AIに自己紹介文を作らせてみよう!

さあ、理屈はもう分かりましたね。百聞は一見に如かず。

早速、今日学んだ基本の型を使って、AIに仕事を依頼してみましょう!

以下のテンプレートの[ ]の中をあなた自身の情報に書き換えて、実際にChatGPTなどの生成AIにコピー&ペーストして入力してみてください。

【自己紹介文 生成プロンプト・テンプレート】

あなたは、人の心を掴むのが得意なプロのコピーライターです。 ← 役割設定

私は今度、社内の交流会で自己紹介をすることになりました。 ← 背景・文脈

以下の情報を元に、私の魅力が伝わるような、親しみやすい自己紹介文を作成してください。 ← 具体的な指示

文字数は200字程度で、ユーモアを少し交えた明るいトーンでお願いします。 ← 出力形式の指定

# 私の情報

  • 部署・名前:[例:営業部 山田太郎]
  • 仕事内容:[例:法人向けの新規開拓営業]
  • 趣味や特技:[例:週末はキャンプに行くこと、カレー作りに凝っている]
  • 交流会でアピールしたいこと:[例:仕事でもプライベートでも、気軽に声をかけてほしい]

どうですか?AIは、あなたの期待に応えるような自己紹介文を生成してくれたでしょうか?

ほんの少し指示の仕方を工夫するだけで、AIがこれほど頼もしいパートナーになるということを、ぜひ体感してください。

次の章では、この基本を応用して、実際の様々なビジネスシーンでAIを使いこなすための、より具体的な活用術を学んでいきます!

第3章:【業務活用】あなたの仕事をハックするシーン別AI活用術

第2章のワークショップ、いかがでしたか?

たった4つの要素を意識するだけで、AIが驚くほど賢いアシスタントになることを実感していただけたのではないでしょうか。

さて、基本の「型」をマスターした皆さん。ここからは、いよいよ応用編です!

この優秀なアシスタントに、あなたの実際の仕事を手伝ってもらいましょう。この章では、様々なビジネスシーンでAIを使いこなし、あなたの生産性を劇的に向上させるための、より具体的で実践的な活用術を紹介します。

いわば、新人アシスタントへの「OJT(On-the-Job Training)」の開始です!

3-1. 文章作成・要約編

まずはじめは、誰もが日常的に行う文章に関わる業務です。AIが最も得意とする分野であり、効果を一番実感しやすい領域でもあります。

議事録の要約

長時間の会議の議事録作成、本当に骨が折れる作業ですよね。

これからは、会議の文字起こしテキスト(もしあれば)をAIにそのまま貼り付けて、こう指示するだけでOKです。

プロンプト例:議事録の要約

あなたは、要点をまとめるのが得意なビジネスアナリストです。

以下の会議の文字起こしテキストを読み込み、重要なポイントを抽出してください。

最終的に、「決定事項」「確認事項」「今後のTODO(担当者と期限を明記)」の3つの項目で、箇条書きでまとめてください。

# 会議の文字起こしテキスト

[ここに文字起こしテキストを貼り付ける]

どうでしょう?これだけで、あの面倒な作業がほんの数十秒で完了します。削減できた時間で、あなたはもっと創造的な仕事に集中できるのです。

メールの作成

丁寧な言葉遣いが求められる、お客様への謝罪メール。頭を悩ませるシチュエーションですよね。そんな時も、AIは最高の相談相手になってくれます。

プロンプト例:謝罪メールの作成

あなたは、顧客対応経験が豊富なベテラン営業担当者です。

取引先のABC商事の田中様宛に、製品Aの納期遅延に関するお詫びのメールを作成してください。

以下の情報を盛り込み、誠意が伝わる丁寧な文章にしてください。

# メールに含める情報

  • 原因:弊社のシステムトラブル(現在は復旧済み)
  • 新しい納期:9月5日(水)
  • 対策:再発防止策を徹底する旨を伝える

AIが作成した文章をたたき台として、あなたの言葉で少し修正すれば、質の高いメールが短時間で完成します。

3-2. 情報収集・分析編

AIは、膨大な情報の中からあなたが必要なものだけを瞬時に見つけ出し、分かりやすく整理してくれる、超有能なリサーチャーにもなります。

プロンプト例:市場調査

あなたは、マーケティングリサーチの専門家です。

国内の「オーガニック化粧品市場」について、小学生にも分かるように、その市場規模、主要なターゲット層、今後のトレンドを教えてください。

全体を800字程度でまとめてください。

このように、専門的なテーマのリサーチや、難しい内容のレポートを要約させるといった作業で、AIは絶大な力を発揮します。

3-3. アイデア創出編

新しい企画やキャッチコピーを考える時、煮詰まってしまって何も思い浮かばない…そんな経験はありませんか?

