【第2章:期待値と掛け算 ― 平均の裏にある重みづけの構造】

こんにちは。ゆうせいです。

前回は、確率における掛け算が「出来事同士のつながり」や「依存関係」を表すものであることを見てきましたね。

今回は、その発展として期待値(Expectation)に登場する掛け算について解説します。

「期待値って平均のことでしょ?」
「なんで“値 × 確率”を足し算するの?」

この式の裏には、実は掛け算の重要な役割が隠されています。
キーワードは「重みづけ」。つまり、どれくらいその数値に信頼を置いて良いか?を掛け算で調整しているのです。


◆ 1. 期待値とは何か?― 平均との違い

「期待値」は、一言でいうと「確率的な平均」です。

たとえば、サイコロを1回ふって出る目の平均は?

1〜6までの目がそれぞれ1/6の確率で出るとしたら:

E[X] = \sum_{i=1}^{6} x_i \cdot P(x_i)


E[X] = 1 \cdot \frac{1}{6} + 2 \cdot \frac{1}{6} + \cdots + 6 \cdot \frac{1}{6} = 3.5

つまり、「1回ふって出る目は平均して3.5」というわけです。

ここで大事なのは、数値(x)と確率(P)を掛けているという点ですね!


◆ 2. 掛け算の意味:重みづけ平均

この掛け算、ただの数値操作ではありません。

たとえば、次のようなテストの成績を考えてみましょう。

  • 小テスト(配点20点):得点 = 15点
  • 中間テスト(配点30点):得点 = 20点
  • 期末テスト(配点50点):得点 = 40点

この3つの平均点を出すとき、単純平均ではなく重み付き平均を使いますよね?

\text{Total points} = \frac{15 \cdot 0.2 + 20 \cdot 0.3 + 40 \cdot 0.5}{1.0} = 29

ここでも掛け算が出てきます。

つまり:

各値の重要度(=重み)を掛けて、全体の平均を取る

というのが掛け算の本質なんです!


◆ 3. 期待値の構造は「現実 × 確率」

この考え方を確率に当てはめると:

  • xᵢ:起こる可能性のある値(利益、損失、点数など)
  • P(xᵢ):その値が起こる確率

となります。

そして:

E[X] = \sum x_i \cdot P(x_i)

この掛け算は、「その値が持っている現実的インパクト × どれくらい起こりそうか?」という期待の重みを表しています。

たとえるなら、「宝くじの当選額 × 当たる確率」が、あなたの“現実的な見込み”というわけです。


◆ 4. 応用例:くじ引きゲームの期待値

例題を一つ考えてみましょう。

あるゲームでは、くじを1回引くと以下の結果が出ます:

結果金額(円)確率
当たり大10,000円1%
当たり小1,000円5%
はずれ0円94%

このゲームの期待値は?

E = 10,000 \cdot 0.01 + 1,000 \cdot 0.05 + 0 \cdot 0.94 = 100 + 50 + 0 = 150

つまり、このゲームは1回あたり平均150円の価値があるというわけです。


◆ 5. 掛け算があるから、期待値は“現実的”になる

ポイントはここです:

  • 掛け算がなければ:10,000円や1,000円という「派手な数字」にばかり目が行く
  • 掛け算があるから:現実的な確率に応じて、“冷静な判断”ができる

この構造があるおかげで、期待値は「一発逆転」ではなく「平均的な合理性」を教えてくれるのです。


◆ 6. 期待値は意思決定の道具でもある!

金融、ギャンブル、保険、マーケティング……
あらゆる分野で、人は「期待値」をもとに意思決定をしています。

  • 投資の収益性を測る
  • 保険料を決める
  • 売上予測を立てる
  • ゲームの設計をする

すべてに共通しているのは:

「起きる可能性 × 起きたときの影響」=掛け算で重みづけ

だからこそ、期待値は「現実的な平均」であり、「冷静な判断基準」になりうるのです。


まとめ

  • 期待値は「値 × 確率」の重み付き平均
  • 掛け算によって、「どれだけ期待すべきか?」を調整している
  • 単なる足し算ではなく、「現実と可能性のバランス」を掛け算が支えている
  • 期待値は、合理的な意思決定やリスク評価の基盤になる

次回予告:「回帰分析と掛け算 ― 係数が持つ“影響力”の意味」

次は、統計モデリングの中心技法である回帰分析の中に登場する掛け算に注目します!

  • 回帰係数はなぜ掛け算されるの?
  • 交互作用(interaction)とはどういう意味?
  • 掛け算で“文脈によって変わる影響”をどう表現できる?

次回も、掛け算の奥深さに迫っていきます。
どうぞお楽しみに!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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