AIは、あなたの思考を刺激し、一人では思いつかなかったようなアイデアをくれる、最高のブレストパートナーになります。

プロンプト例:キャッチコピーの考案

あなたは、数々のヒット作を生み出してきた天才コピーライターです。

当社が新しく発売する、30代の働く女性をターゲットにした「1週間分の野菜が摂れる冷凍スープ」のキャッチコピーを10個、提案してください。

商品のコンセプトは「忙しい毎日でも、自分を大切にする時間」です。

感動系、ユニーク系、語呂が良い系など、様々な切り口でお願いします。

AIが出してくれたアイデアがそのまま使えなくても、それがきっかけとなって、あなたの頭の中に眠っていた素晴らしいアイデアが目を覚ますことがあるのです。

3-4. 【職種別】明日から使えるAI活用事例

ここまで紹介した以外にも、AIの活用シーンは無限に広がっています。

ここでは、職種別に特化した活用事例を表にまとめました。あなたの仕事に当てはまるものを、ぜひ見つけてみてください!

職種活用シーンの例
営業職顧客へのアポイントメール作成、提案書の骨子作成、商談後の御礼メール作成
マーケティング職広告キャンペーンのキャッチコピー案、SNSの投稿文作成、ブログ記事の草案作成
人事・総務職求人票のドラフト作成、社内通知文の作成、面接の質問リスト作成
企画・開発職新規事業のアイデア出し、プログラムコードのレビュー、仕様書の草案作成

3-5. 【ワークショップ②】自分の業務をAIでどう効率化できるか考えよう!

さあ、たくさんの活用事例を見てきましたね。

今度は、あなたの番です。

あなたの普段の仕事を思い返してみてください。

「この作業、いつも時間がかかって面倒だな…」

「もっと効率的にできたら、他の仕事に時間を使えるのに…」

そう感じる業務は、きっと一つや二つではないはずです。

お題:

あなたの仕事の中から「AIアシスタントに任せたい業務」を一つ見つけ、そのための「プロンプト」を考えてみましょう。

完璧なプロンプトでなくても構いません。

「〇〇を要約してほしい」「△△のアイデアを出してほしい」といった簡単なものでも大丈夫です。

まずは、自分の仕事をAIに任せる、という「発想の転換」を体験することが、このワークショップの目的です。

紙やメモ帳に、あなたの「AI活用アイデア」を書き出してみてください。

この小さな一歩が、あなたの働き方を大きく変える、最初のきっかけになりますよ!

第4章:【リスク管理】賢く安全に付き合うための法律と倫理

皆さん、AIという優秀なアシスタントに、様々な仕事を任せるイメージが湧いてきましたね。

その生産性の向上に、きっとワクワクしていることでしょう。

しかし、どんなにパワフルな道具も、使い方を間違えれば、思わぬ事故やトラブルを引き起こす原因になります。

自動車を例に考えてみてください。自動車は私たちをどこへでも連れて行ってくれる便利な乗り物ですが、交通ルールを守り、安全確認を怠れば、大事故に繋がりますよね。

この章は、AIというパワフルな車を、安全に乗りこなすための「交通ルール」を学ぶ、非常に重要な時間です。

アシスタントをトラブルに巻き込まず、あなた自身と会社を守るために、しっかりと知識を身につけていきましょう。

4-1. その情報、入力して大丈夫?情報漏洩のリスクと対策

まず、ビジネスで生成AIを使う上で、絶対に守らなければならない、最も重要なルールをお伝えします。

それは、「社外秘の情報や、個人情報を絶対に入力しない」ということです。

なぜなら、多くの生成AIサービスでは、ユーザーが入力した情報を、AIがさらに賢くなるための「学習データ」として利用することがあるからです。

これは、あなたが新人アシスタントに話した会社の秘密を、そのアシスタントがうっかり別の場所で喋ってしまう可能性がある、ということに似ています。

一度インターネット上に出てしまった情報を、完全に取り戻すことはほぼ不可能です。

万が一、顧客リストや開発中の新製品情報、社員の個人情報などが流出してしまえば、会社の信用を失墜させる、取り返しのつかない事態になりかねません。

【絶対に入力してはいけない情報の例】

  • 顧客の氏名、連絡先、取引履歴
  • まだ公開していない新製品の仕様や価格
  • 社内の財務データや人事情報
  • 他社との契約に関する機密情報

AIに要約や分析を頼む際は、必ずこれらの情報が含まれていないかを確認し、もし含まれている場合は、匿名化したり、削除したりしてから入力する癖をつけましょう。

4-2. AIが作った文章や画像の著作権は誰のもの?

「AIが作った文章やイラストを、会社のブログやプレゼン資料で自由に使ってもいいのだろうか?」

これは、多くの人が抱く疑問ですよね。著作権の問題は、非常にデリケートで重要なポイントです。

結論から言うと、現在の日本の法律では、AIだけが生成した文章や画像には、原則として著作権は発生しない、と考えられています。著作権は、人間の「思想又は感情を創作的に表現したもの」に与えられる権利だからです。

しかし、注意すべき点が2つあります。

  1. AIの生成物が、元々ある誰かの著作物にそっくりな場合AIは、学習データの中にある既存の文章や画像を元に、新しいものを生成します。そのため、意図せずして、他人の著作物と酷似したものを生成してしまう可能性があります。それを知らずに商用利用してしまうと、著作権侵害を訴えられるリスクがあります。
  2. 人間が大きく手を加えた場合AIが作った文章を、あなたが大きく編集・修正し、そこにあなたの創造性が加わったと判断されれば、その文章全体にあなたの著作権が認められる可能性があります。

ここでの重要な心構えは、「AIの生成物は、あくまで『素材』や『たたき台』として扱い、公開する前には必ず人間の目でチェックし、編集を加える」ということです。特に、会社の公式な発信物として利用する際は、細心の注意を払ってください。

4-3. AIの答えは鵜呑みにするな!ファクトチェックの重要性

第1章で、AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」について学びましたね。

AIとの付き合いに慣れてくると、ついその便利さから、AIの回答を信じきってしまう危険性があります。

ここで、もう一度強く警告します。AIの答えは、絶対に鵜呑みにしてはいけません!

優秀なアシスタントがまとめてくれたレポートでも、上司であるあなたは、提出前に必ず内容が正しいかを確認しますよね?それと同じです。

AIが提示した情報、特に統計データや専門的な情報、歴史的な事実などについては、必ず公的な情報源や信頼できるニュースサイトなどで、それが事実かどうかを確認(ファクトチェック)する責任が、私たち人間にはあります。

AIは「思考の壁打ち相手」や「作業の効率化ツール」であり、「最終的な真実を教えてくれる先生」ではないのです。

4-4. 差別や偏見を生まないために…AIと倫理の問題

AIは、インターネット上の膨大なテキストを学習データにしています。

そして、ご存知の通り、インターネット上には、特定の性別や人種、国籍などに対する、人間の「偏見(バイアス)」に満ちた表現も残念ながら数多く存在します。

AIは、そうした偏見まで学習してしまい、特定の役割について「男性」を前提とした文章を生成したり、ある国の人々についてステレオタイプな表現を使ったりすることがあります。

私たちがその偏見に気づかずに、AIが生成した文章を求人票や広告などに使ってしまえば、意図せずして社会的な差別を助長してしまうことになりかねません。

AIのアウトプットをチェックする際は、「事実として正しいか?」という視点に加えて、「倫理的に問題はないか?」「誰かを傷つける表現になっていないか?」という視点を持つことが、これからのビジネスパーソンに求められる重要なスキルです。

4-5. 組織でAIを使うための基本ルールとガイドライン

ここまでお話ししてきたリスクは、個人の注意だけで防げるものではありません。

会社全体として、AIを安全に活用するための明確な「ガイドライン」を設けることが不可欠です。

【ガイドラインに盛り込むべき項目の例】

  • 情報入力の禁止事項: 何が機密情報にあたるのかを具体的に定義し、入力を固く禁じる。
  • 利用目的の制限: AIの生成物を、どのような業務になら使って良いか、どこまで公開して良いかを定める。
  • 確認プロセスの義務化: ファクトチェックや倫理的なチェックを誰が、どのように行うかをルール化する。
  • 利用ツールの指定: 会社として安全性を確認したAIツールのみ利用を許可する。

AIという新しいテクノロジーと共存していくためには、こうしたルール作りが、組織の成長と安全を守るための「守りの一手」として、極めて重要になるのです。

さあ、これで安全運転のためのルールは学びました。

まとめ:AIは脅威じゃない、最高の相棒(Copilot)だ

皆さん、研修の全課程、本当にお疲れ様でした!

この研修が始まる前、皆さんの心の中にあった「AI」という言葉は、どんなイメージだったでしょうか?「なんだか難しそう」「仕事を奪う、冷たいテクノロジー」そんな、漠然とした不安や脅威のイメージがあったかもしれません。

しかし、今はどうでしょう?

AIのプロフィールを知り、対話の作法(プロンプト)を学び、具体的な仕事の任せ方を覚え、付き合う上でのルールも身につけました。

もう、皆さんの目の前にいるAIは、正体不明の脅威などでは決してないはずです。

そうです。生成AIは、あなたの仕事を奪う「敵」ではありません。

あなたの能力を拡張し、面倒な作業からあなたを解放し、より創造的な仕事へと導いてくれる、「最高の相棒(Copilot)」なのです。

パイロットが、隣に座る副操縦士(Copilot)を信頼し、計器の確認や通信といった作業を任せることで、自身は最も重要な操縦に集中できるように。

私たちも、文章のたたき台作成や情報収集といった作業をAIという相棒に任せることで、お客様との対話や、新しい価値を生み出す戦略立案といった、人間にしかできない、本当に大切な仕事に集中できるようになるのです。

AIの登場は、私たちの「働き方」そのものを、より人間らしい、創造的なものへと進化させる、大きなチャンスなのですね。

継続的にスキルアップするための3つの習慣

この研修は、今日で終わります。

しかし、皆さんの「AIと共にあるキャリア」は、今日ここからが本当のスタートです。

日進月歩で進化していくAIの世界で、その恩恵を受け続けるためには、学び続ける姿勢が欠かせません。

最後に、皆さんがこれからもAIという相棒と良い関係を築き、共に成長していくための、たった3つのシンプルな習慣をプレゼントします。

  1. とにかく毎日、触ってみる語学の学習と同じで、AIスキルも、使わなければすぐに錆び付いてしまいます。大した用事がなくても構いません。「今日のランチのメニューを3つ提案して」「このニュースを詩的に要約して」など、遊び感覚で良いので、毎日AIと対話する習慣をつけてください。この小さな積み重ねが、いざという時の応用力に繋がります。
  2. 他の人の優れたプロンプトを真似てみる上達への一番の近道は、上手な人の真似をすることです。インターネット上には、他のユーザーが作成した、驚くような結果を生み出す「神プロンプト」がたくさん共有されています。そうした優れた作例を見て、「なるほど、こんな指示の仕方があるのか!」と学ぶことは、非常に効果的なトレーニングになります。
  3. 最新のAIニュースを追いかけるAIの世界は、半年も経てば常識がガラリと変わる、凄まじいスピードで動いています。半年に一度で良いので、IT系のニュースサイトなどで「生成AI 最新動向」などと検索し、新しいサービスや技術の情報をアップデートする習慣を持ちましょう。あなたの相棒が、いつの間にかすごい能力を身につけているかもしれませんよ。

最後に:AIを使いこなし、未来の働き方をデザインしよう!

研修の冒頭で、私はこう言いました。

「大切なのは、テクノロジーに使われるのではなく、使いこなす側に立つこと」

この研修を終えた皆さんは、もうAIを使いこなすための羅針盤と、航海術をその手に持っています。

AIに対する漠然とした不安は、具体的な期待へと変わったはずです。

あなたはもう、未来の変化をただ待つ人ではありません。

AIという最高の相棒と共に、自らの手で、未来の働き方をデザインしていく「主役」なのです。

さあ、自信を持って、明日からの仕事に臨んでください。

皆さんの新しい挑戦を、心から応援しています!

2日間、本当にありがとうございました。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。